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2021年5月の星空

26日の夕方から宵に皆既月食が起こります。時間や方向を事前に確かめ、準備万端で楽しみましょう。主役の星座だけでなく、金星が宵空に戻り火星は暗くなるといった惑星の見え方の変化からも、時の移り変わりを感じられそうです。

星空写真

北軽井沢にて
カーブミラーに映り込んだ浅間山とからす座を星の軌跡で表現してみました。背景の北天の日周運動がカーブミラーをきわだたせてくれたように思います。

2021年1月14日 5時2分
ニコン D6+AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G(ISO 3200、露出300秒×3枚を合成、f/11)
撮影者:高岡 誠一

5月の星空

南の空

南の空

2021年5月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、上弦(20日)、満月(26日、月食)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2021年5月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。

天文カレンダー

4日(火) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
未明~明け方、月と土星が接近(「今月の星さがし」で解説)
5日(水) 立夏(こよみの上で夏の始まり)
未明~明け方、月と木星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説)
6日(木) みずがめ座η流星群の活動がピーク(「今月の星さがし」で解説)
12日(水) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
13日(木) 夕方、細い月と金星が接近、細い月と水星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説)
14日(金) 夕方~宵、細い月と水星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説)
16日(日) 夕方~宵、月と火星が接近(「今月の星さがし」で解説)
17日(月) このころ、夕方に水星がやや見やすい
夕方~深夜、月とポルックスが並ぶ
19日(水) 宵~翌20日未明、月とレグルスが並ぶ
20日(木) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)
23日(日) 夕方~翌24日未明、月とスピカが並ぶ
26日(水) 満月。次の満月は6月25日です
19時前から22時前にかけて、皆既月食(「今月の星さがし」で解説)
宵~翌27日明け方、月とアンタレスが接近
31日(月) 明け方、月と土星が並ぶ

5月の惑星

水星

夕方、西北西の低空に見えます。

日の入り30分後(東京で夕方19時10分ごろ)の高度は約14度で、水星としてはかなり見やすいタイミングです。やや離れていますが、目印となる明るい金星が同じ西の空に見えていることも好都合です。

見やすいとはいえ、14度というのは相当低く、建物や木立があると遮られてしまいます。低空まで見渡せる、視界が開けた場所で探しましょう。スマートフォンのアプリなどで金星との位置関係を確かめてから、双眼鏡で探すと見つけやすくなります。下旬になると低く暗くなるので、20日ごろまでがとくに見やすいでしょう。

13日と14日に月齢2~3の細い月と並んで見え、金星を含めた3天体の集合が楽しめます。今年の夕方に見える水星のうち最も見やすい時期なので、ぜひ探してみてください。

金星

10日ごろから「宵の明星」として、夕方の西北西の空に見えるようになります。

日の入り30分後(東京で夕方19時10分ごろ)の高度は約5度で、かなり低空です。スマートフォンのアプリなどで位置を確かめてから、低空まで見渡せる、視界が開けた場所で探しましょう。とても明るいので、建物などに遮られていなければ肉眼でも容易に見つかります。

13日に細い月と接近して見えます。低い金星だけでなく月齢2の細い月を見つけるのは高難度ですが、それだけに美しい共演が見えた時の嬉しさも格別です。ぜひお楽しみください。

火星

「ふたご座」にあります。日の入り1時間後(東京で夕方19時40分ごろ)に西の空に見え、22時ごろに沈みます。見やすい時間帯はあまり長くないので、空が暗くなったら早めに眺めておきましょう。明るさは約1.6等級で、いよいよ四捨五入で2等級まで暗くなりました。

16日の夕方から宵に月齢5のやや細い月と接近して見えます。また、月末ごろから「ふたご座」の1等星ポルックス、2等星カストルと並びます。

木星

「みずがめ座」にあります。未明の1時ごろに昇ってきて、日の出1時間前(東京で3時30分ごろ)に南東の空のやや低いところに見えます。明るさは約マイナス2.3等級です。

