銀座ニコンサロン 2012年3月

ニコンサロン連続企画展 Remembrance 3.11
石川 直樹

写真
やがてわたしがいる場所にも草が生い茂る
2/29 (水) ~3/6 (火)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

写真

作者ができることはまず動くことだった。断片的な情報に振り回されるのではなく、自分の目でそれを確かめ、自分の言葉で伝える。物資をもって被災地に行くことを決めたのは、震災から二日後の朝だった。
青森の三沢空港から八戸に入り、太平洋沿岸を車で南下した。瓦礫の山が道を塞いでいるため、行けるところまで行って、あとはただ歩くしかなかった。雨に打たれながら、雪に足をとられながら、砂塵に巻かれながら、荒野と化した被災地を歩いていると、あらゆる感情がこみあげてくる。
迂回を繰り返しながら岩手の宮古まで南下し、雪に覆われた山を下って壊滅した海辺の街の風景が視界に飛び込んできたときのことは、今でも忘れることができない。あれから一年が経ち、雪は溶け、街は家の土台を残して、更地になった。
世界はそこに在り続ける。たとえ自分が死んでも世界はそこに在る。言葉が追いつけない涯ての風景を留められるのは、写真しかない。

作者のプロフィール

写真

1977年東京生まれ。2002年早稲田大学第二文学部卒業。05年東京芸術大学大学院美術研究科修士課程修了。08年同博士後期課程修了。06年さがみはら写真新人奨励賞、同年ニコンサロンJuna21三木淳賞、08年日本写真協会新人賞、同年講談社出版文化賞、09年東川賞新人作家賞、10年さがみはら写真賞、11年土門拳賞をそれぞれ受賞。
主な個展:05年「THE VOID」(新宿ニコンサロン)、07年「NEW DIMENSION」(銀座ニコンサロン)、「POLAR」(SCAI THE BATHHOUSE/東京)、08年「Mt.FUJI」(銀座ニコンサロン)、「VERNACULAR」(PLACE M/東京)、10年「ARCHIPELAGO」(沖縄県立美術館)、「CORONA」(PLACE M)、「8848」(SCAI THE BATHHOUSE)
主なグループ展:07年「目黒の新進作家―七人の作家、7つの表現」(目黒区美術館)、08年「現代写真の母型2008」(川崎市市民ミュージアム)、09年「ARTIST FILE 2009」(国立新美術館)、「近くから遠くへ」(群馬県立館林美術館)、「Voyages」(パリ日本文化会館)、「日本の新進作家vol.8」(東京都写真美術館)、10年「瀬戸内芸術祭」(福武ハウス(旧女木小学校)/香川)、「トランスフォーメーション」(東京都現代美術館)
主な写真集:05「THE VOID」(ニーハイメディアジャパン)、07年「NEW DIMENSION」(赤々舎)、「POLAR」、08年「Mt.Fuji」(以上リトルモア)、「VERNACULAR」(赤々舎)、09年「ARCHIPELAGO」(集英社)、10年「CORONA」(青土社)

ニコンサロン連続企画展 Remembrance 3.11
笹岡 啓子

写真
Difference 3.11
3/7 (水) ~3/13 (火)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

