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2021年9月の星空

宵の南の空に木星と土星が並び、観察シーズンを迎えています。望遠鏡で模様や環を見てみましょう。天頂では大きな翼を広げたはくちょう座が、天の川の流れの中を気持ち良さそうに飛んでいます。

星空写真

長野県 茶臼山湖にて
茶臼山湖のほとりからの撮影で、名古屋方面の光害を受けながら沈んでいくはくちょう座です。はくちょう座デネブの近くには北アメリカ星雲も写っており、画面上部にはカシオペヤ座とアンドロメダ座大銀河も見えています。湖面に星も映えて、にぎやかさを増しています。

2020年9月28日 2時12分
ニコン D810A+AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED(ISO 8000、露出15秒×16枚を合成、f/2.8)
撮影者:石橋 直樹

9月の星空

南の空

南の空

2021年9月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、上弦(14日)、満月(21日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2021年9月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。

天文カレンダー

3日(金) 未明~明け方、細い月とポルックスが接近
5日(日) このころ、夕方~宵に金星とスピカが大接近
7日(火) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
9日(木) 夕方、細い月と水星が並ぶ
10日(金) 夕方~宵、細い月と金星が接近(「今月の星さがし」で解説)
13日(月) 夕方~宵、月とアンタレスが並ぶ
14日(火) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)
17日(金) 夕方~翌18日未明、月と土星が並ぶ
18日(土) 夕方~翌19日未明、月と木星が接近
21日(火) 満月。次の満月は10月20日です
中秋の名月(「今月の星さがし」で解説)
23日(木) 秋分
26日(日) 宵~翌27日明け方、月とアルデバランが並ぶ
29日(水) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)

9月の惑星

水星

下旬ごろから、夕方の西の低空に見えます。

日の入り30分後(東京で夕方18時20分ごろ)の高度は5度未満と低く、見つけるのは困難です。スマートフォンのアプリなどで位置をよく確かめて、見晴らしの良いところで探してみましょう。少し離れたところに輝く金星との位置関係も参考になります。肉眼でも見える明るさですが、双眼鏡を使うと見やすくなります。

9日に月齢2の細い月と並びます。月を目印にして水星を見つけてみましょう。

金星

「宵の明星」として、夕方から宵の早い時間帯に西の空に見えます。

日の入り30分後(東京で夕方18時20分ごろ)の高度は約13度で、先月までとほとんど変わらず低いままですが、とても明るいおかげで、建物などに隠されていなければ簡単に見つかります。さらに30分後(つまり日の入り1時間後、東京で18時50分ごろ)には約8度まで低くなりますが、空が暗くなるので金星の輝きがいっそう強く感じられるでしょう。背景とのコントラストでどのように見え方が変わるか、確かめてみるのも面白そうです。

5日ごろに「おとめ座」のスピカと大接近して見えます。また、10日には月齢3の細い月と接近して見えます。「今月の星さがし」も参考にしてみてください。

火星

太陽と同じ方向にあるため、見えません。次は12月ごろから、明け方の東の低空に見えるようになります。

木星

「やぎ座」にあります。19時ごろに南東の空のやや低いところ、22時ごろに南の空、1時ごろに南西の空のやや低いところに見えます。宵の時間帯に見やすい高さにあり、観察の好期です。

明るさは約マイナス2.8等級で、宵空では(月を除けば)一番明るいのでよく目立ちます。木星の右に見える土星と、明るさや色を見比べてみましょう。16~18日には2惑星に月が近づき、3天体が並ぶ光景が見られます。

双眼鏡や天体望遠鏡を使うと、木星を公転する4つのガリレオ衛星や木星表面の縞模様が見えます。機材をお持ちの方は、「今月の星さがし」を参考にしてぜひ観察してみましょう。

土星

「やぎ座」にあります。19時ごろに東南東の空、21時ごろ南の空に見え、2時ごろに沈みます。明るさは約0.4等級で、土星の左のほうに見える木星よりは暗いものの、肉眼で簡単に見つけられます。

木星と同様、宵の時間帯に見やすい高さにあるので観察の好期です。天体望遠鏡で環を観察してみましょう。肉眼では、16~18日に月と木星・土星が並ぶ光景をお楽しみください。

今月の星さがし

木星が宵空で明るく目立ち、見ごろです。模様や衛星を観察してみましょう。10日に宵の明星と並ぶ細い月は日を追うごとに太くなり、21日の満月の日に中秋の名月となります。丸い月を愛でましょう。

木星が見ごろ

夜21時ごろに南の空を眺めると、明るい星が左右に並んでいる光景が目に入ります。向かって左の明るいほうが木星、右が土星です。どちらも宵のころに見やすい高さにあり、見ごろを迎えています。

