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D850

撮影のコツ

フィルムデジタイズ1 ネガ基本編

解説:山野 泰照

フィルムデジタイズ

フィルムデジタイズとは、銀塩フィルム(以下、フィルム)に記録されている画像情報をデジタルデータにすることです。従来はフィルムスキャナという専用の機材を用いてデジタイズすることが主流でしたが、デジタルカメラの高画素化に伴い、デジタルカメラを用いてフィルムを等倍でコピーする方法で高画質なデジタルデータを得ることが出来るようになりました。

フィルムのデジタイズに対するニーズは、フィルムの時代から写真が趣味で大量のフィルムのお持ちの方だけでなく、近年、フィルム(レンズ付きフィルムを含む)で撮影してラボでのサービスなどを利用してデジタル化した画像を楽しむことも人気が出ていますので、若い写真ファンの中にもあるようです。

フィルムデジタイズ作品
フィルムデジタイズ作品
フィルムデジタイズ作品
フィルムデジタイズ作品


  ネガフィルムデジタイズ機能

さてフィルムのデジタイズは、デジタルカメラを用いてフィルムを撮影すれば完了するのですが、特にカラーネガフィルムの場合は、フィルムのベースがオレンジ色のため、画像データから正しい色に変換する画像処理でのポジ化の作業は難しいものでした。D850には、銀塩のネガフィルムを撮影すれば階調を反転させ色を整えてくれるポジ化までをカメラのボディ内でやってくれるネガフィルムデジタイズという機能が搭載されましたので紹介します。ポジフィルムの場合は、フィルムを拡大して撮影するだけでデジタイズできるのですが、良い結果を得るためのコツがありますので、後編の「フィルムデジタイズ2 ポジ・ネガ応用編」で紹介します。

なおネガフィルムデジタイズ機能を用いて撮影した画像は、設定した画質モードによらずJPEG(FINE★)で記録されます。

ネガフィルムデジタイズ:FH-4を用いてカラーネガフィルムをセットしたところ
ポジフィルムデジタイズ︓FH-5を⽤いてスライドマウントのポジフィルムをセットしたところ

カメラ、レンズなどの準備

D850以外に必要なものは、35mm判のフィルムを画面いっぱいに撮影するための60mmのマイクロニッコールレンズと、フィルムをきちんとレンズの前に保持するためのアクセサリーとしてフィルムデジタイズアダプターES-2を用意すると良いでしょう。フィルムを、レンズの前の一定の距離に光軸に直行するように保持できて、周囲の光を遮光する工夫ができればフィルムデジタイズアダプターを用いなくても可能ですが、現実的には操作性を含めフィルムデジタイズアダプターES-2(以下ES-2)をお使いになるのが最良の選択と思います。


  光源について

デジタイズのための撮影に際しては光源が必要になります。
昼間の外光が入ってくる窓からの光を光源として利用することもできますが、大量のフィルムをデジタイズしたいとか、日が暮れてもデジタイズしたいという場合には、演色性の高い光源を用いたフィルム観賞用などの小型のライトボックスがあると便利でしょう。ただし、ほとんどの場合は、光源の性質を気にしなければならないカラーフィルムの場合でも、日常の生活空間にある照明の光(リビングの照明など)で実質的に問題ないことが多いですから、まずは試してみると良いと思います。モノクロの場合は、明るさだけが必要ですので、光源の種類によらず明るさが確保できれば大丈夫です。

フィルムデジタイズアダプターES-2 スリーブ状のフィルムもマウントされたフィルムにも対応可
ネガフィルムデジタイズ作業:ライトボックスを光源にしてネガフィルムデジタイズをしているところ


基本操作(35mm判ネガフィルムのデジタイズ)

D850に搭載されたネガフィルムデジタイズの機能は、ネガの画像をポジ化して記録できるのが大きな特徴ですが、記録される画像データがポジ化されるというだけでなく、作業の途中もネガポジ反転した画像を画像モニターで見ることが出来るように、ライブビュー状態から機能が起動するようになっています。


1. フィルムのセット

フィルムは、6コマ毎などに切断されているスリーブ状態のフィルムであればストリップフィルムホルダーFH-4(以下FH-4)に入れます。1コマの状態の場合、スライドマウントにマウントされていればスライドマウントホルダーFH-5(以下FH-5)に、マウントされていなければFH-4に入れます。

ブロアでフィルムに付着しているゴミやほこりを取り除いたあと、FH-4またはFH-5ES-2のホルダー挿入口から差し込みます。

ストリップフィルムホルダーFH-4
スライドマウントホルダーFH-5

2. ネガフィルムデジタイズ機能の起動

フィルムをセットしたES-2の拡散板を光源に向け、
① ライブビューセレクターを静止画にし、ボタンを押してライブビューをスタートさせます。
i ボタンを押し、[ネガフィルムデジタイズ]を選択します。
③ デジタイズしたいフィルムの種類によって[カラーネガフィルム]または[モノクロネガフィルム]を選択します。デジタイズしたいフィルムがカラーネガフィルムであっても、[モノクロネガフィルム]を選択することもできます。

