新宿ニコンサロン 2012年3月

ニコンサロン連続企画展 Remembrance 3.11
和田 直樹

写真
惨禍 -三陸沿岸部の定点記録-
2/28 (火) ~3/5 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休

写真展内容

この写真展の作品は、東日本大震災の津波による三陸沿岸部の惨禍を、デジタル一眼レフカメラとシフトレンズの組み合わせる手法を用いて、パノラマ方式により即物的に捉えた定点記録写真である。
作者は、震災発生一週間後に現地に赴き、宮古、大槌、釜石、大船渡、気仙沼、南三陸、石巻など津波により甚大な被害を受けた被災地を克明に記録した。自然災害として津波の惨禍を一次的に捉えるだけではなく、その後も定期的に40地点で撮影を継続することにより、被災地の復興復旧の軌跡を提示するとともに、瓦礫が撤去され更地になり、雑草が生い茂る光景から、人間の生活圏の拡大による過失も示す、という逆説的な視点も浮上させている。カラー60点。

作者のプロフィール

写真

1964年大阪府池田市生まれ。大阪府立箕面高校卒業。第1回大阪府高校生中国派遣団参加。87年日本大学芸術学部写真学科卒業(在学中は写真家木村惠一氏に師事)。広告代理店電通のスタッフフォトグラファーを経てフリーランスに。第4回藤本四八写真文化賞奨励賞受賞。公益社団法人日本写真家協会会員。

ニコンサロン連続企画展 Remembrance 3.11
田代 一倫

写真
はまゆりの頃に
3/6 (火) ~3/12 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休

写真展内容

写真

震災から35日後、作者は初めて被災された人と会話をし、シャッターを押すことができた。それまでの間、被災地へ人を撮影に行きたいと何度も思ったが、本州の福島以北へ行ったこともない人間が、震災をきっかけに撮影に行くことに違和感を覚え、その思いを消すように努めていた。
しばらくはその二つの気持ちが堂々巡りをしていたが、とにかく前へ進みたくなった作者は、被災地へ撮影に行くことにした。そして、4月13日に岩手県宮古市に到着し、15日に初めての撮影に至った。この撮影から約二週間、宮城県、福島県と被災地を南下しながら、何人もの人の話を聞きつつ撮影を行った。
それからは何度も被災地へ撮影に向かった。そして、その撮影中に、宮古市赤前で82歳の女性に会った。撮影させてほしいことを告げると、「私はここの土地の者でないから」と断られた。よく話を聞いてみると、その人は、そこから車で5分程の距離にある集落から嫁いで来られたとのことだった。作者は、この時から2ヶ月ほど前に、被災地を自転車で回ってみた時の自分の疲労を思い出し、この、土地への感覚に、どこか納得をした。そうした経験から、海岸沿いに位置する宮古市だけではなく、そこから険しい山を隔てた遠野、そして更に内陸にある盛岡へと撮影の範囲を広げた。
2012年1月1日、作者は岩手県釜石市近くの神社を廻って初詣に来る人たちを撮影していたが、鵜住居町にある鵜住神社で出会った人に、地域の人が集まる小屋に招かれた。奥さんたちは、粕汁が入った大きな鍋をストーブの上で交換しながら談笑し、旦那さんたちは焼酎をあおり、子供たちは、なぜか大吉ばかり出るおみくじに夢中になっていた。作者は部屋の隅に座り、その光景をみていた。そして、彼らの行動の端々から新年を迎える喜びを感じた時、もう少し時間をかけてこの人たちを撮影したい。と、ふつふつと思うようになった。カラー約30点。

作者のプロフィール

写真

1980年福岡県生まれ。2010年九州産業大学大学院博士後期課程造形表現専攻満期退学。06年アジアフォトグラファーズギャラリーの設立・運営に参加。09年 photographers’galleryの運営に参加。第8回三木淳賞奨励賞受賞。
写真展(個展)に「浮憂世代」(Juna21新宿・大阪ニコンサロン)、「八幡」(アジア フォトグラファーズ ギャラリー・福岡)、「椿の街」(photographers’gallery・東京)などがあり、グループ展に「社会標本展」(ギャラリーON・ソウル)、「消滅の技法展」(福岡アジア美術館)、「Social Voyeurism」(ギャラリーアートリエ・福岡)、「クロッシング・カオス1999-2009」(銀座・大阪ニコンサロン)などがある。