まだ低いので天体望遠鏡での拡大観察にはあまり向いていませんが、見えないわけではありません。明け方でも大丈夫という意欲のある方は、縞模様やガリレオ衛星を観察してみましょう。明るいので、存在を確認するだけなら肉眼でも簡単に見つけられます。早起きした日には探してみましょう。木星の右上には土星も見えます。

5日の未明から明け方に月齢23の下弦過ぎの月と並びます。

土星

「やぎ座」にあります。日付が変わるころに昇ってきて、日の出1時間前(東京で3時30分ごろ)に南東の空のやや低いところに見えます。明るさは約0.7等級です。

同じ明け方の空に見える木星よりは暗いものの、いわゆる1等星クラスの明るさなので、肉眼でも簡単に見つけられます。こちらもまだ低いので天体望遠鏡での拡大観察にはあまり向いていませんが、意欲のある方は環を観察してみましょう。

4日の未明から明け方に月齢22の下弦の月と接近します。

今月の星さがし

26日の皆既月食は、今年最も注目の天文現象です。やや低めなので事前に見え方を確認しておきましょう。金星が約1年ぶりに宵の明星として見え始め、水星が比較的見やすくなるなど、惑星現象も楽しみです。

6日未明から明け方、みずがめ座η流星群

「みずがめ座η流星群」は、毎年ゴールデンウィークの終わりごろに活動が活発になる流星群です。8月の「ペルセウス座流星群」や12月の「ふたご座流星群」ほど多くの流れ星が飛ぶわけではありませんが、毎年確実に活動が見られます。今年は6日の明け方が一番の見ごろと予想されていますが、下弦過ぎの半月が明るいため、目にできる流れ星の数は少なくなりそうです。

5月6日 未明3時30分の空全体の様子(場所の設定は東京)。流れ星は「みずがめ座」(放射点)を中心とした空全体に飛ぶように見える

流れ星は「みずがめ座の方向だけ」に飛ぶのではなく「みずがめ座(放射点)を中心として空のあちこち」に飛ぶので、狭い範囲を集中して見るのではなく、広い範囲をゆったりと眺めることが一番のポイントです。広く見ることが大切ですから、双眼鏡や天体望遠鏡は必要ありません。月明かりや街明かりが直接目に入らないように、街灯や月から離れた方向を中心に眺めると良いでしょう。東の空の高いところに広がる「夏の大三角」のあたりに流れると見栄えがしそうですね。また、月に近いところですが、南東の空の土星や木星の近くに流れれば、これも印象的な眺めになりそうです。

たった1つでも明るい流れ星が見えれば嬉しいものですし、もし1つも見えなかったとしても「ゆっくり空を見上げる」時間を持つのも良いことです。連休明けの初日の朝でもありますので、無理をせずにお楽しみください。

月と惑星の接近

今月起こる、月と惑星の接近現象を順番にご紹介しましょう。

まずはじめは連休中の4日と5日、月が土星、木星と接近します。先にご紹介した、みずがめ座η流星群の流れ星も、運が良ければ近くに飛ぶかもしれません。あまり高くないので、見晴らしの良いところで眺めてみましょう。もう少し時刻が進めば高くなりますが、空が明るくなってしまうので、3時30分ごろから4時ごろくらいがおすすめです。

5月4日と5日の未明3時30分の南東の空の様子(場所の設定は東京)。囲み内は拡大イメージ(視野6度)、小さい円は月をさらに拡大したイメージ(70倍程度の天体望遠鏡、正立像)

月はこのあと細くなり、12日の新月以降は夕方から宵の西の空に見えるようになります。新月翌日の13日には早速、宵の明星の金星と月齢2の細い月が接近します。

日の入りから約30分後、西の空が少し暗くなり始めたころ、金星の高さは地平線から5度程度しかありません。建物などがない、地平線付近まで開けたところで探してみましょう。また、月はもう少し高いですが、月齢2はとても細く淡いので意外と見つけにくいものです。明るい金星さえわかれば、その上のほうに月も見えるので、まずは金星を見つけましょう。