写真

震災から一ヶ月経った4月、はじめて被災地へ行った。釜石市の高台で、私はカメラを取り出すこともできないまま眼下に拡がる町をみつめていた。そこで地元出身の方から「となりの大槌町はもっとひどい。広島に落ちた原爆が落ちたみたいだよ」という話を聞いた。広島出身の私はその表現に驚き、大槌町へ向かった。
車の窓ごしから見た町の印象は、確かに写真で見たことのある被爆直後の広島に似ていた。県道から海側へ、JR大槌駅のあった周辺を一人で歩いた。一面に茶褐色のがれきが拡がり、復旧用の道路が数本、白く交差していた。吉里吉里へ抜ける大槌橋から見ると、遮るものが無くなって、町を囲む山並みだけがくっきりと見渡せた。
冷たい海風が吹いて、肌寒い。砂塵が舞って目を開けていられない。焼け焦げた匂いと魚が腐ったような匂いが鼻をつく。折れ曲がったトタンが音をたてて転がっていく。骨組みが剥き出しになったビルの残骸がぶら下がったまま揺れている。よく見ると、がれきの間に行方不明者を捜索する人の姿がある。大槌町で見た光景は、3月11日以降、テレビやインターネットで繰り返し見てきた被災地の写真や映像の印象とも違っていた。いままで写真を撮ってきて、見たように写ったことは一度もない。もちろん、それを望んでもいない。歩いている間、たくさんのイメージが頭の中に浮かんでは消えていった。私はここで、はじめてシャッターを切った。
大槌町を撮影した後、津波の痕が生々しい三陸沿岸をゆっくりと南下していき、さらに、目に見えない原発の災禍に見舞われた阿武隈山地へと撮影地を拡げていった。あの釜石の高台で聞いた言葉の直接的な響きが、いまもずっと身体の奥に残っている。カラー30点。

作者のプロフィール

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1978 年広島県生まれ。東京造形大学卒業。2008 年「VOCA 展2008」奨励賞受賞。10年日本写真協会新人賞受賞。
写真展に、08年「SASAOKA Keiko 2001-2007」(タマダプロジェクトコーポレーション・東京)、「PARK CITY」(銀座ニコンサロン)、10年、「CAPE」(photographers’ gallery・東京)ほか、個展、グループ展多数。写真集に『PARK CITY』(インスクリプト、09年)、『EQUIVALENT』(RAT HOLE GALLERY、10年)がある。

会場写真

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ニコンサロン連続企画展 Remembrance 3.11
新井 卓

写真
Here and There -明日の島
3/14 (水) ~3/20 (火)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

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岩手、宮城、福島は、ここ数年の間くり返し訪れ撮りつづけてきた、作者の愛する場所である。
昨年3月11日の震災以降、被災した沿岸部や福島第一原発の周辺でめまぐるしく変化する状況に圧倒されながら、そのとき見たいと思ったもの、遺しておきたいと願うものを、1枚ずつ手探りで、銀板写真(ダゲレオタイプ)に記録してきた。
写真は、写しとられた現実に劇的な効果を与える。津波に襲われた街区の言葉を失うほどの光景であっても、それは同様である。
写真という行為によってふたつの現実─写真の中の現実と、その映像に触れる人々の日常─を分断することなく、なにが可能なのか。
昨年4月、樹齢1,200年の三春滝桜を撮影するため福島を訪れた。津波の被害が甚大だった沿岸部とは違って、事故を起こした原発の周辺は奇妙な静寂に覆われ、山野は、まるで何事もなかったかのように浅い春を迎えていた。
作者は、これからこの場所で起こるであろう永く目に見えない変化を、自分という極小の存在を通して見つめてみたいと思っている。200年の時空を超える銀板写真が、きっとこの試みの役にたつことを信じて。ダゲレオタイプ10~20点。

作者のプロフィール

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1978 年川崎生まれ。写真家。国際基督教大学(ICU)中退。東京綜合写真専門学校卒業。横浜を拠点に、国内外の美術館、ギャラリー、大学、NPOなどと連携して多彩な活動を展開する。
写真黎明期の技法・ダゲレオタイプ(銀板写真)を独自に習得し、作品制作に用いる、現代において数少ない写真家のひとり。2006年横浜美術館にてダゲレオタイプによる個展「鏡ごしのランデヴー Rendezvous on Mirror」、2011年川崎市民ミュージアムにて個展「夜々の鏡 Mirrors in Our Nights」を開催。
公式サイト http://www.TakashiArai.com

会場写真

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ニコンサロン連続企画展 Remembrance 3.11
吉野 正起

写真
道路2011 -岩手・宮城・福島-
3/21 (水) ~3/27 (火)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

