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Lesson4:ピントの合わせかた

撮りたいものをはっきりと写すには、「ピント」をきちんと合わせて撮影することがとても大切です。今回はオートフォーカスを中心に、ピント合わせの基本と使いかたのコツをご紹介します。

撮影監修:斎藤勝則

この写真、ピンボケ? 手ブレ?

魅力的な被写体を見つけて写真を撮ったあと、液晶モニターで確認したときは気にならなかったのに、帰宅後にパソコンの画面で見たら被写体がぼやけていた…という経験が誰でも一度はあるのではないでしょうか? そのような写真に多いのが「ピンボケ」と「手ブレ」です。

主役にしたかった手前の葉っぱがボケて、背景にピントが合ってしまいました。これが「ピンボケ」の写真です。

こちらは全体的にボヤっとして写っていますね。シャッターを押すときにカメラが動いてしまったのでしょう。これが「手ブレ」の写真です。

手ブレ防止にはしっかりとした構えかたで撮影することが重要です。詳しくは『Lesson1:カメラの構えかた』で紹介しています。

Lesson1:カメラの構えかた

大きく写る手前の花々から奥に向かってピントがばっちり合っています。こんなふうに撮影できると気持ちいいですよね。

オートフォーカスとマニュアルフォーカス

いつもはオートフォーカスで

オートフォーカスは「カメラが自動的にピントを合わせる」便利な機能です。被写体にカメラを向けてシャッターボタンを半押しにすれば、誰でも簡単にすばやくピントを合わせることができます。
通常はオートフォーカスで撮影することをおすすめします。ただ、万能ではないためピント合わせの基準となるフォーカスポイントと、自分がピントを合わせたいところが微妙にずれてしまうときなどはマニュアルフォーカスを活用するといいでしょう。

マニュアルフォーカスを使いたい場面

マニュアルフォーカスは「手動でピントを合わせる」機能です。

こんな場合はマニュアルフォーカスでピントを合わせてみましょう。なお、オートフォーカスとマニュアルフォーカスの切り換えについてはお使いの使用説明書でご確認ください。

今回はオートフォーカスでのピント合わせについて学んでいきます。カメラのフォーカスモードがAFになっているかを確認しておきましょう。

オートフォーカスの苦手なシーン

オートフォーカスでの撮影中、「あれ? ねらいたいところに合ってくれない」というときがあります。実は、オートフォーカスが苦手とするシーンもいくつかあるのです。

  • 白壁や背景と同色の服を着ている人物の撮影など、被写体の明暗差がはっきりしない場合
  • オリの中の動物など、フォーカスポイント内に遠くのものと近くのものが混在する被写体
  • ビルの窓やブラインドなど、連続した繰り返しパターンの被写体
  • 太陽を背景にした日陰の人物など、被写体の明暗差が極端になる場合
  • 遠くの建物を背景にした人物 など、背景に対して被写体が小さい場合
  • 一面の花畑など絵柄が細かい場合
明暗差がはっきりしないため、ピントを合わせたかった中央の花びらがピンボケしてしまいました。

オートフォーカスの苦手なシーンは最初からマニュアルフォーカスに設定して撮影するのをおすすめします。

基本的なオートフォーカス撮影

被写体や撮影シーンに合わせて、AFモードとAFエリアモードを選択しましょう。

AFモード

オートフォーカスがどのように機能するかを設定する機能です。

シングルAFサーボ(AF-S)

シャッターボタンを半押ししてピントを合わせると、半押ししている間はそのピントの状態を保ちます。ピントが合っていないとシャッターを切れません(※)。

コンティニュアスAFサーボ(AF-C)

シャッターボタンを半押ししてピントを合わせたあとも、半押ししている間は被写体にピントを合わせ続けます。ピントが合っていなくても、いつでもシャッターを切れます(※)。

※ カメラの設定で変更することが可能です。

AFエリアモード

ピントを合わせる範囲を設定する機能です。代表的なものをご紹介しましょう。

シングルポイントAF

1つのフォーカスポイントを自分で選んで、そのフォーカスポイントだけを使ってピントを合わせます。

ダイナミックAF

選んでいる1つのフォーカスポイントとその周辺のフォーカスポイントのピント情報を利用して、被写体にピントを合わせ続けます。AFモードが[AF-C]のときに設定できます。

オートエリアAF

カメラが自動的に写したい被写体を判別してピントを合わせます。人物の顔を認識すると顔を優先してピントを合わせます。

ほかにも、シングルポイントよりも狭い範囲でピント合わせをする[ピンポイントAF]、シングルポイントよりも広い範囲でピント合わせをする[ワイドエリアAF][グループエリアAF]、予測しにくい動きの被写体を追い続ける[3D-トラッキング][ターゲット追尾AF]など、いろいろなAFエリアモードがあります。設定できるAFエリアモードは機種によって異なりますので、お使いの機種の使用説明書を確認しておくようにしましょう。

撮影シーンに合わせたオートフォーカスの設定

撮影シーンに合わせた、おすすめのAFモードとAFエリアモードをご紹介します。

風景や料理など、静止している被写体

AFモードを[AF-S]に、AFエリアモードを[シングルポイントAF]に設定します。
[AF-S]であれば、「ピントが合っていないのにシャッターを切ってしまった」ということがなくなります。被写体が動かないので、[シングルポイントAF]で合わせたい位置にピントがあっているかどうかをしっかりと確認してから撮影するとよいでしょう。

