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Lesson23:絞り優先オートで自分好みのボケ写真を撮ろう

全体をシャープに写したり大きなボケを作ったり、写真のボケ感を思い通りにコントロールしたいときは「絞り優先オート(Aモード)」で撮影してみましょう。好みの絞り値を決めれば、あとの難しい調整はカメラまかせで撮影できるこのモード。簡単な使いかたから、絞り優先オートをさらに使いこなすためのポイントをまとめました。

撮影監修:斎藤勝則

1.絞り優先オートの特長と使いかた

絞り優先オートとは

「絞り優先オート」は「Aモード」とも呼ばれ、「絞り値」を自分で決めることができる撮影モードのことです。設定した絞り値にあわせて適正な明るさの写真が撮れるよう、カメラが自動的にシャッタースピードを決定します。 [撮影モードダイヤル]を[A]に合わせれば準備は完了。[コマンドダイヤル]を回して好みの絞り値に変えながら写真を撮ります。絞り値は「F2.8」「F8」「F16」など“Fといくつかの数値”で表すことから、「F値」とも呼ばれています。

[絞り優先オート]の撮影方法

[撮影モードダイヤル]を回して[A]に合わせれば設定は完了です

※カメラの機種によっては、中心のダイヤルロックボタンを押しながらダイヤルを回します

[コマンドダイヤル]を回すと絞り値が変更できます。好みの絞り値に合わせたらシャッターボタンを押して撮影を楽しみましょう

設定した絞り値はどこで見る?

設定した絞り値は、画像モニター上では上記の枠で囲った部分に表示されます

カメラの機種によってはカメラ上部の表示パネルにも設定した絞り値が表示されます

絞り値と写真の変化

絞り値が変わると、写真の写りかたはどう変化するのでしょうか。

1.ボケかたが変化する

絞り値:F5.6

絞り値:F16

それぞれ絞り値を変えて撮影した2枚の写真、ピントの合った花の背景部分に注目してみると、ボケかたの違いがはっきりわかると思います。小さい絞り値(上記の写真ではF5.6)になるほど大きくボケ、大きい絞り値(上記の写真ではF16)になるほどボケは小さくなります。逆にいえば、小さい絞り値になるほどピントの合う部分が狭くなり、大きい絞り値になるほどピントの合う範囲が広くなります。

2.写真の明るさ(カメラに取り込む光の量)が変化する

絞り値:F2.8

絞り値:F8

そもそも「絞り」とは、レンズの内部に備わる円弧状に並んだ絞り羽根からなる機構のこと。中心に穴が空いていて、穴は大きくなったり小さくなったりしてカメラの中に取り込む光の量を調節しています。つまり、「絞り値を変える=穴の大きさを変える=カメラに取り込まれる光の量を変える」ということになります。 絞り値を変えて撮影された上の2枚の写真を比べてみると(シャッタースピードとISO感度を固定して撮影)、写真の明るさが違いますね。小さい絞り値(上記の写真ではF2.8)になるほど多くの光が取り込まれるため写真が明るくなり、大きい絞り値(上記の写真ではF8)になるほど取り込まれる光の量が少なくなるため写真が暗くなります。

シャッタースピードの変化に注意

絞り優先オートの撮影で、もうひとつ覚えておくとよい変化があります。

絞り値を小さくすると、シャッタースピードが速くなる=ブレにくくなる
絞り値を大きくすると、シャッタースピードが遅くなる=ブレやすくなる

たとえば「隅々までピントの合った写真が撮りたい」なら絞り値を大きくすればいいわけですが、同時にシャッタースピードが遅くなり、それが原因で手ブレ写真になってしまうかもしれません。ブレない写真を撮るためには、シャッタースピードが速くなるよう絞り値を小さく設定し直す必要があります。「撮影してみて写真がブレていたら、絞り値を小さくする」と覚えておきましょう。

特に暗い場所での撮影に注意しよう

ですが実は、「絞り値を大きくするとどんな時も必ずシャッタースピードが遅くなる」というわけではありません。特に注意したいのは夜や室内など、光量の少ないシチュエーションです。暗い場所で明るい写真を撮ろうとすれば、それだけ多くの光をカメラに取り込む必要があります。そのためにシャッタースピードはより遅く設定されてしまい、絞り値をどんなに小さくしても手ブレしてしまうといった状況になることもあります。
そこで関わってくるのが、「ISO感度」の設定です。ISO感度を上げることでより多くの光がカメラに取り込まれるため、シャッタースピードが速くなり手ブレを回避することができます。「絞り値を小さくしてもブレてしまうときには、ISO感度を上げる」と覚えておきましょう。

