Nikon Imaging
Japan

第15回(2013年度) 三木淳賞

juna21 上田 順平

手紙

内容:

写真 写真

1998年11月28日。母は鬱病に苦しみ自らの命を絶ち、その10日後に父は母のあとを追った。父にとっては妻のいない世界なんて、生きる価値の無いものだったのだろう。
新しい家族ができて子を授かり、やっと両親を振り返ることが出来るようになった。両親から貰ったものを確かめて、思い出して、私は新しい家族に何ができるのだろう?と考える。答えは過去にあって、私の中にある。それは私の中に両親がいるということだ。そう考えると生きていて良かったなと思う。きっとこの手紙も届いている。(上田順平)
カラー52点・モノクロ6点。

授賞理由:

写真展のタイトル「手紙」の宛先は、自死した両親への感謝と強く生きる決意を込めた父母へのメッセージである。予測もしなかった両親の相次ぐ自死。この悲劇的な体験をとおして夫婦愛、家族愛の意味を問うた優れた作品として高く評価された。
鬱病を患って自死した母の10日後、最愛の妻―母を喪った悲しみから父も自死。遺された作者上田氏(息子)は、受け入れ難い現実に立ち竦む日々であったという。やがて、部屋のあちこちに遺された父が描いた母の肖像画に自分が囲まれていることに気付く。愛情込めて妻(母)をモデルとして繰り返し選んできた夫(父)が遺して逝った作品群で埋まった自宅を撮り始めることになる。
そんな作業をとおして、母を愛してやまなかった父、命を賭けて愛した父、そんな父母の関係を深い夫婦愛として受け入れるようになってゆく。そして自分に子が授かり己が父として新しい家族の形態をなしたとき、父母が遺してくれた純粋な愛のかたちに己も学ぼうと決意するのである。
しかし、実はこのとき作者の中で大きな変化がおきていたのではないか。それまで作者の母の前で立ちはだかっていたように見えていた父が亡くなり、作者が父を介せずに直接、母と語りあえることが出来る日となったのであろう。
母乞い物語りでもあるようだ。この文学的にも表現が難しい無意識に及ぶ心情を写真で直截に表現できたことは、見事な秀作と言える。

プロフィール:

写真

上田 順平(ウエダ ジュンペイ)
1977年大阪府生まれ。2002年ビジュアルアーツ専門学校・大阪写真学科夜間部卒業。