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2022年12月の星空

11月8日の皆既月食と天王星食、ご覧になれたでしょうか。今月も、ふたご座流星群や火星の最接近など注目の現象があります。暖かい服装で年の瀬の星空を楽しみましょう。

星空写真

三重県 丸山千枚田にて
三重県への旅行の際、丸山千枚田にはどうしても行きたかったので、天気も良く楽しみな気持ちで撮影したことが思い浮かびます。斜めに入る月光を利用して棚田の影が強調され、面白い紋様ができました。秋から冬への移り変わる星々が棚田に浮かんでいます。

2021年11月25日 22時34分
ニコン D810A+AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED(14mm、ISO8000、露出15秒×16枚を合成、f/2.8)
撮影者:石橋 直樹

12月の星空

南の空

南の空

2022年12月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、上弦(30日)、満月(8日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2022年12月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。

天文カレンダー

1日(木) 地球と火星が最接近(「今月の星さがし」で解説)
2日(金) 夕方~翌3日未明、月と木星が接近(「今月の星さがし」で解説)
8日(木) 満月。次の満月は来年1月7日です
火星が衝(一晩中見えるので観察の好機です。「今月の星さがし」で解説)
未明~明け方、月と火星が並ぶ
宵~翌9日未明、月と火星が接近(「今月の星さがし」で解説)
11日(日) 未明~明け方、月とポルックスが並ぶ
宵~翌12日明け方、月とポルックスが接近
14日(水) ふたご座流星群の活動がピーク(「今月の星さがし」で解説)
深夜~翌15日未明、月とレグルスが接近
16日(金) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
19日(月) 未明~明け方、月とスピカが接近
22日(木) 冬至(北半球では、一年のうちで一番夜が長い日)
明け方、細い月とアンタレスが大接近
23日(金) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
25日(日) このころ、夕方に全惑星が見える(「今月の星さがし」で解説)
29日(木) このころ、夕方に水星と金星が大接近
夕方~深夜、月と木星が接近(「今月の星さがし」で解説)
30日(金) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)

12月の惑星

水星

中旬以降、夕方の南西の低空に見えます。

日の入り30分後(東京で夕方17時ごろ)の高度は7度前後でかなり低いのですが、太陽から大きく離れることがない水星としては比較的見やすい条件です。近くに輝く金星を見つけてから水星を探すとわかりやすいですが、もちろん金星も低いので、見晴らしが良く空が開けたところで探してみましょう。双眼鏡を使うと見やすくなり、位置がわかれば肉眼でも見えます。

金星

中旬以降、夕方の南西の低空に宵の明星として見えます。

日の入り30分後(東京で夕方17時ごろ)の高度は7度前後でかなり低いのですが、とても明るいので、建物などに隠されていなければ見つけるのは簡単です。太陽が沈んでしばらくしてから、見晴らしの良い場所で探してみましょう。スマートフォンのアプリなどを使うと、方角や高さの見当をつけやすくなります。近くにある水星も一緒に見つけてみてください。

火星

「おうし座」にあります。太陽と正反対の方向にあるので、ほぼ一晩中見ることができます。明るさは約マイナス1.7等級です。

1日に地球と最接近し、この前後の期間にとくに明るく目立って見えます。「おうし座」のアルデバランと競い合うように赤く輝く光景が見ものです。日を追うごとにアルデバランに近づいていく様子もわかるでしょう。天体望遠鏡で観察すると、表面の濃淡などの模様が見えるかもしれません。

8日の未明から明け方、また8日の夕方から9日の未明にかけて、ほぼ満月の丸い月と接近して見えます。とくに8日の宵は見やすい時間帯で目を引く共演となるでしょう。

木星

「うお座」にあります。18時ごろに真南の空の高いところに見え、0時ごろに沈みます。明るさは約マイナス2.5等級です。周りに明るい星が少ないので、よく目立ちます。

宵の見やすい時間帯に見やすい高さにあり、観察の好期が続いています。2日と29日に上弦前後の半月状の月と並ぶ光景は、肉眼や双眼鏡で楽しめます。

天体望遠鏡では縞模様や4つのガリレオ衛星が見ものです。ガリレオ衛星の並び方が日々変化する様子を観察してみましょう。

土星

「やぎ座」にあります。日の入り1時間後(東京で夕方17時30分ごろ)に南西の空に見え、21時ごろに沈みます。明るさは約0.8等級です。

宵のころには低くなってしまうので、早めの時間帯に観察しましょう。天体望遠鏡で見やすいのは今月いっぱいくらいなので、環の見納めをしてみてはいかがでしょうか。

今月の星さがし

地球と最接近する火星が見ごろを迎えています。色や明るさ、星座中の動きに注目しましょう。ふたご座流星群は月明かりの影響がありますが楽しみです。

火星が地球最接近

20時ごろ、東の空に「おうし座」や「オリオン座」が見えていますが、その星々の間にひときわ明るく赤っぽい星が目立って輝いています。太陽系の中で地球の1つ外側を巡る惑星、火星です。今月1日に地球と火星が最接近する(宇宙空間で距離が最も近づく)ので、この冬は火星が最も明るくなり、天体望遠鏡で見たときのサイズが最も大きくなって見ごろを迎えています。

