Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

vol.20 さまざまなシーンから検証する、Nikon D4Sの実力。

2. より速いシャッタースピードを実現する高感度性能。

新センサーや新エンジンによる画質向上。

右の写真は何を比較されたものでしょうか?

幅跳びの選手をD4で「ダイナミックAF」9点で撮影した写真と、D4Sの「グループエリアAF」で撮影した写真を比べたものです。
ピントが合っているという点では、D4も負けてはいません。でもシャープさは明らかにD4S。並べると、D4の写真はピントが甘いように見えてしまいますよね。それに肌色も、少し黄色みがかっているようなD4に比べ、D4Sはより健康的な発色です。
これらは新しいCMOSセンサーや、こちらも新しくなった画像処理エンジン「EXPEED 4」による違いが出ているのだと思います。

AF性能だけでなく、画質も向上しているということでしょうか。

そうですね。
スポーツの撮影でフォーカス以外に悩ましいのは、色や感度です。陸上競技では、例えば午前中に予選、夕方から決勝が行われるといった具合に、朝から夕方過ぎまで同じ競技場内で試合が行われることがよくあります。
その間、時間の経過による自然光の変化はもちろん、夕方になれば競技場にライトが照らされ光の状態は刻々と変わります。マニュアルで色温度設定を行っても、5分後には再設定が必要ということもあります。もちろん競技はお構いなしに進行しますので、それらの設定がオートですんでしまうのであれば、それが一番ありがたいのです。
その点、D4SはAWBや高感度性能も改善され、カメラ任せでも適正な色や明るさが出るようになりました。オートで撮ってそのまま使えるといった印象です。

作例Gの写真を見ると、色の違いがはっきり出ていますね。

特に肌色の差に目が行きますね。
スポーツ写真にはドキュメンタリー的に選手を撮ることもあり、その場合はその場の状況も記録することが大切になりますので、午前中なら午前中の、夕方なら夕方の光をそのまま写します。ただし通常の、記録としてのスポーツ写真では、どのような光の状態であっても、被写体の固有の色が自然に表現されていることが重要です。「AFが合ってくれる」「色も任せられる」ということであれば、私たちはタイミングとフレーミングのみに集中することができます。
その点、D4Sはとても優秀だと思います。撮影者の手間を減らしてくれるので、使っていてとても楽で良いですね。

■D4S(グループエリアAF)とD4(ダイナミックAF9点)で連続撮影した描写の比較

写真:作例
AF-S NIKKOR 400mm f/2.8G ED VR
f/2.8 1/1600秒 ISO100

■作例G

写真:作例
AF-S NIKKOR 400mm f/2.8G ED VR
f/2.8 1/1600秒 ISO6400
写真:作例
作例Gを顔に寄ってトリミングしたもの。

写真:作例

写真:作例

写真:作例

使用に耐えうるISO25600の画質。

高感度性能はいかがでしたか?

D4の場合、私の実感として感度設定は実質最高でISO6400、できればISO4000ほどに抑えておきたいという印象でした。ではD4Sではどうかということで感度を比較するため試し撮りをしたのですが、この結果は予想を超えていました。こちらの棒高跳びの写真は(作例H)、D4SでISO6400とISO25600で撮影した写真なのですが、拡大してもこの画質です。ISO6400は言わずもがなです。
D4Sは、雑誌の表紙で使うような大きなカットでもISO12800、ページ内のワンカットであればISO25600でも問題なく使えるクオリティが出ます。ISO25600を使えるということは、速いシャッタースピードが使えるということなので、スポーツ写真を撮る者にとって、これは非常に大きな進化です。これからはISO25600での撮影も、確実に選択肢に入りますね。
これまでは、ノイズを抑えるため感度を上げずに撮影したところ結局被写体ブレになった、ということもありましたが、作例IのようにISO25600でもノイズはほとんど気になりません。D4Sは2絞り上まで使えるわけですから、一発で決められる可能性が格段にアップしたと言えます。また少し暗めの望遠ズームレンズでも、D4Sがある程度レンズ性能をカバーしてくれますから、その点もフォトグラファーは助かりますね。

