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2023年7月の星空

宵の明星は今月でいったん見納め。その最後を飾るのは、火星・レグルスとの共演です。梅雨の晴れ間の夕空で3つの星を探してみましょう。宵の東天には夏の大三角が昇ります。織り姫星ベガと彦星アルタイルの輝き、その間を流れる天の川、見たり撮ったり想像したりしてみてください。

星空写真

愛知県田原市弥八島 ロングビーチにて
太平洋岸に珍しく、夜光虫の青い帯が見られました。星の色にこだわって画像処理をしています。さそり座のアンタレスの赤が非常に気に入っています。

2022年7月29日 21時53分
ニコン D810A+AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED(20mm、ISO8000、露出15秒×16枚を合成、f/2.8)
撮影者:石橋 直樹

7月の星空

南の空

南の空

2023年7月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、上弦(26日)、満月(3日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2023年7月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。

天文カレンダー

1日(土) このころ、夕方~宵に金星と火星が接近(「今月の星さがし」で解説)
夕方~翌2日未明、月とアンタレスが大接近
3日(月) 満月。次の満月は8月2日です
7日(金) 七夕(「今月の星さがし」で解説)
深夜、月と土星が並ぶ
10日(月) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
このころ、夕方~宵に火星とレグルスが大接近(「今月の星さがし」で解説)
12日(水) 未明~明け方、月と木星が大接近(「今月の星さがし」で解説)
14日(金) 未明~明け方、細い月とプレアデス星団が並ぶ
16日(日) このころ、夕方~宵に金星とレグルスが接近(「今月の星さがし」で解説)
18日(火) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
19日(水) 夕方、細い月と水星が接近
20日(木) 夕方、細い月と金星が並ぶ
夕方、月とレグルスが接近
21日(金) 夕方~宵、細い月と火星が接近
25日(火) 夕方~宵、月とスピカが接近
26日(水) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)
28日(金) 夕方~深夜、月とアンタレスが接近

7月の惑星

水星

中旬から、夕方の西北西の低空に見えます。

日の入り30分後(東京で19時30分ごろ)の高度は6度前後とかなり低く、観察の難度は高めです。やや離れていますが左上に金星が輝いているので、位置関係を手掛かりにして水星を探してみましょう。水星も0等級より明るく肉眼でも見えますが、双眼鏡を使うとより見やすくなります。

19日に月齢2の細い月と接近します。

金星

「宵の明星」として、夕方から宵の西の低空に見えます。

日の入り1時間後(東京で20時ごろ)の高度は、上旬に約15度、中旬に約10度と、どんどん低くなっていきます。マイナス4.5等級ととても明るいとはいえ、建物や山並みに隠されると見えないので、空が暗くなりはじめたら早めに、少しでも高いうちに探してみましょう。

上旬に火星と接近、中旬に「しし座」のレグルスと接近します。金星が、火星やレグルスを見つける良い目印になってくれそうです。「今月の星さがし」を参考にして、日々並び方が変わる様子をお楽しみください。また、20日には月齢3の細い月と並びます。

火星

「しし座」にあり、夕方から宵の西の低空に見えます。明るさは約1.8等級です。

日の入り1時間後(東京で20時ごろ)の高度は10~15度ほどとかなり低く、金星ほど明るくもないので、暗くなりきっていない空の中で見つけるのは少し難しいかもしれません。金星との位置関係を手掛かりにして探してみましょう。

上旬から中旬にかけて、金星や「しし座」のレグルスと接近します。「今月の星さがし」を参考にして、日々並び方が変わる様子をお楽しみください。また、21日には月齢4の細い月と接近します。

木星

「おひつじ座」にあります。0時ごろに昇ってきて、日の出1時間前(東京で3時30分ごろ)に東の空に見えます。明るさは約マイナス2.3等級です。

時間帯の点では見やすいとは言えませんが、高さや明るさの点では問題なく見ることができます。土星とあわせて楽しみましょう。天体望遠鏡をお持ちであれば、縞模様や4つのガリレオ衛星も観察してみてください。ガリレオ衛星は双眼鏡でも見えるかもしれません。

12日の未明から明け方、月齢24の下弦過ぎの月と大接近します。接近の様子は肉眼でよくわかるので、早起き(または夜更かし)してぜひご覧ください。

土星

「みずがめ座」にあります。21時ごろに昇ってきて、0時ごろに南東の空のやや低いところ、3時ごろに南の空に見えます。明るさは約0.7等級です。

周りに明るい星が少ないエリアに位置しているので目立ちます。天体望遠鏡で環を観察してみましょう。見え方がかなり細くなっていることがわかります。

7日の深夜に月齢19の下弦前の月と並びます。

今月の星さがし

夕方の西の低空に、金星・火星・1等星レグルスが集まっています。日々変化していく並び方や、それぞれの明るさの違いなどを確かめてみましょう。

金星・火星・レグルスが夕空に集合

今年の前半に夕方の西の空で輝いていた一番星の金星は、今月で一度見納めです。見かけ上、太陽と近くなるためで、来月の終わりごろからは「明けの明星」として夜明け空に見えるようになります。

「宵の明星」としての今シーズン最後の見どころは、火星、「しし座」の1等星レグルスとの集合です。それぞれの最接近は、金星と火星は7月1日ごろ、火星とレグルスは10日ごろ、そして金星とレグルスは16日ごろです。日々、並び方が変わる光景が楽しめますので、最接近にだけ注目するのではなく機会があるたびに眺めてみましょう。撮影などで変化の様子を記録に残すのも面白そうです。