ニコンサロン連続企画展 Remembrance 3.11
鷲尾 和彦

写真
遠い水平線
3/13 (火) ~3/19 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休

写真展内容

写真

10年以上にわたり四季を通じて日本各地の海辺の風景とそこに佇む人々のポートレートを撮影してきた。震災発生後も、日常と地続きの場所として、東北の海岸線沿いを移動しながら撮影を続けている。
傷跡が残り、残骸が散乱し、あるいは砂浜が失われてしまった海辺を歩き続け、そこにある痕跡を拾い上げるように記録する。言葉を失った先に、新しいコトバがうまれてくるまで、撮影した写真を繰り返し見返す。こうした行為を続けることは、被災地に向かった多くの写真家がそうであるように、それがどこか遠くの話ではないことを、自分自身の身体で感じとるための個人的な行為でしかない。
しかし、記録の先に、それが記憶となること。歩き続け、見続けるという様々な私的な行為が多様に存在するチカラを信じたい。遠い水平線はきっとその先にはっきりと見えてくるだろう。海はひとつの記憶であり、海に向かう人々は世界を共有しているのだから。モノクロ約40点。

作者のプロフィール

写真

1967年兵庫県生まれ。早稲田大学教育学部社会科学専修卒業。20代後半から独学で写真活動に取り組む。2001年清里フォトアートミュージアム主催「ヤングポートフォリオ」入選。06年ガーディアン・ガーデン主催「フォトドキュメンタリーNIPPON」入選。
著書に、写真集『極東ホテル』(赤々舎)、池澤夏樹氏との共著による『春を恨んだりはしない』(中央公論新社)等がある。
公式サイト: http://www.washiokazuhiko.jp

ニコンサロン連続企画展 Remembrance 3.11
宍戸 清孝

写真
Home
3/20 (火) ~3/26 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休

写真展内容

写真

3月11日、故郷の海は牙を剥いた。畑や田んぼはヘドロで埋まり、先祖伝来守り続けてきた墓や人々の生活を見守ってきた神社までも流され、見慣れた町は変わり果てた。
震災直後、土台だけ形見のように遺して、それまでの暮らしを一切さらわれた家の跡地を眺めながら、彼らが戻るべきHomeはどこにあるのだろうと暗澹とした思いにとらわれた。
しかし、時とともにその光景には小さな変化が現れた。被災地の至る所で、人形やランドセルなど大切な想い出の品々が集められていた。土台だけが遺された家に新しく植えられた庭木や津波のヘドロを被った広大な荒れ地のなかに小さな緑の畑を見つけた。
故郷の甚大な被害を前に、この震災をどう考えればいいのか、はっきりとした答えは出ていない。ただ、木が根を張ることで枝を伸ばしていけるように、人々は心のHomeを取り戻そうとすることで、明日への一歩を踏み出そうとしているように思えてならない。
カラー・モノクロ合計30~40点。

作者のプロフィール

写真

1954年、宮城県仙台市生まれ。1980年に渡米、ドキュメンタリーフォトを学ぶ。1986年、宍戸清孝写真事務所を開設。1993年「カンボジア鉄鎖を越えて」(銀座ニコンサロン)、1995年よりアメリカと日本の狭間で激動の時代を生きた日系二世をテーマに写真展「21世紀への帰還」シリーズを発表。2003年日本リアリズム写真展において視点特選、2004年伊奈信男賞、2005年宮城県芸術選奨など受賞。著書に「Japと呼ばれて」(論創社)がある。

吉田 耕司

写真
月の町 2010-2011
3/27 (火) ~4/2 (月)
10:30~18:30(最終日は15時まで)
会期中無休

写真展内容

急な坂道が不規則に曲がりながら上へと続いていた。 家と家の間には細い路地が巡り一度足を踏み入れると方向感覚を失い、迷路の中に入り込んだ錯覚にとらわれた。
「月の町」(韓国語ではタルドンネ)農家からの離散者や1950年に始まった朝鮮戦争の戦場となり避難した人々が移り住んだ町をそう呼ぶ。
かつて都市近郊に点在していたと言う。山裾から中腹へ、時には山頂まで急な斜面と僅かな平地に急ごしらえの粗末な家が建ち並んだ。月に一番近い町。夜、家の中から屋根の隙間を通して月が見えたという。月の町と呼ばれる所以だ。
作者は釜山の山肌にへばり着くように立ち並ぶ家々を巡る路地を歩いた、そして取り壊しが決まっている「月の町」アンチョンマウルを訪ねた。
今では月の光が差し込む粗末な屋根はどこにも無い。屋根瓦や波形のトタン板は形さえ曖昧になるほど分厚く塗り重ねられている。壁はコンクリートに変わり、幾重にも塗り重ねられた塗料が所々はげ落ち地層のように露出していた。
作者が見ていたのはこの町に流れた月日の記憶なのかもしれない、そしてそれはこの町の人の営みの記憶を閉じ込めるかさ蓋の様にも思われた。
「月の町」かつて番地さえ無かったこの町の美しすぎる呼び名。再開発の為に殆どが撤去されている。カラー27点。

作者のプロフィール

1949年秋田県生まれ。2009年より写真制作活動を始める。
写真展に、09年「faces」(Place M)、11年「見つめ合う交流」(R.S.F gallery マドリード 参加)、「10人の日本人写真家の4週間」(gallery Lux ソウル 参加)などがある。