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Lesson26:湯気の立ったあたたかい料理を撮る

料理の温度や匂い、食感までも伝わってくるような感覚のことを「シズル感」といいますが、料理をおいしそうに撮るためには、このシズル感をいかに出すかということが大切です。それにはいくつかポイントがありますが、寒い季節に食べたくなるシチューや鍋などのあたたかい料理の場合、欠かせないのはやはり「湯気」です。
湯気をしっかり捉えるためには準備が必要となりますが、逆に言えば、準備が整えばプロでなくても撮影できるテクニックです。今回はビーフシチューを例に、リビングの室内光の下で湯気を捉えるためのポイント、コツを3ステップでご紹介します。あたたかな料理が食卓に並ぶ機会も増える季節、ぜひ、湯気撮影にチャレンジしてみてください。

撮影監修:斎藤勝則

この写真を撮るための3ステップ

ステップ1 食器と撮影場所の背景は暗い色で統一

湯気は白いため、同系色となる白系の器やテーブル、壁の前では湯気が目立たなくなってしまいます。食器は黒や濃茶など暗めのものを、テーブルや背景もなるべく暗い色になるよう準備しましょう。
今回は、食器を置くテーブルの上には黒いクロスを敷き、黒っぽい壁の前にテーブルをセットしました(白い壁しかない場合には、黒い布などを貼って対応するのがおすすめです)。

室温は低く、湿度は高く

湯気をより濃く出したいのなら、「室温」と「湿度」にも気を配っておきましょう。寒い冬の日に息が白くなるのと同様に、室温も低いほど湯気は濃くなります。冬は暖房器具を切って、夏はクーラーで部屋を冷やしておくのがおすすめです。
また乾燥した場所では湯気がすぐに空気に含まれてしまうため消えやすく、湿度のある場所では湯気も多少長く残ってくれるため撮影がしやすくなります。湿度をなるべく高く保つために、加湿器などを室内に置いておくと良いでしょう。

ステップ2 シャッタースピードを速くして湯気をしっかり捉える

素早く上に上っていく湯気を表現するためのカメラ設定のポイントは「シャッタースピード」です。シャッタースピードの速さによって、以下の図のように湯気の写りかたが変わります。どのようなイメージで湯気を写したいか、また湯気の上がる速度や撮影時の光量に合わせてシャッタースピードを調整しましょう。

今回は夜に、一般的なリビングにある室内光で撮影を行いますのでシャッタースピードは遅くなりがちです。湯気をよりはっきりと捉えるため、シャッタースピードを速くする設定を行います。
今回は「マニュアルモード」で、絞り(どの程度ボカすか)とシャッタースピード(どのくらいのスピードで湯気を捉えるか)を好みの数値に設定します。合わせてISO感度を「感度自動制御」ONに設定します(ISO感度が上がり過ぎないよう[制御上限感度]を使用します)。これにより、カメラまかせで常に適正露出が得られるようになります。

マニュアルモードを使ったことがないという方も、室内光で撮る場合は以下の手順通りの設定で撮影できますので、試してみてください。

1

[撮影モードダイヤル]を[M]に合わせ(カメラの機種によっては、中心のダイヤルロックボタンを押しながらダイヤルを回します)、マニュアルモードに設定します。

2

[静止画撮影メニュー]から[ISO感度設定]を選びます

3

[感度自動制御]をOFFからONに設定します

4

次に[制御上限感度]を6400に設定します

5

絞りはf/5.6に、シャッタースピードを1/125秒に設定したら、準備完了です

ISO感度をオート(感度自動制御)にするのはなぜ?

マニュアルモードは絞りとシャッタースピードの数値を自分で決めて撮影するモードのため、撮影状況によって適正な明るさの写真にならなかったり被写体がブレてしまったりと、撮影をコントロールすることが難しい場合があります。ですがたとえば、今回のように撮影条件が変化しない(室内光で光の量が一定に保たれ、被写体も同じものを撮影する)場合では、マニュアルモードで絞りとシャッタースピードを好みの数値に固定して撮るのがおすすめです。
その場合に必要となる設定が、ISO感度をオートに(感度自動制御をONに)することです。ISO感度をオートにすることで、設定した絞りとシャッタースピードに合わせて適正な露出になるようカメラが自動でISO感度を変更してくれるため、明るすぎる、暗すぎるといった失敗を防ぐことができるのです。

なお今回は、ISO感度が上がり過ぎないよう「制御上限感度」を6400に設定しています。撮影状況によっては制御上限感度の6400で撮っていても暗い写真になってしまうことがあるかもしれません。その場合は、制御上限感度の設定をもう少し上に設定、ISO感度を上げて撮影してみてください。

ステップ3 アングルは低い位置からアップ目に、湯気とシズル感を狙う

ここまで準備が整ったところで、熱々に温めたシチューを器によそって撮影場所にセット、湯気が消えないうちに撮影します。最後のポイントはより湯気の目立つ、シズル感ある構図で切り取ることです。
料理撮影の基本は目線に近い斜め上45度からとよく言われますが、湯気を撮るならおすすめは30度程度の少し低いアングルから、暗い背景部分に立ち上がる湯気の部分が重なるようにすると良いでしょう。また、お皿全体を入れて撮るよりもシチュー部分にグッと寄って撮ってみましょう。構図に安定感が出るだけでなく、背景もボケてくるため一番おいしそうな部分を目立たせることができ、よりシズル感を演出することができます。

ピントは一番おいしそうと思える場所に合わせて。器のフチの部分にピントが合ってしまいがちですので、注意しましょう。今回は[ワイドエリアAF(S)]でピントを合わせました

自然光では逆光(半逆光)で

湯気は、細かな水の粒子に光を当て反射させることでその姿を捉えることができます。自然光で撮影する場合には室内の電気を消し、窓辺など一方向から逆光(または半逆光)で湯気に光が当たるような場所にセットすることで、より立体的にその輪郭を撮影することができます。
また、背景が明るいと湯気は目立ちません。室内の影になっているところや黒っぽいものが背景になるように撮るのがポイントです。

窓からの光を利用し、逆光で湯気を撮影。窓を背景にしてしまうと、湯気があまり目立ちません

撮影する角度を変えて、半逆光になる位置から黒い壁を背景に撮影。立ち上る湯気が濃く、しっかりと写りました

作例バリエーション

ギャラリー

このギャラリーでは「カメラレッスン」で撮影した作品を掲載しています。
写真の目的で絞り込んで作品を検索することができますので、この目的でどんな作品が撮れるのか参考にしながらご覧ください。

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