絞り値F5.6、ISO感度は100に設定。暗いシーンのためシャッタースピードが1/2.5秒と遅くなり、手持ち撮影では手ブレしてしまいました

そこでISO感度を2200に上げました。絞り値F5.6のまま、シャッタースピードは1/50秒まで速くなりブレずに撮影することができました

シャッタースピードについての詳しい説明はこちら

ISO感度についての詳しい説明はこちら

2.開放F値とレンズ

絞り優先オートで撮影すれば思い通りの絞り値に設定できるんだ! と思った方、ちょっと待ってくださいね。実はカメラにつけているレンズの「開放F値」によって設定できる絞り値が決まってくるのです。
開放F値とは「そのレンズが最大限の光を取り込める状態の絞り値」のことで、言い換えるとそのレンズが一番小さくできる絞り値ということになります。いったいどういうことなのか、まずはレンズを見て確かめてみましょう。

こちらは「NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR」というレンズを横から見たところで、「24-200/4-6.3」と省略したレンズ名が書かれていますね。最初の数値「24-200」は焦点距離、その後ろの「4-6.3」がそのレンズの持っている「開放F値」を示しています。
このズームレンズは24mmから200mmの焦点距離を持ち、焦点距離にあわせて開放F値がF4からF6.3に変化するレンズなんだ、ということがわかります。そしてこのレンズを使って絞り優先オートで撮影した場合、F4より小さいF値は設定できないということになります。

もう1本、こちらの「NIKKOR Z 28-75mm f/2.8」というレンズを見てみましょう。レンズ名の最後に「2.8」のひとつしか書かれていませんね。つまりこのレンズは28mmから75mmのどの焦点距離でも開放F値はF2.8で変化しないことがわかります。
また、上に紹介したレンズと比較すると、こちらのレンズの方がより小さい絞り値が設定できる、つまりより大きくボカせるということがわかります。

レンズにはこのように、開放F値が変化するものとしないものがあるということを覚えておきましょう。

開放F値固定のレンズのメリットとは?

レンズには、焦点距離によって開放F値が変化するズームレンズと開放F値が変化せず固定されたズームレンズの2種類あるとご紹介しましたが、その違いはいったいどこにあるのでしょうか?

開放F値が固定されているレンズの最大のメリット、それは「焦点距離を変えてもシャッタースピードが変わらない」ということです。

たとえば「NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR」で焦点距離24mm、絞りは開放F値のF4で撮影していたとします。その後、焦点距離を200mmに変えて撮影したとき、絞り値はどうなるでしょうか。開放F値が変わるため、F4からF6.3に自動的に変化します。
そこで問題になるのが、先ほどもお伝えした「絞り値を大きくするとシャッタースピードが遅くなる」ということ。撮影時の状況によっては、焦点距離を変えることで写真がブレてしまうのです。

開放F値が変化するズームレンズの場合、焦点距離を変える(絞り値が自動で変わる)ことを前提としてブレ防止のためにISO感度をあらかじめ高くしておいたり、焦点距離を変えるたびに適正露出(最適な明るさの写真)になるよう設定に気をつけたりといった配慮が必要になります。
一方で、開放F値が固定されたレンズの場合、焦点距離を変えても絞り値は変わりません。絞り値を自分の意思で変更し撮ることができるため、適正露出にするための設定も自分で把握しながらシンプルに操作でき、またISO感度を必要以上に高く設定しなければならないということもありません。
これは、焦点距離を頻繁に変えてシャッターチャンスを狙うような撮影の場合、とても大きなメリットとなるのです。

3.絞り値別の写真の撮りかた

最後に、絞り値ごとにどんな写真が撮れるのか、特徴や撮影時の注意点をご紹介しましょう。
どれくらいボカすことができるのかは絞り値の変化のほか、レンズの焦点距離や被写体と撮影者の位置関係などによっても大きく変化します。ボケ感については、以下も参考にしてみてください。

