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ニコンを極める

vol.21 今まで撮れなかった一瞬を切り取る、Nikon D5。

スポーツフォトグラファー
岸本 勉(きしもと つとむ)

その瞬間を確実にとらえる。
真のプロフェッショナルが待ち望んだ機能を凝縮。

写真を撮るうえで大切なこと。それは、被写体を見つめ、瞬間を間違いなく切り取ること。そんなカメラの原点とでもいうべき機能を一から見直したフラッグシップ機、D5がついにデビューしました。狙った被写体を素早くとらえて放さない新世代AFシステムをはじめ、連続撮影時の安定したファインダー像を実現する新開発のミラー駆動機構を搭載するなど、かつてないほどに進化した高性能の数々は、まさにプロが現場で求めている理想のカメラそのもの。特に数百分の1、数千分の1秒といった刹那の中で闘っているスポーツフォトグラファーにとって、D5の研ぎ澄まされた性能は、頼もしい存在となることでしょう。
今回は、スポーツ写真の第一線で活躍中のフォトグラファー・岸本勉氏に、すでに導入し撮影しているというD5の真価と、秘められたポテンシャルについてお話を伺いました。

1. スポーツフォトグラファーが選んだ機材

チームの戦術や選手の癖を把握しているからこそ、予測して撮影できる。

岸本さんは現在、スポーツフォトグラファーとして活躍されていますが、どのような撮影が多いのでしょうか?

雑誌やインターネット、カメラ専門誌などで、陸上や水泳、サッカー、柔道、レスリング、冬季スポーツではフィギュアスケート、スピードスケート、スキーのジャンプ、ノルディックスキーといったオリンピック競技全般を撮影しています。
試合や競技だけではなく、ときには合宿や大会期間中の公式トレーニングなども撮影します。

岸本勉氏。

水面から上がる寸前のスイマー。ダイナミックAFで撮影した。

撮影機材:Nikon D5
レンズ: AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR
絞り値:f/5.6
シャッタースピード:1/1000秒
露出モード:マニュアル
測光モード:スポット測光
ISO感度:6400
ホワイトバランス:PRE

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トビウオをイメージした1枚。ダイナミックAFが水から飛び出すスイマーを確実にとらえてくれる。

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高倍率時に被写体が上下左右動くので、400mmの割り込みボタンにオートエリアAFを設定して撮影。顔を認識してしっかりと被写体をとらえている。

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先頭のライダーと後続のライダーを600mmを使って正面から撮影。

被写体は、試合や大会で活躍している選手が多いのでしょうか?

選手を中心に撮りますが、その競技全体が被写体です。たとえばサッカーでは、選手がボールを蹴っている瞬間を撮りつつ、周囲の状況やイメージ写真も撮影します。また、ひと言でサッカーといっても、日本代表の試合やワールドカップといった大きな試合からストリートサッカーまであり、海外では裏路地やスラムでやっているサッカーも撮影しています。さまざまな競技を幅広く撮りたいので、スポットライトを浴びているトップ選手だけを追い続けているわけではありません。

さまざまなスポーツのルールを知っている必要がありますね。

当然、ルールを知っていないと撮れないですし、選手の癖なども把握しておく必要があります。さらに、そのチームの戦術も理解していないと選手の動きについていけません。サッカーだと、“ここにボールが来たら次はあの選手に対してパスを出す”といった予測が必要になります。もちろん、予測が外れることもありますが、そこがスポーツの面白さでもあります。
選手の癖という部分では、まばたきが激しい選手の場合、比較的ほかの選手よりもシャッターボタンを多めに押すなどします。ファインダーをのぞいて、タイミングが合ったところでシャッターボタンを押せばいいというものではないですね。
大変ですが、好きですから苦にはなりません。撮ることも好きですし、スポーツも好きです。撮影旅行のようなものも好きですね。

2010年2月 サッカー キリンチャレンジカップ 日本代表 vs ベネズエラ代表 大分 九州石油ドームにて。

2011年9月 第13回世界陸上競技選手権大会 韓国 テグにて。

フォトジェニックな選手に惹かれ、いつも頭の片隅で気になっている。

スポーツ撮影は厳しい環境で撮影されることも多いと思いますが、どのような苦労があるのでしょうか?