火星は太陽のまわりを1.9年かけて公転しています。地球は1年で公転するので、地球は火星を内側から追い越していきます。この追い越すタイミングが「地球と火星の最接近」で、およそ2年2か月ごとに起こります。

各回の最接近で、地球と火星の距離は大きく変わります。これは、火星の軌道がかなりつぶれた楕円軌道だからです(地球も楕円軌道ですが、火星のほうがよりつぶれた軌道です)。近い最接近であれば6000万kmよりも近づきますが、遠い最接近だと1億km以上も離れることもあります。今回の最接近距離は約8150万kmで平均的な距離と言えそうです。次に同程度の接近となるのは10年以上も先になるので、この冬はとくに火星に注目したいですね。

2022年から2023年の地球と火星の動きと距離。近いほど明るく大きく見える。12月1日に地球が火星を追い越すタイミングで最接近する

近年の地球と火星の最接近の日付と距離

火星が地球と最接近し大きくなるといっても、見かけのサイズは満月の1/100ほどしかないので、肉眼や双眼鏡では模様は見えません。天体望遠鏡を使うと表面の濃淡が見えてきます。冬季は上空の気流が乱れていて像が揺れることが多いのですが、良い条件に巡り合えたらしっかり観察してみてください。天体観察会やインターネット中継イベントなどで見るのも良いでしょう。火星は約24時間40分で自転しているので、見える模様も日時によって変わります。

肉眼や双眼鏡では、近くに見える「おうし座」のアルデバランとの赤さ、明るさ比べが楽しみです。また、日に日にアルデバランに近づいていくように見え、惑星である火星が星々の間を動く様子を実感できるでしょう。撮影して日ごとの位置を記録するのも面白そうです。

火星はこの後も来年7月ごろまで長期間見ることができますが、とくに明るく、(望遠鏡で)大きい様子を見られるのは今月いっぱいです。暖かくして火星鑑賞をお楽しみください。

14~15日ごろ、ふたご座流星群

毎年12月中旬ごろに活動がピークとなるふたご座流星群は、寒いことを別とすれば一年で最も見やすい流星群です。

といったことが理由です。条件が良ければ一晩で100個以上の流れ星が見えることもありえます。

今年ふたご座流星群の活動が最も活発になるのは14日の22時ごろと予想されています。ちょうど同じころに月が昇ってくるため、一晩中、月の明かりの影響があります。このため、目にできる流れ星の数は少なくなってしまいそうです。見晴らしの良さや街明かりの強さなどにも左右されますが、1時間あたり15~20個程度でしょう。月が昇ってくる前の時間帯に見るのがおすすめです。

12月14日22時ごろの空の様子(場所の設定は東京)。流れ星は放射点(「ふたご座」の方向)を中心とした空全体に飛ぶように見える

流れ星観察の重要なポイントは、空を広く見渡すことです。流れ星は、ふたご座の方向「だけ」に飛ぶのではなくふたご座(放射点)を中心として「空のあちこち」に飛びます。東西南北、頭の真上から地平線の近くまで、どこにでも流れるので、肉眼で広い範囲を眺めましょう(双眼鏡や天体望遠鏡は要りません)。同じ理由で、なるべく視界が開けたところで観察するほうが、流れ星を見やすくなります。また、月からなるべく離れた方向を中心に眺めると、月の眩しさの影響を和らげることができます。郊外などで観察する場合には、高いところを中心に眺めると街明かりの影響が小さくなります。

1時間に15個見えるとすると平均では4分間に1個見えることになりますが、観察を始めてすぐに流れ星が飛ぶとは限りません。防寒の準備と体調管理をしっかりとして、安全やマナーに配慮して、少なくとも15分くらいは流れ星を待ってみましょう。とても寒いので、くれぐれも無理はしないようにお気をつけください。また、ピークの前後数日間も、数は減りますが流れ星を見られるチャンスはあります。ちょっと気にかけて星空を見上げてみましょう。冬の星々の間や火星、木星の近くなどに流れると、とくに印象に残りそうですね。1つでも多くの流れ星が見えますように。