手前にあるイチゴの光沢のある位置にピントを合わせました。

ナプキンの上に飾られた銀色のリボンにピントを合わせています。

スポーツや乗り物など、動きのある被写体

AFモードを[AF-C]に、AFエリアモードを[ダイナミックAF]に設定します。[ダイナミックAF]で被写体を追い続ければ、シャッターを切るまでオートフォーカス機能がピントを合わせ続けるので、カメラで被写体を追うことに力を注げます。

速いスピードで移動するジェット機にピントを合わせ続けて撮影しています。

動き回るユキヒョウのように、不規則な動きをする被写体にもおすすめです。

人物撮影やスナップ撮影など、シャッターチャンスを逃したくないシーン

AFモードを[AF-C]に、AFエリアモードを[オートエリアAF]に設定します。
ピントを合わせているうちにシャッターチャンスを逃してしまった……ということはありませんか? この組み合わせなら、被写体の判別とピント合わせはカメラに任せ、シャッターを切ることに集中できます。

カメラが被写体を判別してピントを合わせてくれる[オートエリアAF]は街歩きのスナップに最適です。

しぶきをあげて水上を疾走するジェットスキーヤーの撮影にも[オートエリアAF]は対応できます。

瞳にピントを合わせてポートレートを撮影しよう

ミラーレスカメラZ シリーズやデジタル一眼レフカメラD780には[瞳AF]機能が搭載されています(2020年6月現在)。カスタムメニューで「オートエリアAF時の顔と瞳認識」を有効にしておくと、AFエリアモードを[オートエリアAF]にしているときのライブビュー撮影で[瞳AF]機能が使えるようになります。[瞳AF]では、ピントを合わせる瞳を右目と左目で選択することができます。人物が複数の場合は、それぞれの人の右目と左目を選択できます。
[瞳AF]を使うときのAFモードは[AF-C]がおすすめです。人物の頭は常に動いているものですが、[AF-C]ならばシャッターを切る瞬間まで瞳をとらえ続けます。

向かって右側の瞳を[瞳AF]機能が正しく認識しています。

ピント合わせのコツと便利な機能

フォーカスロックを使う

フォーカスロックとは、ピントを合わせたい被写体がどのフォーカスポイントにも入らないときや、オートフォーカスが苦手な被写体を撮影するときに、ピントを固定して撮影する方法です。具体的な活用シーンを見てみましょう。

海岸でのポートレート撮影。日の丸構図を避けたいので、モデルを右側に配した構図で撮影しようとしたところ、ほしいところにフォーカスポイントがありませんでした。そこでフォーカスロックを使って意図どおりの構図をねらうことにしました。この撮影でのAFモードは[AF-S]に設定しています。

1.モデルにフォーカスポイントを重ね、シャッターボタンを半押しします。これでモデルにピントが固定されます(フォーカスロック)。

モデルをフレームの中央において、ピントを合わせています。

2. シャッターを半押しでフォーカスロックしたまま構図を変えて、シャッターボタンを全押しして撮影します。

フォーカスロックしたまま、モデルを右に寄せてシャッターを切ることで、意図通りに撮影できました。

ライブビュー撮影時にフォーカスポイントを拡大表示する

ライブビュー撮影や電子ビューファインダーでのファインダー撮影では、ピントを合わせている部分を拡大表示してより正確なピント合わせが可能です。拡大表示するには、カメラのを押します。

ライブビュー撮影でフォーカスポイントを決めます。

を押してフォーカスポイントを拡大し、ピントがしっかり合っているかどうかを確認します。

フォーカスポイントを中央に戻すには

マルチセレクターの中央ボタンを押すと、フォーカスポイントが中央に移動します。フォーカスポイントは撮影する前にいったん中央に戻しておくと、ピントを合わせたい位置までの移動が楽になるのでおすすめです。

※ AFエリアモードが[オートエリアAF]の場合やカスタムメニューで中央ボタンに別の機能を設定している場合は機能しません。

オートフォーカス中にマニュアルでピントを合わせるには

[M/A][A/M]モードがあるレンズやAF-Pレンズを付けている場合、オートフォーカス中でもレンズのフォーカスリングを回してマニュアルによるピント合わせが可能です(※)。フォーカスリングはシャッター半押し状態で回します。
オートフォーカスでの撮影中、ピントが合いにくくなってしまったとき(ピント合わせに迷っているとき)などに、瞬時にマニュアルフォーカスに切り換えることができます。

※ Zマウントのフォーカスリングがないレンズの場合、カメラ側でコントロールリングに[M/A]を割り当てる必要があります。

最短撮影距離を確認しよう!

撮影に夢中になって近寄りすぎたりするとあれ?ピントが合わない…というとき、ありますよね。
その場合は、被写体がレンズの最短撮影距離より近くにあるのかもしれません。最短撮影距離とは距離基準マークから被写体までの距離のことです。お使いのレンズの最短撮影距離を頭に入れておくと、いざというとき近すぎて撮れなかったということがなくなります。

いかがでしたでしょうか。オートフォーカスとマニュアルフォーカスそれぞれの特長と使いかたを覚えて、ピントが気持ちよく合った作品づくりを楽しんでください。

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