中東の暑さは座っているだけでどんどん汗が出てくる状況なので、厳しいものがあります。もちろん選手も大変です。暑い場所も大変ですが、寒い場所も苦労します。ドイツの冬のサッカーは氷点下でした。グラウンドにはヒーターが入っているので凍っているわけではないのですが、僕らは手袋をして、目と口しか出していない状態で撮影しました。非常につらかったですね。
手袋をして撮っていると、シャッターボタンを押す指の感覚も全然違います。フィルムの時代は、あまりに寒くてフィルムが凍ってしまいました。フィルムは36枚撮ったら交換しますが、割れてパリパリになったフィルムを取りのぞきながら撮影を続けました。今はデジタルとなりメディア交換をしないのでそういった苦労はありませんが、スキーのジャンプは強風が吹くと中断になり、吹雪く中、寒いジャンプ台の上で待っていなければいけないなど、写真の技術とは違うところで苦労しています。

2011年2月 東京マラソンにて。

2011年2月 東京マラソンにて。

特に最近、印象に残った試合はありますか?

先日、日本選手権水泳競技大会を撮影しました。オリンピック出場がかなわず、北島康介選手が引退を表明した最後のレースです。トップ選手の最後を久しぶりに目の当たりにしました。これが最後、と思いながら水から上がる瞬間を撮影しましたが、あれだけの選手が終わってしまうのは残念という思いもあり、複雑な気持ちでシャッターボタンを押しました。
北島選手を撮影したのは要所要所で、ずっと追い続けていたわけではありませんでした。北島選手が記者会見で五輪でのベストレースを聞かれ、北京五輪の100メートル決勝と答えたのを聞き、僕はそのレースをちょうど撮影していたので、“北島選手にとってすごく大事なレースを、僕は撮ることができたんだ”と、感慨深く思いました。

好きな選手や、気になる選手はいますか?

マラソンの川内優輝選手のような、表情が豊かなキャラクターに惹かれますね。ほかの選手が言わないようなことをいう一面もあり、撮っていて面白いと感じます。
基本的にフォトジェニックな選手が好きです。そういう選手は、できればずっと追い続けていたのですが、いろいろな仕事をしていると、なかなか実現できません。その選手が試合に出場する度に追いかけることはできませんが、頭の片隅ではいつも気になっています。

400mm f/2.8Eは、スポーツを撮るうえで切っても切れないレンズ。

岸本さんとニコンの出会いはいつごろでしょうか?

2007年の世界陸上で「今度のニコンはすごいぞ」という噂を聞いて、D3を試しに使わせてもらいました。D3の高感度の強さや、14-24mm f/2.8という今まで見たことがない焦点距離のレンズに興味が沸きました。
その年末に、以前所属していた会社(株式会社フォート・キシモト)から、「いいカメラがあるから、チームで変えるぞ」という連絡が来ました。すでに会社を4年前に退社しフリーになっていましたが、翌年の北京オリンピックを控え、同じチームの仲間として、それまで使ってきた他社のカメラからD3へ一緒に変更しました。
当初、操作がまったく違って戸惑いましたが、高感度に強いのでシャッタースピードを速く設定でき、今まで切り取れなかった瞬間が切り取れるなど、いいことずくめでした。また、今使っているD5もそうですが、ニコンのカメラはいろいろとカスタマイズできるのが楽しいですね。今まで使っていた他社のカメラは設定をほとんど変えずに使っていることが多かったのですが、ニコンのカメラは設定をいろいろといじって自分色に染めています。

普段撮影するときの機材を教えてください。

まずは、400mm f/2.8Eですね。このレンズはスポーツを撮るうえで切っても切れないレンズです。それと1.4倍のテレコンバーター。このセットには本当に助けられています。
望遠レンズは、たまに手持ちで撮影することもありますが、普段はほぼ一脚を付けて使っています。

2011年6月 日本陸上競技選手権大会 埼玉 熊谷スポーツ文化公園陸上競技場にて。

■岸本氏が愛用しているレンズ

基本は望遠レンズですが、14-24mm f/2.8といった広角ズームも、陸上競技をあおって撮る場合などに使います。
今、自分の中で旬なのが、24-70mm f/2.8Eです。描写がシャープで、動いている被写体を追いかけたときのAFもいい。D5との組み合わせると、すごく楽しく撮影できます。
ちょっとした大会だと、さらに70-200mm f/2.8、 300mm f/4Eのほか、ポートレート用で58mm f/1.4などを持っていきます。ボディーは3台ですね。1台に24-70mm、もう1台に70-200mmか300mmを付け、400mm+1.4倍テレコンバーターか600mmや800mmといった望遠用に1台という構成になります。長い望遠レンズは何本も持っていくのはなかなか厳しいので、1本を選びます。
ストラップを首から提げるのが苦手なので、カメラ3台は両肩に提げて持ち歩いています。

■岸本氏が撮影時に使用するレンズ

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