②[ネガフィルムデジタイズ]選択画面
③[カラーネガフィルム]を選択
③[モノクロネガフィルム]を選択


3. 撮影手順

3-1. 構図の決定

まず構図を決めます。デジタイズしたい領域が画面いっぱいになるように構図を決めておくと、撮影後に画像をトリミングする必要がなくなります。 SnapBridgeでスマートデバイスに画像転送して画像をすぐに活用したい時などは特に便利です。

3-2. 明るさの調節

次に、画像モニターを見てネガポジ変換された画像の明るさを確認し、必要があれば調節します。明るさは自動で調節されますが、明るくしたい、あるいは暗くしたい場合は、 ボタンを押して[明るさ補正]画面にし、マルチセレクターやタッチパネルを用いて明るさを調節してください。-5~+5の範囲で調節することができます。

明るさの調節:明るさの調節をしたい時はOKボタンを押す
明るさの調節:+5から-5の範囲から選択し、OKボタンを押す

3-3. ピント合わせ

あとは、ピントを合わせて撮影するだけです。
ピント合わせは、ほとんどの場合、オートフォーカスで大丈夫です。フォーカスポイントが被写体(フィルム)のローコントラストの部分にある場合はうまくピントが合わない場合がありますが、その時は、AFエリアモードをワイドエリアAFにする、フォーカスポイントをコントラストがある部分に移動させる、あるいはマニュアルフォーカスにしてピント合わせをすればよいでしょう。

※ 撮影は、光源やフィルムの状態(濃度)よっては比較的スローシャッターになることもありますが、フィルムデジタイズアダプターなどでフィルムが固定されている場合はブレの心配ありません。またそういうスローシャッターになる場合は、ライブビュー画面ではノイズが目立つことがありますが、実際の撮影はスローシャッターでたっぷり露光されますので撮影された結果は、ノイズは目立ちませんからご安心ください。

後編の「フィルムデジタイズ2 ポジ・ネガ応用編」では、ポジフィルムのデジタイズ手順やネガフィルムデジタイズの応用的な使い方などをご紹介します。

【コラム:活用法1】

D850のネガフィルムデジタイズ機能を使う時やポジフィルムのデジタイズをする場面で、HDMIケーブルで接続したTVなどの大きな画面を利用すれば作業そのものが楽になるだけでなく、作業そのものが楽しくなりますのでご紹介しておきましょう。

「楽になる」のは、カメラの設定を確認するのにメニュー画面などをボディの画像モニターを見るよりも大きい画面の方が見やすいのは言うまでもありませんし、フィルムに写っている画像の水平や垂直を確認しやすい、何枚か連続して撮影したものの中からベストなものを選択するときに微妙な違いまですぐに確認できるというような話です。

さらに「楽しくなる」というのは、フィルムに写っているものが大きく見えることで、デジタイズという目的で作業を始めても、知らず知らずのうちに鑑賞に移行してしまうことで楽しくなるということに気づきました。ついつい見入ってしまう、懐かしいという気持ちに浸ってしまうという楽しさです。

ひとりで作業を行う時にはPCのモニターでも十分楽しいのですが、大画面のTVになれば大勢で見て会話が弾むというようなことにもなります。そうなると、デジタイズの作業というよりは鑑賞会と言ったほうが良いかもしれませんが、ダイレクトに大きく見ることが出来る価値というものが、作業性の改善だけでなく、新しい使い方を示してくれているような気もします。フィルムのデジタイズに関して筆者は、フィルムスキャナの時代からいろいろ取り組んできましたが、作業そのものを楽しいと感じたことは今回がはじめてでしたので、紹介しておくことにしました。



【撮影のコツ|ピックアップ】フィルムデジタイズ2 ポジ・ネガ応用編



山野 泰照(やまの やすてる)氏 プロフィール

写真家、写真技術研究家。1954年、香川県生まれ。1970年代から天文雑誌での作品発表や記事の執筆を行う。2000年以降、デジタルフォト、デジタル天体写真に関する発表や記事を多数手掛け、著書として「デジカメではじめるデジタルフォトライフ」、「驚異! デジカメだけで月面や土星の輪が撮れる—ニコンCOOLPIX P900天体撮影テクニック」などがある。一般社団法人日本写真学会会員(SPIJ)、公益財団法人冷泉家時雨亭文庫会員。

フィルムデジタイズ1 ネガ基本編 で使った機能
機能の詳しい説明や操作手順についてご確認いただけます。

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