Nikon Imaging
Japan
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新宿ニコンサロン 2013年12月

吉村 和敏写真展

写真
カスタム・ドクター ソロモン諸島の伝承医
11/26 (火) ~12/2 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休

写真展内容

熱帯雨林の豊かな森と、美しいサンゴ礁に抱かれたソロモン諸島。各地に点在するいくつかの村には、カスタム・ドクターと呼ばれる伝承医がいる。彼らは先祖代々受け継がれてきた薬用植物に関する知識をもとに「薬」を作り、村人たちの病気を治し、ガン、マラリア、黄熱病、エイズなどの難病と闘い続けている。
カスタム・ドクターとは、民間療法の伝承医を指すが、彼らは先住民族の文化継承者でもある。しかし現代社会において、その存在は「隠れた存在」であった。作者は、時間をかけて彼らに寄り添い、その活動を記録することと、発表することを許された。
ソロモン諸島、なかでもガダルカナル島は、1942年、太平洋戦争の激戦地となり、日本とアメリカの、多くの兵士の血が流された。なかには祖父や父親をここで失った人もいるだろう。その悲惨な過去も今では生い茂る熱帯雨林の向こうに消え、訪ねてくる人もなく、祈りのような静かな時間だけが流れている。モノクロ約50点。

作者のプロフィール

吉村 和敏(ヨシムラ カズトシ)
1967年長野県松本市生まれ。長野県立田川高校卒業後、東京の印刷会社で働く。退社後、1年間のカナダ暮らしをきっかけに写真家としてデビューする。以後、東京を拠点に世界各国、国内各地を巡る旅を続けながら、意欲的な撮影活動を行っている。自ら決めたテーマを長い年月、丹念に取材し、作品集として発表。絵心ある構図で光や影や風を繊細に捉えた叙情的な風景作品、地元の人の息づかいや感情が伝わってくるような人物写真は人気が高く、定期的に全国各地で開催している個展には、多くのファンが足を運ぶ。近年は文章にも力を入れ、雑誌の連載やエッセイ集の出版など、表現の幅を広げている。今、その活動が最も注目されている写真家の一人である。
2003年カナダメディア賞大賞受賞。07年写真協会賞新人賞受賞。
主な写真集に、『プリンス・エドワード島』『「フランスの美しい村」全踏破の旅』(講談社)、『BLUE MOMENT』『MAGIC HOUR』(小学館)、『PASTORAL』(日本カメラ社)、『Shinshu』(信濃毎日新聞社)、『LIGHT ON EARTH』『RESPECT』(丸善出版)、『Sense of Japan』『CEMENT』『カスタム・ドクター』(ノストロ・ボスコ)などがある。

第38回伊奈信男賞受賞作品展
鈴木 吼五郎写真展

写真
鉱山、プランテーション、縫製工場
12/3 (火) ~12/9 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休

写真展内容

写真

グローバル化の進展に伴い、世界はますます近接し、複雑かつ密接に繋がっている。しかし、現実にはモノの生産、加工から流通、消費に至るサプライチェーンの具体的な現場は、私たちからより遠く、見えにくいものとなっている。
本作品は、アジア、アフリカ各国の鉱山、製造工場、リサイクル業者等と交渉し、その風景を捉えた記録の一部であり、このような写真を通して、社会構造の一端を可視化することをその目的としている。A.ザンダーの作品のような、正確な記録の積み重ねとそこに立ち上がる美が作者にとっての写真であり、それは写真の本質に向きあう作業だと考えている。
このプロジェクトは継続中だが、帰結はない。被写体に寄り添うストーリーも、作者から鑑賞者に投げかけるメッセージもない。なぜなら、作者自身のイマジネーションなどは取るに足らないものであり、対象を正面から記録し続けることこそ、この撮影の最大の意味があると考えるからである。カラー約30点。

授賞理由

第38回伊奈信男賞は、鈴木吼五郎氏の「鉱山、プランテーション、縫製工場」に決定した。この度の伊奈信男賞の特徴は何より、これまで作品発表経験の無かった写真家が受賞したことである。これは、私たち選考委員の判断が実践的な場面で厳しく問われるという事態でもあった。さらにまた、鈴木氏の他にも優れた候補作品が複数あり、決定に至るまでには長時間の検討が必要とされた。
鈴木吼五郎氏の「鉱山、プランテーション、縫製工場」は、そのタイトルが示唆するように、サプライチェーンの見えにくい場所に現れた光景である。作者は展示ステートメントで「このような写真を通して、社会構造の一端を可視化することをその目的としている。」と語っているが、その早急な結果は容易には得難いかもしれない。しかし、「被写体に寄り添うストーリー」や「作者自身のメッセージ」、つまり事前に鑑賞者に臆見を抱かせる要素を添付しない写真展示は、イメージが持つさまざまな細部を際立たせ、遠く迂回するようであっても、むしろ彼の地や、彼の人々を想像するための極めて正当な手続きに思えた。稀に、鈴木氏の写真が美的判断に基づいているように見えたとしても、しかし、サプライチェーンの編み目に埋もれ地球規模で広がる「陰画」を、写真によって可視化で象徴的な「陽画」に変換するというこの方法は、「作者自身のイマジネーションなどは取るに足らないものである」と語る鈴木氏にとって唯一の選択肢だったのではないだろうか。完結も帰結もあり得ない困難な仕事の展開を、私たちは注視してゆく。