■作例H

写真:作例
Nikon D4S
AF-S NIKKOR 400mm f/2.8G ED VR
1/1600秒

 

写真:作例
作例Hを顔に寄ってトリミングしたもの。

■作例I

写真:作例
Nikon D4S
AF-S NIKKOR 400mm f/2.8G ED VR
f/5.6 1/2500秒 ISO25600

写真:作例

写真:作例

写真:作例

3. 細部までブラッシュアップされた操作性。

操作性を高めるディテールの改良。

他に変化を感じた点はありましたか?

いろいろとありましたよ。
まずは細かなフォルムの改良。例えばサブセレクターは、動かした感触がはっきりわかるようになりましたし、AF-ONボタンの形状も厚みが出て押しやすくなりました。また、縦位置グリップ横に溝ができてボタンとの段差が大きくなったので、ファインダーを覗きながらでもスムーズに操作できます。わずかな違いのようで、実はちょっとした操作感の違いが私たちには大きいのです。

サブセレクター。
動かした感触がはっきりと分かるように改善された。
グリップ横の溝。

それから、先端にフォーカス作動ボタンがついている望遠レンズの場合、このボタンを押している間だけAFエリアモードを変えられるようになりました。
例えば、選手が走っているときは「グループエリアAF」や「ダイナミックAF」で追いかける。ゴールした後は、選手の表情を撮るために選手の目だけにピントを合わせたいので、ボタンを押して一時的に「シングルポイントAF」に変える、といった撮り方も可能になりました。立ち止まった選手を「グループエリアAF」のままで撮ると、5点の中で最も近い位置にピントを合わせようとするため、目ではなく鼻にピントが合ってしまうかもしれません。ですので、AFエリアモードの切り替えが素早くできるのは大変助かります。

フォーカス作動ボタン。
押している間、AFエリアモードを切り替えることが可能。

その他、フォーカスエリアに関しては「横位置での撮影時はシングルポイント」「縦位置での撮影時はグループ」というように、カメラの縦横それぞれにAFエリアを設定しておけるようになっています。これまでは「横のときは中央」「縦のときは上部」などフォーカスポイントの位置の設定は可能でしたが、AFエリアモードの設定まではできませんでしたので、とても便利になりました。
フォーカスモードやAFエリアモードを限定する機能も便利だと思います。使わないモードを選択できないように設定できるので、素早いモード切り替えができます。使わないモードが表示されていると操作が遅くなりますし、間違って他のモードを選択してしまうというミスの可能性もありますからね。

■AFエリアモードの設定

■AFモードの制限

フォーカス関連の機能以外ではいかがでしょう?

連写中のファインダー内の見え方も改良されています。シャッターが切られるたびにブラックアウトして被写体を確認しにくかったのですが、かなり見やすくなりました。連写中もできるだけしっかりと被写体を確認したいですからね。

4. AF性能において最高のカメラ。

総合的な変化を実感。

D4Sについて、あらためて全体的な感想を伺えますか?

とにかくAFとAWBが良くなっています。
ニコンのデジタルカメラはD3から使っていますが、正直AF性能がもう少し良くなればという思いがありました。しかしこのD4Sは、非常に精度が向上しています。これなら何の問題もありません。
色もかなり忠実に表現されるようになったと思います。特に、肌色と白が大幅に改善されていますね。

早々に競技場で使われて、他の写真家の方からD4Sについて何か聞かれませんでしたか?

