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2021年4月の星空

暖かい日が多くなり、星空観察がしやすい季節になってきます。今月は派手な天文現象はありませんが、桜と月を眺めたり、春の大曲線をたどったり、この時期ならではの空模様を存分に楽しみましょう。

星空写真

長野県白馬村にて
星数が少なく寂しい春の星空をきわだたせる風景として、長野県白馬村方面の一本桜として有名な「野平(のだいら)の一本桜」を選んでみました。サクラが主張しすぎないよう、オオヤマザクラが3分咲きのタイミングを狙いました。

2019年4月27日 22時47分
ニコン D810A+AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G(ISO 12800、露出5秒×6枚を合成、f/2.5)
撮影者:高岡 誠一

4月の星空

南の空

南の空

2021年4月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、上弦(20日)、満月(27日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2021年4月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。

天文カレンダー

1日(木) 深夜~翌2日明け方、月とアンタレスが接近
4日(日) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
7日(水) 未明~明け方、月と土星が並ぶ
12日(月) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
15日(木) 夕方~宵、細い月とプレアデス星団が並ぶ
16日(金) 夕方~宵、細い月とアルデバランが並ぶ
17日(土) 夕方~深夜、月と火星が大接近(「今月の星さがし」で解説)
19日(月) 夕方~翌20日未明、月とポルックスが接近
20日(火) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)
22日(木) 夕方~翌23日未明、月とレグルスが接近
26日(月) 夕方~深夜、月とスピカが並ぶ
27日(火) 満月。次の満月は5月26日(皆既月食)です
29日(木) 宵~翌30日未明、月とアンタレスが並ぶ

4月の惑星

水星

下旬までは太陽に近く見えません。

月末(28日ごろ以降)になると夕方の西北西の低空に見えるようになりますが、日の入り30分後(東京で夕方19時ごろ)の高度が5度前後とかなり低いので、低空まで見渡せる視界が開けた場所で探しましょう。スマートフォンのアプリなどで位置の見当をつけてから、双眼鏡で探すと見つけやすくなります。

金星

太陽に近く、見えません。

5月中旬ごろから「宵の明星」として夕方の空に見えるようになります。

火星

「おうし座」にあり、月末に「ふたご座」へと移ります。日の入り1時間後(東京で夕方19時15分ごろ)に西の空に見え、深夜23時ごろに沈みます。明るさは約1.4等級です。

冬の星座に含まれる明るい1等星でできる星の配列「冬のダイヤモンド」を、今月と来月の2か月かけて火星が横切っていきます。火星と他の星々とで色や明るさを比べたり、火星の動きを追ったりしてみましょう。17日の夕方から深夜に月と大接近する光景も見ものです。

木星

「やぎ座」にあり、月末に「みずがめ座」へと移ります。明け方に東南東の低空に見えます。明るさは約マイナス2.1等級です。

低空にあるため天体望遠鏡での拡大観察には向いていませんが、比較的目立つので、建物などに遮られなければ肉眼で簡単に見つけられます。早起きした日には探してみましょう。木星の右上には土星も見えます。

土星

「やぎ座」にあり、未明から明け方に南東の低空に見えます。明るさは約0.7等級です。

同じ明け方の空に輝く木星と比べると、高度は土星のほうが高く見やすいのですが、明るさでは木星のほうが目立ちます。「2つ並ぶ惑星のうち右上が土星、左下が木星」なので、高さや明るさを参考にして2つを見分けてみましょう。木星よりは高いものの、やはりまだ天体望遠鏡での拡大観察には向いていません。

7日の未明から明け方に月齢24の細い月と並びます。やや間隔は広いのですが、木星を含めて3天体が集合している光景を眺めてみてください。

今月の星さがし

目立って大きな天文現象はありませんが、17日に起こる月と火星の大接近は見逃せません。その火星は「冬のダイヤモンド」を通過中です。

17日宵、月と火星が大接近

宵の西の空には冬の星座たちが見え、その星座に含まれる1等星をつないでできる大きな六角形「冬のダイヤモンド」が広がっています。冬のダイヤモンドの中心あたりには「オリオン座」の1等星ベテルギウスが光っていますが、今シーズンはもう1つ、ベテルギウスに似た色と明るさの星もダイヤモンドの中にあります。赤っぽく輝く、火星です。昨年10月の地球最接近の時と比べると、火星の距離は4.6倍も遠くなり、明るさは40分の1まで落ちましたが、依然として街中でも肉眼ではっきりと見えます。

火星は今月初めから5月末までかけて冬のダイヤモンドを横切っていきます。今月は大移動の前半です。アルデバラン、ベテルギウスとの位置関係を見ると、火星の動きの様子がわかりやすいでしょう。

4月2日から27日まで5日ごとの、夜20時の西の空の様子(場所の設定は東京)。空の色や星の数が変わるのは月明かりの影響。17日の囲み内は拡大イメージ(視野3度)

17日の夕方から深夜にかけて、火星のそばにやや細めの月が並びます。月の直径の2~3個分という大接近で、見やすい時間帯ということもあり人目を引きそうです。肉眼でもよく見えますが、双眼鏡やフィールドスコープを使うと月の模様が見やすくなり、さらに面白いでしょう。