存在だけなら肉眼でも簡単にわかる木星と土星ですが、天体望遠鏡で観察するとさらに面白くなります。土星は先月号でご紹介したので、今月は木星をピックアップしましょう。

木星観察でまず見たいのは、木星の周囲を公転するガリレオ衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)です。全部で約80個見つかっている木星の衛星のうち、ガリレオ衛星は大きく明るいので、一般的な望遠鏡で簡単に見ることができます。4つのうち一番内側のイオは2日弱で、一番外側のカリストは17日ほどで木星を一周するので、数時間から数日の間にも並び方が変わって見えます。観察するたびごとに、お互いの位置関係や木星からの離れ具合が変化しているのがわかるでしょう。ときどき、衛星が木星の裏に回ったり木星の影に入ったりして、3つ以下しか見えなくなることもあります。衛星が木星のすぐそばにあるときには、木星が明るいため衛星が見づらいこともありますが、反対にガニメデやカリストが木星から離れているときには双眼鏡でも見えるかもしれません。

ガリレオ衛星の動き。真ん中の木星の周りを4つのガリレオ衛星が回っている。「イ」=イオ、「エ」=エウロパ、「ガ」=ガニメデ、「ト」=カリスト。明るさは5~6等級

また、木星本体の縞模様も見ものです。小型の望遠鏡でも2~3本ほど見えるでしょう。色の違いは大気の成分や移動方向の違いによるものと考えられています。木星は太陽系の惑星の中で最も大きく、直径は地球の約11倍あるので、縞1本の幅が地球サイズに匹敵します。ローマ神話の最高神ユピテルの名を冠した惑星の姿を、じっくり眺めてみましょう。

ガリレオ衛星や縞模様は小型の望遠鏡でもじゅうぶん見えますが、科学館や公開天文台などの天体観察会では大きな望遠鏡で観察することができます。状況により人数制限等があるかもしれませんので、情報をチェックのうえ、参加される場合には安全に留意しながら木星や土星をお楽しみください。

10日 細い月と金星の共演

宵の明星の金星が、夕方の西の空で明るく目立っています。日の入りが夏よりも早くなっているので、18時30分~19時ごろには薄暮の中でまぶしく輝き、目を引く光景となっています。

9月10日19時の、西の空の様子(場所の設定は東京)。囲み内は拡大イメージ(視野6度)、小さい円は月と金星をさらに拡大したイメージ(正立像。月と金星の拡大率は異なる)

10日には月齢3の細い月が金星の上に並び、美しい共演を見せてくれます。それぞれ単独でもきれいな天体が並ぶという、たいへん見事な光景です。肉眼でよく見えるので気軽に眺めて楽しみましょう。街や自然の風景と一緒に眺めたり撮影したりするのもおすすめです。双眼鏡や天体望遠鏡で拡大して違う見え方を楽しむこともできます。

細い月と金星はおよそ1か月間隔で並び、年内は10月9日と10日・11月8日、12月7日にも接近して見えます。共演はとても珍しい現象というわけではありませんが、何度繰り返して眺めても美しく感じられるものです。間隔や角度、空の色や雲の様子なども考えると、同じような接近は二度とないとも言えます。今回の機会もぜひ、お天気に恵まれてご覧になれますように。

21日、中秋の名月

7月の七夕や8月の伝統的七夕、ペルセウス座流星群が夏の風物詩とすれば、「中秋の名月(十五夜の月)」は秋の風物詩と言えるでしょう。澄んだ秋の夜空に昇る丸い月は、たいへん美しいものです。街中からでも月はよく見えるので、気軽にお月見を楽しみましょう。

「中秋」とは、秋のちょうど真ん中を指す言葉です。日本でかつて使われていた暦(いわゆる旧暦)では7~9月が秋なので、旧暦の8月15日が中秋ということになります。現行の暦(新暦)では毎年異なる日付になり、今年は9月21日になります。そしてこの夜の月が「中秋の名月(十五夜の月)」と呼ばれています。

※旧暦は現在公的には使われていないため、中秋の名月の日は「太陽太陰暦と同じような方法で求めた8月15日に近い日」として、太陽の位置や月の満ち欠けをもとにして決められます。

十五夜の月は必ずしも満月になるとは限らないのですが、今年は2013年(9月19日)以来8年ぶりに日付が一致します。実は満月の瞬間は21日の朝8時ごろなので、21日の夕方に昇ってくる名月は少しだけ欠けています。「満月に近い」という観点では21日明け方の月のほうが丸いのですが、細かいことは気にせずに名月を楽しみましょう。できれば明け方と宵、両方の月を眺められると良いですね。どちらであれ、肉眼ではほぼまん丸に見えるはずです。