写真

町のすべてが瓦礫の原になった絶望の現場に、即座にとりついて道路の復旧にとりかかる人々がいた。とにかくなにがなんでもそこへ行くために、一人でも生存者を助けるために、医療と食料を届けるために。
私たちはまずはじめに道路を必要とした。道路は、自衛隊もマスコミも泥棒も医者もヤジ馬も、無差別に誰でもつれてくる公共施設だが、少々の不都合は仕方ない。道路は、私たちが一人では生きていけない証拠だ。ある道路は跡形もなく崩壊し、ある道路は水中にしずみ、ある道路はずたずたになってしまったけれど、人はあきらめることなく工事をつづける。
道路は、どんなことをしてでも私たちが生きていく意志でもある。だから、たった一夏放置されただけで雑草の海になった田畑の中を、誰一人とおる者のない空っぽの道路がのびている時、その場所は今でも私たちの意志さえゆるさない、恐怖が支配しているということだ。
カラー約60点。

作者のプロフィール

写真

1960年埼玉県生まれ。早稲田大学文学部卒業。日本写真芸術学会会員。93年ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ・コミュニケイションズMA。95年第6回写真「ひとつぼ展」グランプリ受賞。
写真展に、96年「飛地の外の風景―成田空港周辺―」(銀座ガーディアンガーデン)、2010年「道路」(銀座ニコンサロン)などがある。
公式サイト http://jpgarden-jpfan.blogspot.com/

会場写真

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MOTOKO

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田園ドリーム
3/28 (水) ~4/10 (火)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

日本の美しい田園風景。それは、日本人の細胞ひとつひとつに刷り込まれた「夢」だと思う。身土不二ということばがある。風土と身体はひとつ、という意味だ。友人の農家は言った。川の水はわたしの血、そして土は肉体なのです、と。
…21世紀に入り、作者は、ただ前進をすることのしわ寄せをひしひしと感じていた。このままでは日本のこころのふるさとは風化するだろうと。そんな頃、農村で多くの人々に出会い、かつてない驚きを感じた。彼らの自然に対する畏怖や感謝のかたち。他者による評価など全く必要としない、純粋で強い美しさ。時代とともに形骸化しつつあるものの、まだまだその精神は生きている。この物語の舞台となったのは、琵琶湖のある滋賀県である。故郷・大阪からそう遠くないにもかかわらず、そこは未知の国であった。カラー約50点。

作者のプロフィール

1966年大阪に生まれ。90年大阪芸術大学美術学科卒業。92年から3年間渡英後、96年よりフォトグラファーとしてのキャリアをスタート。2009年より田園ドリームの展覧会を定期的に関西で開催 。同年、農林水産省HP連載「The 田園」。2010ライター井上英樹氏とともに活動する「田園ドリームプロジェクト」がロハスデザイン大賞を受賞。写真集に『Day Light』『First Time』『京都』などがある。

ギャラリートーク開催のお知らせ

作者と、ライター・タカザワケンジ氏によるギャラリートークを下記の通り写真展会場にて開催いたします。
ぜひご参加下さい。

日時:4月8日(日)18:30~20:00
会場:銀座ニコンサロン
※入場無料・予約不要です。当日は直接会場にお越し下さい。


「いまなぜ田園写真か?」

昨年の大震災が提起した問題が数多いが、なかでも「食の安全」についてはまさに眼前の問題として私たちの生活をおびやかした。
しかし、考えてみればそうした問題は大震災以前から十分に認識されていたことではなかったか。私たちはその現実から目をそらして来たのだと思う。
MOTOKOが数年間にわたって撮影を続けてきた「田園写真」とは、そのような「見えない問題」を写真によって再認識させようとする試みである。私たちの食卓にのぼるものを作っている人たちはどんな人たちか。彼らがものを生み出している場とはどんなところか。そこにはどんな文化が根付いているのか。
これらの写真はすべて、私たちが生きることに関わっている。

タカザワケンジ  ライター/編集者
1968年群馬県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。97年からフリー。「PHOTOGRAPHICA」「日本カメラ」「アサヒカメラ」などで写真家のインタビュー、撮影ルポ、写真集評を執筆。「アサヒカメラ」の連載「今日の写真」の構成、「週刊新潮」の連載「二人の写真家が見た“3.11からの1年” 藤原新也×ホンマタカシ」の企画編集ほか。

会場写真

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