5月13日と14日の夕方19時15分の西北西の空の様子(場所の設定は東京)。囲み内は拡大イメージ(視野6度ずつ/14日は6度の範囲には収まらない)、小さい円は月をさらに拡大したイメージ(70倍程度の天体望遠鏡、正立像)

そしてこの13日と翌14日は、細い月の近くに水星も見えます。水星は太陽に近いために見られる機会が少ないのですが、5月中旬ごろは太陽から離れていて、金星や月という目印もあるので、見つけるチャンスです。肉眼でも見えますが、双眼鏡があるとさらにわかりやすいので、お持ちの方は使ってみましょう。水星はこの後20日ごろまでは見やすいタイミングが続きます。金星の上のほうを探してみてください。

最後にご紹介するのは16日、夕方から宵にかけて見られる月と火星の共演です。惑星の明るさという点では控えめな接近ですが、月との間隔が一番小さいという点ではここまでご紹介してきたなかで最も面白い現象でもあります。月と火星の上に仲良く並ぶ「ふたご座」のポルックス、カストルと合わせて眺めてみましょう。

5月16日 夜20時の西の空の様子(場所の設定は東京)。囲み内は拡大イメージ(視野6度)、小さい円は月をさらに拡大したイメージ(70倍程度の天体望遠鏡、正立像)。水星もまだ沈まず見えている

接近現象ごとに、見られる時間帯、方位と高さ、空の色、さらに月の形や惑星との間隔など、すべて異なります。見晴らしさえ良ければ、遠出をしなくても身近で見られ、どれも肉眼でわかります。日常の中の天体観察を、ぜひ手軽に気軽に楽しんでみましょう。

26日の夕方から宵に皆既月食

宇宙空間では、地球を中心として太陽の反対の方向に地球の影が伸びています。この影の中にちょうど月が入ると、月が暗くなる月食が起こります。このとき月は太陽の正反対にありますから、月食は必ず満月のタイミングで起こります。ただし逆に、満月なら必ず月食になるわけではありません。今月26日に起こる月食は、日本全国で見えるもの(はっきりと欠けて見えるもの)としては2018年7月以来、約3年ぶりの現象です。

満月が欠け始める(部分食の始まり)は夕方18時45分ごろです。このとき日本では月が昇った直後か、まだ地平線の下にあるので、もう少し時間が経って月が見え始めるころにはすでに少し欠けた状態になっているでしょう。その後、月が南東の空を昇っていくにつれて欠けている部分が大きくなっていき、20時11分ごろに月全体が地球の影に入ってしまう「皆既食」の状態になります。

5月26日 18時45分から21時52分までの南東の空の様子(場所の設定は東京)。囲み内は月のクローズアップ。皆既食の月の高度は15度ほどと低い

地球の影の中に月全体が入ってしまうと月が見えなくなりそうに思いますが、地球の大気で屈折した太陽の光が月に届くため、皆既食のときにも月はほんのりと見えています。赤い光のほうが届きやすい性質があるので、皆既食の満月は赤っぽい色に見えることが多いです。今回、皆既食の状態は15分ほどしか続きませんので、見逃さないようにしましょう。20時26分ごろに皆既食が終わると満月の色と明るさが元に戻り始め、21時52分ごろに月食が終わります。

月食の進み方は、月が見えるところであれば世界中どこで観察しても同じタイミングで同じように見えますが、各時刻で月の方位と高度は観察場所によって多少変わります。日本で見る場合はどこであっても低空での月食になるので、見晴らしの良さが重要です。写真を撮る場合などは、前景となる南東方向の建物などを事前に確認しておきましょう。

月食の観察に特別な道具は必要ありません。月の色や形が変わっていく様子は肉眼でもよくわかりますので、気軽に眺めてみてください。双眼鏡や天体望遠鏡があれば微妙な色の違いなども楽しめるでしょう。忙しい場合や天気に恵まれなかった場合には、インターネット中継を見るという方法もあります。