9月21日深夜、真南の空高く上った中秋の名月。赤い字は主な地形の名前、青い字はアポロ○○号と中国の探査車「嫦娥5号」の着陸地点

十五夜以降の月にも様々な呼び名が付けられています。翌日の月は十五夜よりやや遅く昇ることから、「ためらう」という意味の「いざよい(十六夜)」と呼ばれ、さらに翌日は「立って待っていると昇ってくる」ので「たちまちづき(立待月)」(以降、「いまち(居待)」「ねまち(寝待)」「ふけまち(更待)」)となります。こうした呼び方から、月が古来より親しまれてきたことが実感できるでしょう。ちなみに十五夜の前夜は「待宵(まつよい)」で、名月を待ちわびる様子が伝わりますね。

満ち欠けによる形の変化や「月のウサギ」として有名な表面の暗い模様は肉眼でもわかりますが、天体望遠鏡で観察すると、海と呼ばれる暗い部分(ウサギの正体)や数々のクレーターも見ることができます。さらにしっかりと観察すると、月の見かけの大きさが変化したり、月縁部の見え方が変わったりすることもわかるかもしれません。大きさが変わるのは月と地球との距離が変わるため(近いほど大きく見える)、縁付近の見え方が変わるのは月が地球に向けている面が微妙に変わるためです。

9月の月の見え方(日本時間21時の形)。満ち欠けだけでなく、見かけの大きさや縁に近い部分の見え方が変わることがわかる

普段、星空を見るにはまぶしすぎるため月明かりはないほうが嬉しいのですが、反対にその明るさから、月はどんな場所からでも手軽に楽しむことができる天体です。お供え物を用意して、月の魅力をたっぷりと感じてみてください。

今月の星座

はくちょう座

9月中旬の夜20時ごろ、頭の真上あたりに「夏の大三角」が見えます。3つの星はどれも1等星で明るいのですが、そのなかでは一番暗いのが「はくちょう座」の目印となる星、デネブです。残る2つは「こと座」のベガと「わし座」のアルタイルです。

「はくちょう座」「とかげ座」
(星雲の画像クレジット:ESO DSS2 (AURA))

このデネブを手がかりとして星々を十字形につなぐと、首を長く伸ばした白鳥が翼を大きく広げて空を飛ぶ姿を夜空に描くことができます。十字の交点に輝く2等星サドルをはじめ、十字を構成する星は2等星、3等星が中心なので、比較的簡単に見つけられるでしょう。

また、空が暗いところでは「はくちょう座」のあたりにうっすらと天の川が流れているのも見えます。この天の川の流れを南へたどっていくと、「わし座」や「さそり座」を通って「南十字星(みなみじゅうじ座)」に行き当たります(日本では沖縄や小笠原で見られます)。「はくちょう座」はその形から別名「北十字」とも呼ばれますが、北十字から南十字まで天の川をたどってみたいですね。

二重星アルビレオ

白鳥の頭のところに位置するオレンジ色の3等星アルビレオを天体望遠鏡で観察すると、そばに青っぽい5等星があるのがわかります。色の対比がとても美しく、何度見ても飽きることがありません。

比較的小型の望遠鏡でも見えるので、お持ちであればぜひ向けてみてください。ぶれると見づらいので、三脚や台座をしっかりと据えることがポイントです。機会があれば科学館などでも観察してみてください。きっと何度も見たくなるはずです。

北アメリカ星雲、網状星雲

デネブのすぐ近くに「北アメリカ星雲」という愛称で知られている星雲があります。また、白鳥の南の翼のあたりには「網状星雲」という、ベールのような星雲があります。

どちらも淡く、眼視で観察するのは難しいのですが、天体写真ではよく撮影される対象です。北アメリカ星雲はページ上部の今月の「星空写真」にも写っています(中央左下の輝星がデネブで、そのそばにあります)。写真では全体的な形だけでなく複雑で繊細なガスの構造も美しく楽しめるので、ぜひ写真集やインターネットの画像などでご覧ください。

とかげ座

「はくちょう座」の北隣には、「とかげ座」という星座があります。小さく暗いので目立ちませんが、「はくちょう座」を見上げたときには「とかげ座」も忘れずに探してみましょう。

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は9月中旬の深夜1時ごろの星空です。10月中旬の深夜23時ごろ、11月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。

2021年9月中旬 深夜1時ごろの星空

「夏の大三角」が西の空に傾きました。「はくちょう座」は地平線を目指して飛んでいて、西を正面にする(図を時計回りに90度回転させる)と「星空写真」と似た角度になります。地平線に十字が立っているようにも見えますね。土星と木星も南西の空に低くなっています。

頭の真上近くには秋を代表する「ペガスス座」の四辺形が広がっています。四辺形の西の辺(図では右の辺)を南(下)に伸ばしていくと、秋の唯一の1等星、「みなみのうお座」のフォーマルハウトが見つかりますが、南の空には他に明るい星が少なく、静かな印象です。一方で東の空には「オリオン座」をはじめ、派手な冬の星々が昇ってきました。

日中は暑さの残る日もありますが、深夜には肌寒さを感じることもある季節です。体調を崩さないようにお気をつけて、お月見や惑星観察、星座めぐりをお楽しみください。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

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