朝からよく晴れ、暖かな日差しを感じられるようになったある日、真一郎は花がたくさん咲いているという公園にやってきました。訪れた時期にはちょうどチューリップや菜の花、ポピーなどが開花しており、真一郎は美しさを競うように咲く一面の花たちを写真に収めようとはりきっている様子。
今回は周囲の風景を活かしながら花をメインに写す、花畑のある風景写真の撮り方をご紹介します。みなさんもカメラを持って花の名所に撮影に出かけてみませんか?
撮影監修:斎藤 勝則
花畑の風景を撮るときにまず気をつけたいのは、人の写り込みです。花や自然が主役の絶景であれば、それ以外の要素はできるだけ省くようにして撮影できるとより美しい写真にすることができます。
当たり前のことですが、花が一番美しく咲き揃う時期には一番多くの観光客が訪れます。より良い写真を撮るためには、撮影スポットには開園と同時に入場できるよう向かうのがおすすめです。また、撮影ポイントに着くとつい、目の前の一輪の花に目を奪われ寄って撮影してしまうことが多いのですが、人が多くなる前にまず引きで、広々とした花畑の風景写真を撮っておくようにすると良いでしょう。
広角から超望遠の画角をこれ1本でカバーする18-300mmの高倍率ズームレンズ。広々とした花畑の風景もボケを使った幻想的な花の写真も表現でき、人の多い観光地でも身軽に撮影を楽しめます。
花畑の広がりや周囲の様子までも伝わるような花畑の風景写真を撮るには、広角や標準レンズで、なるべく絞り込んで撮影するのが基本となります。また、撮影する際には花が密集している場所を探し構図の手前側にくるようにフレーミングするのがコツです。さらに花に近い高さ、低い目線からのアングルで狙うとより密度のある花畑を撮影することができます。
背景は、なるべくすっきりとした背景を選ぶとより花畑が際立ちます。人や人工的な建物などは、意図的に入れて撮る以外はあまり目立つ場所に入らないよう気をつけましょう。人が多い、うまく背景を選べないという場所であれば、少し望遠側に寄ってフレーミングしたり、絞りを開きぎみにして背景をボカして撮影したりしながら、花畑をより際立たせる背景を探してみてください。
花畑が広がる風景はそれだけで圧巻ですが、ただ漠然と花畑を写すだけではどれも似たような写真になってしまいがちです。そうならないためのポイントは、撮影の際に主題(テーマ)を決め、それを意識して撮るということです。
「背景に木や川などを入れ構図のアクセントにする」、「前景、後景を意識し構図を決め奥行きを出す」、「主役の花を決めて撮る」「花の色をテーマにする」「アングルを変える」「人や建物を効果的に入れる」etc……。花畑とその周囲をよく観察しながら、様々なテーマを見つけて撮影を楽しんでみてください。
同じ花畑でも切り取り方や画角、アングルの違いなどで印象はグンと変わり、作品にバリエーションが生まれます。「主題を決める」ということも意識しながら、様々に花畑を切り取ってみましょう。ここでは、花畑の撮り方アイデアをご紹介します。
今回のようにマイクロレンズを持たずに花畑を撮影する場合でも、一輪の花を主役に作品づくりをするのもおすすめです。マイクロレンズのように寄ることはできませんが、主役となる花をいかに目立たせるか、背景との色合いや望遠レンズでボケを演出するなどして印象的な1枚に仕上げると良いでしょう。
その際、注意したいのが構図です。被写体をど真ん中に持ってきて写す構図を「日の丸構図」といいますが、安定感はあるものの平凡な印象になりやすく、意図的に配置するというよりは無意識にやってしまいがちな構図だといえます。ほんの少しどちらかに主役をずらすだけで、余白部分に空気感が出たり雰囲気を出したりすることができます。