Nikon Imaging
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vol.2 D700のポテンシャル

2.期待の先をいく、ニコンの技術開発

細部まで徹底した、高画質のための設計。

D300
<APS-C>DXフォーマット。
D700
<フルサイズ>FXフォーマット。

このようなダイナミックレンジの広さ、高感度、高画質を実現できたのは、どうしてなのでしょう?

大きくは、情報の入り口から出口まで、隙のない設計がなされていることです。
具体的な理由は、主に二つあります。
一つは先ず、撮像素子にフルサイズの「FXフォーマットCMOSセンサー」を採用した点。
FXフォーマットはDXフォーマットに比べ、センサーの大きさが約2.3倍。その分大量の光を溜め込むことが可能になり、画質も向上します。
そのセンサーと対になるのが、「ギャップレスオンチップレンズ」と、極限まで細く薄い配線層です。
ギャップレスオンチップレンズは、取り込んだ光を隣接したカラーフィルタにほとんど漏らすことなく真っすぐフォトダイオードへ届けることができます。さらに幅と高さを狭めた配線層により、レンズとダイオードの距離が短く広くなって、多くの光を最短距離で送り込むことが可能になりました。無駄なく正確に取り込まれた情報は、色分離やノイズが抑えられた高品質な画像になるのです。

EXPEED。

もう一つは何でしょう?

それは、取り込んだ光を画像化する画像処理プロセス「EXPEED」ですね。
センサー自体がより低ノイズ化されていることもありますが、「イメージセンサーとレンズ」「レンズとフォトダイオード」の距離を調整し、ノイズを抑えました。またセンサーとアンプの距離を縮め、その間のノイズも軽減しています。さらに取り込まれたアナログ情報は、A/D変換コンバータに転送される前に、撮影時のホワイトバランス情報をもとにRGBの調整が行われます。A/D変換コンバータへの転送も、CMOSを採用したことで、転送距離が従来よりはるかに短くなっています。

14ビットA/D変換と16ビットデータ転送が豊かな階調性を実現。

しかもA/D変換コンバータでは情報を14bitに増幅し、アナログの階調を極力保ったまま画像処理へ。その上、デジタル信号処理プロセッサでは16bitでデータ転送。16bitのパイプラインを使い並列で転送するため、処理のスピードアップと情報維持を実現しています。

取り込んだ情報の維持と、ノイズ防止のための機構が満載ですね。

そうです。D3、D700では、豊かな階調表現、高精細な画質を実現するため、徹底的にこだわった設計がなされています。
パソコンなどに比べてはるかに小さな集積回路で、よくこれだけの処理をこなせるものだと、感心しました。見えない細部にも全く手を抜いていない。それがこの画質を生み出しているんですね。
D700が出ると聞いたとき、D300に毛が生えた程度の機能アップかと思っていました。それでもおそらくミドルクラスのフラッグシップとして、納得していたことでしょう。しかしD700は私の予想の5倍くらいクオリティの高い機種でした。良い意味で裏切られましたね。

撮影画像に見る、妥協のない進化。

画質についても検証されたそうですが、何か気づかれた点などありますでしょうか?

チャートなどを撮影したところ、D3と比べやや解像感が甘いように感じました。しかしこれは、欠点というよりメーカースタンスだと思います。D3で解像感を高めたために出過ぎたモアレ対策としてチューニングした結果ではないでしょうか。もちろん普通の撮影ではまずわかりません。非常に細かなラインの服などを撮影したときにいくらか差が出るかもしれない、といった程度のものです。

色分離も改善されたとのことですが。

D3に比べ D700は、シアンやレッドの分離が若干甘くなったものの、グリーン、シアン、マゼンタ、さらにブルーも色分離がかなり改善されています。全体のバランスをチューニングしてきたのでしょう。
例えば、いろいろな色の花が咲く花畑などを離れた場所から撮ったときなどは、むしろD700の方がきれいな印象になると思います。
特にグリーンのバリエーションが増えたのもいいですね。D700ならビビットモードでも緑の豊富な階調を維持しています。風景写真にも、さらに強くなったと言えるのではないでしょうか。

1ピクセルの描写を比較。左がD700。右がD3。
色分離の比較。上がD700。下がD3。
雨の中、ISO800でf/5.6、1/160秒で撮影。グリーンの分離が改善されている。

その他、画質について変わった点などありますでしょうか?

JPEGの処理はD3よりもD700の方がノイズも少なく、絵作りもうまくなっているようです。光が安定した状況であれば、RAWではなくJPEGで撮ってもさほど差は出ないと思います。
とはいえ、もちろんRAWとJPEGに画質の差はあります。
例えば、このチャートの同心円の部分では、あきらかに演算ミスが発生しています。それでも従来のカメラのJPEGより、画質は向上しているでしょう。
今や一般的にも「RAWで記録し、あとからPC処理をする」という工程が常識になっていますね。しかし、たとえRAWデータであっても、コントラストや色彩などのコントロールについてあまり知識のない人が画像処理ソフトで補正を行うより、D700のJPEGをそのまま使う方がおそらく良い結果になると思います。

D700のJPEGとRAW画質の比較。左がJPEG。右がRAW。

D3から更に加わった実用的な各種機能。

内蔵フラッシュ。

ハード面で便利になった点などはありますか?

D700で内蔵フラッシュがついたのは、うれしいですね。このクラスのカメラに内蔵フラッシュは必要ないという人もいますが、僕は大変重宝しています。 内蔵フラッシュのコントロール以外にも、D700にはコマンダー機能がついていて、ニコン純正のスピードライトならば2台までワイヤレスで多灯シンクロ撮影が行えます。 しかも2台のスピードライトは、それぞれカメラから光量の設定もできるので、調整が難しいケースでもいちいちスピードライト側で調整することなく撮ることが可能です。 撮影は全て理想的な環境でできるとは限りません。例えば、一人で機材を抱え、一日に何カ所も電車で移動する、などということもあります。そのような場合は、D3ではなくD700の方が便利です。特に外部での撮影では、急にフラッシュが必要なることだってあります。もちろんD3も高感度ですから、ある程度の暗さでも撮影可能ですが、D700ならフラッシュを使った写真も最低限押さえることができるのです。

多灯シンクロ撮影。

それでいて、価格も大幅に安くなっているというわけですね。

そうです。それは重要な点でしょう。 他にもイメージセンサークリーニング、51点AFシステム、ヴィネットコントロール、合焦速度アップなど、D3を改善、もしくは受け継いでいる機能が多々あります。
コマーシャル中心のスタジオであれば、D3を1台買うよりD700を2台買った方が良いかもしれません。あるいはD700と欲しかったレンズを買うですとか。
仕事の内容、経済面でのバランスなどを考えると、このような選択の方が現実的、という方も少なくないと思います。

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