月と惑星の共演

今月起こる、月と惑星の接近現象をまとめてご案内しましょう。月の形、月と惑星の間隔、惑星の色と明るさが現象ごとに異なることがわかります。日時と方角・高さを確認して、肉眼や双眼鏡で眺めたり、地上風景とともに写真に撮ったりして楽しみましょう。それぞれピンポイントでこの時刻というわけではなく、地平線の上にあって空が明るくなければ前後の時間帯でも見られます(方角や高さは変わります)。また、望遠鏡で見たイメージはすべて同じ拡大率にしてあるので、各惑星の見かけサイズがどのくらい違うのかを確かめてみてください。

東京で見た月と惑星の共演の様子。大きい円は拡大イメージ(視野6度/26日の月と土星は円内に収まらないので略)、小さい円はさらに拡大したイメージ(正立像、月と惑星で拡大率は異なる)

25日ごろ以降の夕方には、月と全惑星が地平線上に見えます。水星と金星が低いことや、空が暗くないため天王星と海王星を見つけるのは天体望遠鏡でも少し難しいことから、決して見やすい現象ではありませんが、珍しい機会ですので、1つでも多くの天体を探してみましょう。

12月25日夕方の、南西の空の様子(場所の設定は東京)

12月25日夕方の、東~南西の空の様子(場所の設定は東京)

今月の星座

おひつじ座

3月下旬から4月中旬ごろに誕生日を迎える人の星座として名前が知られている「おひつじ座」、宵空で見やすいのは12月ごろです。12月中旬の21時ごろに、頭の真上あたりに見えます。

「おひつじ座」

「おひつじ座」の目印となるのは2等星のハマルで、この星と3等星のシェラタンが天頂のあたりに並んでいるのを見つければ位置の見当を付けられます。ハマルとシェラタンは羊の頭から角の位置にあたり、他のいくつかの星を結ぶと「おひつじ座」の全体像が見えてくるのですが、星図からわかるように、星をつないで羊の姿を想像するのはちょっと難しそうです。

神話では黄金の毛皮を持ち、空を飛ぶことができたと言われている羊です。その逸話ほど目立っているわけではありませんが、暖かい金の羊毛をまとって冬の夜空を駆ける姿を想像してみてください。

二重星メサルティム

ハマルとシェラタンのそばにある4等星メサルティムは、肉眼や双眼鏡では1つにしか見えませんが、天体望遠鏡で観察すると2つに分かれて見える二重星で、色も明るさもほぼ同じ星が仲良く並んでいます。二重星というと色の対比を楽しむことが多いものですが、こうした「そっくり二重星」も面白いのではないでしょうか。

天王星

先月の皆既月食の時に月のそばに見えていた天王星が「おひつじ座」の領域にあります。地球から遠いため見かけの動きが小さいので、先月からあまり位置は変わっていません。目立つ星が少なく位置の見当がつけにくいのですが、星図を参考にしながら双眼鏡で探してみましょう。日付や時刻によっては図を傾けないと実際の見え方と一致しないことがあるので、星の配列をよく確かめるのがポイントです。

望遠鏡で見ると青緑色の小さな小さな円盤状の姿をとらえることができます。公開天文台や科学館で見られるチャンスがあるかもしれませんので、天体観察会などに参加してみるのもいいでしょう。

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は12月中旬の深夜1時ごろの星空です。来年1月中旬の深夜23時ごろ、2月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。

2022年12月中旬 深夜1時ごろの星空

ちょうど真南の空に「冬の大三角」が見え、星の輝きも空気の冷たさも、まさに冬という印象の夜空です。冬の星々は明るいだけでなく、色とりどりであることも大きな特徴です。今期は火星も加わって、さらに豪華さ華やかさがアップしています。深夜になっても街が明るい時期ですが、地上のイルミネーションだけでなく夜空の美しい輝きにも目を向けてみましょう。

関東地方より南の地域では、南の地平線近くに「りゅうこつ座」の「カノープス」も見えるかもしれません。一目見ると寿命が延びると言われる縁起の良い星です。天候や観察場所の条件に恵まれた日にはぜひ探してみてください。

この空の様子は新年を迎えるころ、つまり2023年1月1日の0時とほぼ同じです。除夜の鐘を聞きながら夜空を見上げれば、こんな星々が見えるというわけです。2023年も美しい星空や天文現象に出会えること、安心して星空を楽しめる世の中となることを願いながら、よい新年をお迎えください。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

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