D4Sに限らず現場で新しいカメラを使っていると、よく質問や購入の相談を受けることがあります。もちろんD4Sについても何人かに聞かれましたが、そんなときは「絶対買ったほうがいいよ」とすすめています。
人によってカメラに求めるものは違うと思います。でもこのクラスのカメラを使われる方は、やはりAF性能を重視する方が多いのではないでしょうか。もちろん他社にも良いカメラはあります。細かな機能の比較まで行っているわけではないのでどのカメラが一番良いと軽々しくは言えませんが、総合的なAF性能において現時点ではD4SがNo.1でしょう。

最後に、ニコンへの要望や意見などはありますか?

まず、ほとんどの方がそう思っているのではと思いますが、FXフォーマットでもセンサーの端までフォーカスポイントがほしいですね。DXフォーマットであれば、1.3xクロップにすれば画面全域をカバーできますよね。でも現段階では物理的に難しいのかな。
それから重量でしょうか。デジタルに変わって現場へ持って行く物が増えましたから、軽量化を切に願います。それに軽ければ軽いほど、カメラを自由に振れますから。最近発売された800mmのレンズは、かなり軽くなりましたよね。ニコンのレンズの性能、とりわけナノクリスタルコートの描写力は抜群に素晴らしいので、重さの面でも期待しています。
そして最後に、意見ではありませんが、ニコンには感謝を伝えたいですね。撮影する者の技術だけではカバーしきれない、良いカメラだから撮れるシーンというのは実際にあるので、カメラの進化は大歓迎。
開発の人たちは、私たちが思いもつかないようなことまでいろいろと考えて作ってくれているのでしょうから、本当に尊敬しています。これからも私たちの想像の上を行くカメラや技術を開発してほしいですね。

取材協力「株式会社陸上競技社」

インタビューを終えて・・・

外観も画素数もD4とほぼ同じD4S。実際の性能はどれほど向上したのか、気になった方も多いのではないでしょうか。
しかし自社で新開発したCMOSセンサーや画像処理エンジンの採用、AF性能の向上など、数値には現れにくいポイントを刷新。「本来あるべき色や豊かな階調の再現」「撮りたい一瞬を確実に捉える」といった、カメラの最も基本的かつ重要な性能を極限まで高めた仕上がりになっているようです。
今回お二人のフォトグラファーに異なる状況でテスト撮影を行なっていただいたのですが、印象に残ったのはD4Sに対する意見がほぼ共通していたこと。
撮影条件に左右されない、非常に完成度の高いオールラウンドなカメラであることを確信できたインタビューでした。

プロフィール

三浦健司氏

三浦 健司 みうら けんじ

1999年より本格的なデジタル撮影を始める。撮影や画像レタッチに関する著書や共著多数。国内外で多くのセミナー講師を務める。得意分野は日本の「食」「手仕事」「桜」。

「和」のテイストを求め日本や海外を取材する。主な出版物は、「吉兆 KITCHO」講談社インターナショナル。「Japanese Farm Food」Andrews McMeel Publishing ANA WINGSPAN ANA国際線機内誌(英語版)にて工芸や食を中心に企画・構成・取材を行う。IKEBANA INTERNATIONALでは、特集のほか写真エッセイも数多く手がける。

個人的な活動では、夜桜や全国の桜を30年前から撮影。2006年4月号「行間の桜」としてアサヒカメラに掲載される。写真展は1995年、東京・スタジオエビスフォトギャラリーにて自作和紙印画紙に夜桜を焼き付け、灯りに透かし鑑賞する透明感あふれる写真展「春の愉しみ」を開催。

メールアドレス
奥井隆史氏

奥井 隆史 おくい たかし

1968年 東京生まれ
1992年 フォート・キシモト入社
1996年 フリーランスとして活動開始
主にスポーツ写真 特に陸上競技をメインに撮影
日本選手権陸上、箱根駅伝は96年より毎年取材
世界陸上、全米陸上、陸上ヨーロッパ選手権、世界クロスカントリー等、多数取材
その他、釣りやアウトドア関係の雑誌、広告、カタログ等の撮影
「think TANK photo」JapanのAmbassador