作者のプロフィール

写真

鈴木 吼五郎(スズキ コウゴロウ)
1972年生まれ。カメラマンアシスタントを経て、2000年よりフリーで活動中。

juna21 三木淳賞奨励賞受賞作品展
藤原 香織写真展

写真
ホログラム
12/10 (火) ~12/16 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休

写真展内容

本来そのものがあるべき位置に収まっていないものを撮り集めた作品である。
そこにあったものが写真を通じて別のものに変容することで、
「自分がみている、またはみていた世界は如何様にも変わる可能性を孕んでいるのではないか」
という作者の疑念はより深まる。
本展は、作者がそれらを写真に撮るという行為を通じ、その感覚を自らの身体に刻み込むことで疑念を確信へ変えようと試みたものである。カラー約30点。

授賞理由

藤原氏の表現は実に奔放、大胆で、未完にも見える色彩やフレーミングは新人にふさわしい新鮮さに満ちている。
標準的な撮影技法を意識的に無視し、いやむしろ従来の写真表現を破壊したいという強い意志すら感じられる。その力強い意志と行動力に今後の大きな期待値を込めての評価となった。
スナップショットという手法は、カメラが切り撮ってくるイメージが肉眼の視覚認識を超えた異形として現われることがある。この作品「ホログラム」は、写されたものが日常と乖離するイメージとして現われたとき、日常の視覚認識それ自身を疑ってみようとする作業のようだ。このような体験は写真を始めて間のない初期に発見することが多くあるものだが、藤原氏はその偶発的に現われた原初的な体験を継続的に現われるようにするためにノーファインダー的な身体的行為を重視している。そこで生まれる写真が虚構のように感じられるのであろう。現実と虚像が浸透し合うレーザー光によるホログラム。それをタイトルとしていることからも、今見つめている事実らしきものから皮相を剥ぎ取り隠された異相を発見したいと願っているのであろう。異相の存在はさておき、このような果敢な挑戦の先が期待できる新人である。

作者のプロフィール

藤原 香織(フジワラ カオリ)
1981年千葉県生まれ。
写真展に、2013年「ホログラム」(新宿ニコンサロンJuna21、大阪ニコンサロンJuna21)がある。

juna21 角田 奈々写真展

写真
苦いマンゴー ~ベトナムの地に触れて~
12/17 (火) ~12/28 (土)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休

写真展内容

両親の離婚をきっかけに、母親と住んでいた作者は、母親やいろいろなものから距離をおきたくて、2010年2週間ベトナムに旅をした。
ベトナムに興味を持ったのは、福岡に住んでいたことから、自分の中で、距離として近い国は韓国、中国、次にベトナムだったからだ。
また、日本とは社会制度がちがう社会主義共和国というのはどういうところで、面積も日本とあまり変わらない、さまざまな歴史を持つベトナムという国はどんなところだろうと疑問をもったのがベトナム行きのきっかけだった。
当時は学生だったが、社会人になっても、その時行って感じたベトナムの独特の雰囲気を忘れられず、仕事を辞め、2012年にもう一度ベトナムに向かい2ヶ月間滞在し、2013年には1ヶ月間撮影を行った。
当初の抱いた疑問はなかなか表面的にはわかりづらかったが、日々そこに暮らしている人や風景を撮ることで、作者は一瞬だけその地に触れることができるのではないかという思いで撮影をした作品である。カラー約40点。

作者のプロフィール

角田 奈々(カクダ ナナ)
1986年福岡県生まれ。九州産業大学大学院芸術研究科写真専攻前期博士課程修了。
主な写真展(個展)に、2008年11月「狭間」(アジアフォトグラファーズギャラリー/福岡)、09年1月「母 57歳」(新宿ニコンサロンJuna21)、3月「狭間」、9月同展、10年4月「地」(以上、アジアフォトグラファーズギャラリー/福岡)、5月「母 57歳」(大阪ニコンサロンJuna21)、9月同展(アジアフォトグラファーズギャラリー/福岡)があり、グループ展に、09年AQAプロジェクトによるアジア現代美術展「ただいま」、10年「手と眼のディスクール」(以上、ギャラリーアートリエ/福岡)などがある。

12/29 (日) ~1/4 (土)
年末年始休館
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