月と火星の接近間隔は観察場所によって異なり、国内では南の地方ほど近づいて見えます。また、インドや東南アジアなどでは、月と火星が重なって火星が隠される「火星食」という現象が起こります。日食と同様、場所によって見え方が違うのですね。日本では11月8日の昼過ぎに金星食が起こるので、それを心待ちにしながら、今回は月と火星の大接近をお楽しみください。

今月の星座

うみへび座、ろくぶんぎ座、コップ座、からす座

「うみへび座」は、全天に88個ある星座のうち最も大きな星座です。東西に長く伸びており、頭の先の星が昇ってきてから尾の先の星が昇ってくるまでに約8時間もかかります(東京の場合)。宵の時間帯に見やすいのは4月から5月ごろですが、明るい星は2等星のアルファルドしかないので、蛇の姿を見つけるのは難しいかもしれません。

「うみへび座」「ろくぶんぎ座」「コップ座」「からす座」(銀河の画像クレジット:ESO DSS2 (AURA))

4月の中旬ごろには、21時から22時ごろ南の空に頭から尾まで見えているので、双眼鏡を使って星を一つずつたどってみましょう。目安としては「しし座」の1等星レグルスあたりに蛇の頭があり、アルファルドが蛇の心臓、さらに左(東)へたどって「おとめ座」の1等星スピカを通り過ぎたあたりが尾の先になります。ちなみに星座の星のつなぎ方に決まりはないので、「何となくこんな感じで蛇だ」とつないでもO.K.です。ギリシャ神話では9本の首を持った怪物のヒドラとされていますが、この星の配列から9本全部を想像するのは難しそうです。

ろくぶんぎ座、コップ座、からす座

「うみへび座」の背中にはいくつか星座が乗っています。アルファルドの左あたりには、航海や天体観測で角度を測るのに用いられる道具をモチーフとした「ろくぶんぎ(六分儀)座」、スピカの右のあたりには、4つの星が台形に並んで見える「からす座」があり、その2つの星座の間にトロフィーのような形の「コップ座」があります。

「ろくぶんぎ座」と「コップ座」はかなり暗いので見つけづらいのですが、「からす座」の4つの星はいずれも3等星なので、月明かりや街灯がなければ肉眼でもよくわかります。スピカを目印に、闇に紛れた「からす」の姿を見つけてみましょう。「星空写真」では桜の木の右に見えていますね(木の上がスピカです)。

様々な銀河

「うみへび座」の尾のあたりにある渦巻銀河M83(Mはカタログの符号)は、「南の回転花火銀河」という愛称がつけられた見事な渦巻銀河です。ちなみに「(北の)回転花火銀河」は「おおぐま座」のM101で、こちらもやはり見事な渦巻銀河です。

観望や撮影の対象として人気の銀河ですが、中心部以外の腕の部分は淡く、また日本からは高度が低いため、立派な姿をとらえるのは難しいかもしれません。インターネット検索で、大型望遠鏡で撮影されたカラフルな画像を楽しんでみましょう。

「からす座」にも「アンテナ銀河」という有名な銀河(カタログ番号はNGC 4038/4039)があります。アンテナとは触角のことですが、画像中の明るい部分の左から上下に伸びる淡い部分が触角のように見えることから付けられた愛称です。

アンテナ銀河は2つの銀河が衝突している現場で、明るい部分はそれぞれの銀河の中心部です。近接したために重力の影響で形がゆがみ、一部が引き伸ばされたのが触角部分というわけです。また、衝突している中心付近では激しい勢いで星が生み出されています。こちらもインターネットで検索してみると、宇宙望遠鏡などで撮影された画像がたくさん見られます。

また、「ろくぶんぎ座」には「スピンドル銀河」という銀河(NGC 3115)があります。南の回転花火銀河やアンテナ銀河に比べるとやや地味な印象ですが、均整の取れた紡錘形の美しさは目を引きます。

星や星座それぞれに個性があるように、銀河の形や大きさなどにも多様なバリエーションがあります。直接観察は難しいかもしれませんが、画像を検索したり広がりを想像したりして、宇宙の奥深さを味わってみてください。

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は4月中旬の深夜1時ごろの星空です。5月中旬の深夜23時ごろ、6月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(月や惑星が見えることもあります)。

2021年4月中旬 深夜1時ごろの星空

今月ご紹介した「うみへび座」が南西の空に横たわっています。頭の部分やアルファルドは沈みかけていますが、尾の先はやっと真南に来たところです。星座の大きさや長さが実感できるでしょう。背中に乗っている星座たちも意識してみてください。その尾のさらに東には「さそり座」のアンタレスが輝き、「うみへび座」と正反対の北東の空には「夏の大三角」も見えます。

また、「うみへび座」から頭の真上を見上げれば、北西から南西に大きくカーブした「春の大曲線」をたどることができます。「北斗七星」、「うしかい座」のアルクトゥールス、「おとめ座」のスピカ、さらに「からす座」と続くアーチをたどってみましょう。このアーチよりも「うみへび座」のほうが長いというのは、驚くばかりですね。

新生活の慌ただしさで、4月はあまり夜更かしができないかもしれません。しかし、もし眠るのが遅くなってしまったら、夜空を見上げて星々をゆったりと眺めてみてください。きっと気分がリフレッシュできるはずです。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

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