平日ではありますが、夕方から夜の早い時間帯に起こる月食なので、子供から大人まで幅広い年齢の方にとって観察しやすい現象です。月食は見る機会が多くありそうですが、今回国内3年ぶりということで意外と少ないものです。準備をして、安全にも気を付けて、色と形が変わった満月の姿をお楽しみください。

今月の星座

りょうけん座

夜20時から21時ごろ、真南の空に「春の大三角」が見えています。その春の大三角からさらに高いところ、頭の真上あたりに見えるのが「りょうけん(猟犬)座」です。反対の北の空から見つける場合には、「北斗七星」の柄を目印として位置の見当をつけられます。

「りょうけん座」(星団と銀河の画像クレジット:ESO DSS2 (AURA))

「りょうけん座」で一番明るいのはコルカロリという星です。3等星なので、空が明るいところでは少し見つけにくいかもしれません。春の大三角とコルカロリを結んでできる、大きなひし形をイメージして探してみましょう。このひし形は「春のダイヤモンド」と呼ばれることがあります。

「りょうけん座」はコルカロリ以外の星も暗めで、あまり目立たない星座です。星座絵に描かれている2匹の犬の姿を思い浮かべるのはちょっと難しそうですが、頭上高く跳ね回る猟犬をイメージして星空を眺めてみましょう。

二重星コルカロリ

星座そのものはあまり目立たない「りょうけん座」ですが、天体望遠鏡や双眼鏡では見ものの天体が数多くあります。コルカロリもその一つで、3等星と6等星が寄り添った二重星です。色の対比が美しいので、ぜひ実際に観察してみましょう。

球状星団 M3

次の見ものは、数十万個の星々がボール状に丸く集まった天体、球状星団のM3(Mはカタログの符号)です。コルカロリと、隣の「うしかい座」の1等星アルクトゥールスとの間あたりにあります。

肉眼で見るのは難しいですが、双眼鏡を使うと少しにじんだように見え、1つの星ではないことがわかります。望遠鏡では広がりを持った天体であることが認識できるようになり、公開天文台などの大型望遠鏡で観察すると画像のような粒状感もわかるでしょう。

子持ち銀河 M51、ひまわり銀河 M63

数ある「りょうけん座」の見もののうち、とくに有名なのが渦巻銀河のM51です。大小2つの銀河が並んでいることから「子持ち銀河」という愛称で知られており、親子の銀河が腕をつないでいるように見えます。

大きいほうの銀河は比較的明るいので、空の条件が良ければ双眼鏡でも見つけられるでしょう。北斗七星の柄の一番端の星とコルカロリを結ぶ線上の、北斗七星よりのところにあります。好条件に恵まれたら、ぜひ探してみてください。

また、「ひまわり銀河」という愛称で知られるM63も比較的明るく、小型の望遠鏡でも見ることができます。

どちらの銀河も細かい模様まで見ることは難しいのですが、天体写真では色や形などの美しさを堪能できます。図鑑やインターネットの画像でもお楽しみください。

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は5月中旬の深夜1時ごろの星空です。6月中旬の深夜23時ごろ、7月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。

2021年5月中旬 深夜1時ごろの星空

「北斗七星」や「春の大曲線」といった春を代表する星の並びが西の空に移り、深夜の主役は夏の星々に変わります。東の空の高いところには「夏の大三角」が上り、南の空では赤っぽく光る「さそり座」のアンタレスが目立ちます。

また、南東の低空には土星と木星も見え始めています。宵の時間帯に見やすい高さになるのは本当の夏まで待たなければいけませんが、深夜の空で一足先に眺めておいて、夏への期待を膨らませましょう。

すっかり暖かくなり、春先よりも空気の透明度も良くなり、星空が気軽に楽しめる季節になりました。安全に留意しながら、ゆったりとした気分で夜空を眺めてみてください。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

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