レンズレッスン Lesson25:ボケを活かした写真の撮りかた

F1.2~F4:大きくボカす、暗い場所で手持ちで撮る

絞り値としてはかなり小さな数値です。F4以下の開放F値を持つレンズはいわゆる“明るいレンズ”といわれており、大きくボカした写真が撮れるだけでなく多くの光を取り込むことができます。暗い場所では手持ち撮影でも手ブレしにくくなったり、またISO感度を上げすぎることなくキレイに撮ることができます。
大きくボケた写真は背景が整理されるため主役を際立たせ、見せたい部分を強く印象づけることができる一方、ピントの合う範囲がかなり狭くなりますのでしっかりとピント合わせを行いましょう。

絞り値:F2.8

絞り値:F2.8

絞り値:F2.8

絞り値:F3.2

F5.6~F8:シャッターチャンスを活かしながら様々に撮る

様々なシーンで使いやすい絞り値です。動く被写体の撮影やスナップなどシャッターチャンスを活かすシーンでも、夜などの暗いシーンでもISO感度対応することで手持ちの撮影が可能です。
被写体に近づいて背景をボカしたり引いて全体をシャープに写したり、また焦点距離を自由に変えながら撮影したりと、様々な画作りが気軽に楽しめる絞り値です。

絞り値:F5.6

絞り値:F6.3

絞り値:F8

絞り値:F8

F8~F16:全体をシャープに写して撮る

隅々までシャープに捉えることができる絞り値で、風景写真、高さや奥行きのある被写体、全体をしっかり見せたいテーブルフォトなどに向いています。
カメラに入る光の量が少なくなる絞り値のため、曇りの日や暗い室内での撮影、動く被写体を撮影するときなどはシャッタースピードが遅くなりブレてしまうことがありますので、ISO感度を上げたり三脚を使ったりして撮影すると安心です。

絞り値:F8

絞り値:F8

絞り値:F11

絞り値:F16

F14~F32:スローシャッターや光芒を活かして撮る

ここまで大きな絞り値になると、カメラに入る光の量もかなり少なくなります。いわゆるスローシャッターと呼ばれるような遅いシャッタースピードになり、水の流れや動く光の光跡を捉えるような写真を撮ることができます。
また、点光源を大きな絞り値で撮影するとキラリと光るような光芒写真を撮ることができます。光芒の大きさは絞り値によって変化しますので、いろいろと試してみてください。
なお撮影時は三脚を使い、ブレ対策をしっかり行うようにしましょう。

絞り値:F14

絞り値:F16

絞り値:F16

絞り値:F32

絞り値によって変化する、注意したい写りかた

「周辺光量落ち」

絞り値:F4

絞り値:F8

画面の中央部分に対して周辺部分が暗く写ってしまう現象を「周辺光量落ち」といいます。レンズごとの特性や撮影シチュエーションによって起こる度合いは変わりますが、レンズの構造上防ぐことができない現象です。もし気になる場合は、絞り値を1、2段大きくすることで目立たなくなりますので、試してみてください。

「回折現象(小絞りボケ)」

絞り値:F11

絞り値:F22

絞り値を大きくすることで全体がシャープになっていくはずが、逆に細部がぼやけてしまう現象を「回折現象(小絞りぼけ)」といいます。レンズの構造や撮影シチュエーション、焦点距離などによっても異なりますが、絞り値が大きくなるほど発生しやすい現象です。気になるようであれば絞り値を1、2段小さくして調整しましょう。

「口径食」

絞り値:F4.5

玉ボケ写真を撮ったとき、画面中心は丸い形のボケが画面周辺になるにつれレモンのような楕円型になって写る現象を「口径食」といいます。玉ボケ写真を撮る時には絞り値を小さめに設定することが多いと思いますが、もし気になるようであれば絞り値を1、2段、大きくすることで目立たなくなりますので試してみてください。

絞り優先オートはカメラ初心者の方にこそ、ぜひ一度おためしいただきたい設定です。絞り値を変えながら撮った写真を比べ、その中から一番イメージに合った1枚を選んでみてください。そんな風に楽しんでいるうちに、カメラやレンズのことが自然と身に付いていくのではないでしょうか。ボケ感を自由にコントロールして、もっと写真を楽しんでくださいね。

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