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フォトシティさがみはら 2020プロの部入賞作品展

会期

2022年2月8日(火)~2022年2月21日(月) 日曜休館、2月11日(金)休館

10:30~18:30(最終日は15:00まで)

開催内容

2020年に開催された総合写真祭「フォトシティさがみはら2020」のプロの部受賞者5人の作品を集めた写真展が、新宿駅西口の新宿エルタワー28階・ニコンプラザ東京THE GALLERYで開催されます。
会場では、豊かな精神文化の育成に貢献することを基本理念に掲げた総合写真祭において、新たな時代の担い手として顕彰されたプロ写真家の作品が展示されます。ぜひ、多くの方々に写真の持っている表現力や記録性などのすばらしさを感じとっていただきたいと思います。
※新型コロナウイルス感染症の影響により、2年ぶりの展示会となります。
(主催:相模原市総合写真祭フォトシティさがみはら実行委員会)

◆受賞作品について
2020年(令和2年)に開催された写真祭プロの部には、広義の記録性の分野で活躍している中堅写真家の中から「さがみはら写真賞」として1名、新人写真家の中から「さがみはら写真新人奨励賞」として2名が選出されました。また、アジア地域で活躍している写真家を対象にした「さがみはら写真アジア賞」として1名が選出されました。
また、フォトシティさがみはら設立20周年記念事業として、過去のプロの部受賞作品の中で記録性等の視点から最も優れた作品を顕彰する特別賞として「江成常夫賞」が創設され、第16回さがみはら写真賞を受賞された船尾修氏の「フィリピン残留日本人」が選出されました。

<受賞作品のご紹介>
○ 「さがみはら写真賞」
甲斐 啓二郎(東京都)
作品名『骨の髄』より ※作品5点の内、左から1番目
○ 「さがみはら写真アジア賞」
マニット・スリワニチプーン(タイ)
作品名『極彩色のバンコク』より ※作品5点の内、左から2番目
○ 「さがみはら写真新人奨励賞」
安楽寺 えみ(東京都)
作品名『Balloon Position』より ※作品5点の内、左から3番目
○ 「さがみはら写真新人奨励賞」
中村 治(東京都)
作品名『HOME – Portraits of the Hakka』より ※作品5点の内、左から4番目
○【特別賞】 「江成常夫賞」
船尾 修(大分県) ※第16回さがみはら写真賞受賞、第9回さがみはら写真新人奨励賞受賞
作品名『フィリピン残留日本人』より
※作品5点の内、左から5番目

審査員コメント

接触と移動を封じられたコロナ禍の下での審査会となったが、記念すべき第20回目フォトシティさがみはらのさがみはら写真賞は、甲斐啓二郎『骨の髄』に決まった。
世界各地で行われる肉弾相打つ祝祭儀礼を撮影した力作である。即物的な肉体が衝突し、骨の髄が揺らぐ格闘技のような荒ぶる祭礼の頂点を中心に、群集の動きと情動がダイナミックに捉えられる。イングランド・アッシュボーンの、フットボールの原型のようなシェロータイド、秋田・美郷町の竹打ち、ボリビア・マチャのティンク(出会い)祭り、ジョージア・シュフティのレロ祭り、長野・野沢温泉村の道祖神祭り、いずれもほとばしる汗や立ち登る湯気、叫びや唸りに満ちた魂のぶつかり合いが写真の強度を生み出している。
激しい戦闘なのか、儀礼なのか、祭りなのか、競技なのか。そのいずれでもあり、その各々の始まりのカオスが合流してゆくかのようだ。溜まりに溜まった感情を一挙に噴出させることで五穀豊穣や無病息災を祈るだけでなく、普段は意識することのない私たちの内部の他者性が目覚めさせられる。騒乱の奥に潜む集団の流動性の核心が熱気と共に写真には封じ込められた。
さがみはら写真アジア賞は、タイを代表する写真家マニット・スリワニチプーン『極彩色のバンコク』が選ばれた。21世紀に入り大きく変容するアジア最大の都市バンコクを一種の痛みと共に撮影したシリーズである。マニットは20世紀の終わりに『白と黒のバンコク』を出版している。ストリートスナップを中心にバンコクのエネルギッシュな動きを捉えた写真集だったが、それから20年が経ち、デジタル写真のクローズアップと高精細画像による新しいアプローチでバンコクの人々と社会の変化に焦点を当てている。グローバリズムとコマーシャリズムが浸透し尽くしたこの都市の皮膜が生々しく写され、アジアの現実感を浮き彫りにする。「人々は押し潰され、逃げ場を失い、窒息しそうだ。20年前にはまだ残っていた自由や希望は何処へ行ってしまったのだろうか」極彩色の都市の煌きに、その嘆きと哀しみが明滅している。
さがみはら写真新人奨励賞は、安楽寺えみ『Balloon Position』と、中村治『HOME - Portraits of the Hakka』が選出された。
『Balloon Position』は、秘蔵されていた手作りの写真帖を独特の紙と特殊なインクで再生し、あらためてそのバルーンのような球状のイメージの一つ一つに息(プネウマ)を吹き込みながら、生のドキュメントとしたものだ。一見、極私的な写真に見えながら、見る者の無意識に入り込んでくるオーブ(たまゆら)現象のような像のありようが印象深い。
『HOME - Portraits of the Hakka』は、中国福建省山間部に住む客家と呼ばれる人々とその巨大な集合住宅「客家円楼」を時間をかけて撮影した写真である。客家は黄河流域から戦乱を逃れやってきた人々を始まりとし、移動を繰り返しながら世界中に広がっていった華僑の中心ともなった。1700年もの歴史を刻む存在感のある土楼と住人たちの佇まいは、彼らの世界観や死生観まで年輪のように浮かび上がらせてくる。

(東京藝術大学教授/美術史家/美術評論家 伊藤 俊治)

相模原市総合写真祭フォトシティさがみはらについて

写真は、芸術写真から家族写真まで広い地盤を持ち、その卓越した記録性と豊かな表現機能により、多くの人に感動を与えるものであるとともに、私たちの生活にとても身近な存在です。 相模原市では、豊かな精神文化が求められる新しい世紀の幕開けにあたり、写真文化にスポットをあて、これを「新たなさがみはら文化」として全国、世界に発信することを目指して、総合写真祭「フォトシティさがみはら」を2001年にスタートさせました。 この写真祭は、新たな時代を担うプロ写真家の顕彰と、写真に親しむアマチュアに作品の発表の場を設けるとともに、市民が優れた芸術文化に触れたり、それぞれの場に参加できたりする市民参加型の事業で、写真をキーワードとして、時代と社会を考え語り合うことで、新世紀における精神文化の育成に貢献することを基本理念にしています。 また、2006年日本写真協会より「日本写真協会賞・文化振興賞」、2011年日本写真家協会より「日本写真家協会賞」に、写真文化の振興、発展に貢献したとして、相模原市総合写真祭フォトシティさがみはら実行委員会が選定されました。

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