Nikon Imaging
Japan
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新宿ニコンサロン


柴田 のりよし展
[路地裏マンダラ]

9/11 (火)~9/24 (月)
10:00~19:00(最終日は16:00まで)
会期中無休



<写真展内容>
作者は生来路地歩きが大好きで、いろいろな土地を旅しては裏通りや細い路地へと入り込んでゆく習性がある。7年ほど前より、変わりつつある中国都市部の路地裏に興味を抱き、北京・上海・広州を旅しては庶民の生活を観察してきた。
しかし、空間としての路地は各所にあるが、人間のなまなましい存在感が露出している作者好みの路地はそう多くない。経済の発展や都市化が、路地のなまなましい生活臭を希薄にするということだろう。
中国の路地は町角から次々に人が溢れてくる感じが心地良い。人口密度が高い上、住宅事情が悪いので、自然と人々は路上に繰り出すことになる。大通りから一歩路地へ入ると車両は入ってこないので路地が子供の遊び場になっている。公共スペースまで生活空間に取り込んだような路地裏生活を好ましく思う。細い路地を右折左折した末に方向感覚を失いながら、地図にも載っていない活気のある路地を発見した時は、路地歩きの幸福を感じる。
街はいつでも急激に変わる。オリンピック、万博などのイベントもあり、あちこちで取り壊しの槌音が鳴り響く。壁のあちこちに書かれた「拆」の文字は取り壊しの意味で、やがて住民の移転が始まり、レンガ造りの古い住宅は更地にされる。通りには再開発への協力を呼びかける共産党支部の赤い横断幕が風に揺れている。僅かばかりの補償金では郊外の団地にしか入居できず、不利益を受ける人も多い。デベロッパーと結託した役人の強引なやり方に怒り、抗議の自殺を企てる人もいるほどで、中国特有の矛盾や庶民の不満を抱えながらも街は急速に変わり続けている。
実際のところ、今回の写真にある路地風景の半分近くは、もう既に消失している。同時に人々の伝統的なたたずまいも現在進行形で消滅しつつあり、止めようのない大きな流れだとは理解しつつも、惜しい気がしてならない。モノクロ90点。



<作者のプロフィール>
柴田 のりよし(シバタ ノリヨシ)
1966年長崎市生まれ。90年慶應義塾大学文学部卒業。共同通信社カメラマンを経て、現在フリーで活動中。チベット、中国を中心にドキュメンタリー作品を撮り雑誌、単行本、新聞に写真を発表。
写真展に、2002年「ティベタンズ」(新宿ニコンサロン)、05年「広東路地裏劇場」(オリンパスギャラリー)、07年「雑技の郷の子供たち」(コニカミノルタプラザ)などがあり、写真集に『ティベタンズ』(モール、02年刊)がある。
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