6月25日から7月19日まで3日ごとの、日の入り1時間後の金星・火星・レグルスの位置(場所の設定は東京)。円は拡大イメージ(それぞれ視野6度)。

金星も含めてかなり低いので、西の空が地平線付近までよく見渡せる場所で観察することがポイントです。火星とレグルスは空の明るさに負けてしまい見づらいかもしれませんが、「夕空での最後のひと仕事」とばかりに金星が輝いているので、これを目印にすれば火星とレグルスの位置も見当がつけられるはずです。双眼鏡を使うと見やすくなり、とくに6日から16日ごろまでは3天体が双眼鏡の同一視野に見えます。

明るさの差だけでなく、金星の金色、火星の赤っぽさ、レグルスの青白さという色の違いもわかれば、さらに印象深い光景になりそうです。低空の大気の影響や薄明の影響のため、天体の色を感じるのはやや難しそうですが、意識しながら観望をお楽しみください。

七夕

7月7日は七夕。秋のお月見とともに、日本で古くから人々に親しまれている天文行事です。七夕伝説では一年に一度この日だけ、「織り姫星(織女星:しょくじょせい)」と「彦星(牽牛星:けんぎゅうせい)」が川を渡って会うことを許されています。伝説に登場する「織り姫星」は「こと座」のベガ、「彦星」は「わし座」のアルタイルという星です。

ベガとアルタイルは「夏の大三角」と呼ばれる星の並びを形作っています。宵のころに東の空に見える3つの明るい星のうち、一番高く一番明るいのがベガ、ベガから右下に離れたところにあるのがアルタイルです。ベガの左下にあるもう一つの星は「はくちょう座」の1等星デネブで、この3つの星で夏の大三角です。3つとも1等星なので、街中からでも見つけられるでしょう。

7月7日 夜21時の東の空の様子(場所の設定は東京)。街中でも織り姫星ベガと彦星アルタイルは見つけられる

この夏の大三角を通り抜けるように、北から南へと天の川が流れています。七夕伝説では、織り姫星と彦星は川の反対岸にいることになっていますが、実際の空でもベガとアルタイルの間に天の川が流れているというわけです。街明かりや月明かりがなければ天の川も見えるかもしれません。

多くの地域では7月7日は梅雨の真っ最中なので、当夜は晴れていないかもしれませんが、織り姫星と彦星(天の川も)は七夕以外の日にも見えます。晴れた夜には空を見上げ、2つの星や夏の大三角を探してみてください。日付や時刻が変わると3つの星の高さや位置関係が異なって見えることがありますが、「3つのうち一番明るいのがベガ、ベガから遠く2番目に明るいのがアルタイル、ベガに近く一番暗いのがデネブ」と覚えるとわかりやすいでしょう。

旧暦に基づいた「伝統的七夕」(日付は毎年変わり、今年は8月22日)のころには梅雨が明けて晴れることが多いので、織り姫星と彦星がさらに見つけやすくなります。七夕から伝統的七夕までの約1か月半の間、とくに意識してこれらの星たちを見上げてみてはいかがでしょうか。

12日未明~明け方、月と木星が大接近

月と惑星の接近は街中でも見ることができ、肉眼で見えるので気軽に楽しめる天文現象です。今月は「7日深夜:土星」「12日未明~明け方:木星」「19日夕方:水星」「20日夕方:金星」「21日:火星」と5回のチャンスがあります。時間帯や高さ、離れ具合などそれぞれに異なるので、晴れていたら1回でも多く観察して見比べてみましょう。

7月12日3時の、東の空の様子(場所の設定は東京)。大きい円は拡大イメージ(視野6度)、小さい円はさらに拡大したイメージ(正立像、月と木星で拡大率は異なる)

5回のうちでとくに見逃せないのが、12日未明から明け方に起こる月と木星の共演です。木星が明るいことと、天体の間隔が近いことがポイントです。1時ごろから夜明けまでという点でややハードル高めですが、少し夜更かしして、もしくは早起きして観察してみましょう。天体望遠鏡で月と木星をそれぞれ拡大したり、木星の衛星(=木星の「月」)を見たりするのも面白そうです。季節がら、思った以上に早く夜が明け始めるので、明るくなり青みを増してきた空の中でも月のそばに木星が見えるかもしれません。何時ごろまで見つけられるか、ぜひ挑戦してみてください。

今月の星座

ヘルクレス座

「ヘルクレス座」は7月中旬の夜21時ごろに頭の真上に広がる星座です。全天88星座のうち5番目に広いのですが、3等級より暗い星ばかりなので、街中で見つけるのは少し難しいかもしれません。

「ヘルクレス座」(星団の画像クレジット:ESO DSS2 (AURA))

「ヘルクレス座」を見つける目印となるのは、「うしかい座」のアルクトゥールスと「こと座」のベガという2つの1等星です。この2つの間あたりに広がる、アルファベットのHの字のような星の並びを探してみてください。南が頭で北に足があるイメージです。

ギリシャ神話では怪物退治など12の冒険を成し遂げた英雄ヘルクレス(ヘラクレス)とされています。彼がたたかった相手なども「しし座」「うみへび座」「かに座」「りゅう座」といった星座になっています。その活躍ほどには目立たない星座ですが、天頂から地上を見下ろす姿は堂々としています。ぜひ全身をたどってみましょう。

ラスアルゲティ

ヘルクレスの頭の位置にある3等星ラスアルゲティ(「ひざまずく者」という意味の言葉に由来)は、太陽の約800倍もの大きさを持つ巨大な星です。赤っぽい色をしていて、隣に並ぶ「へびつかい座」の白い2等星ラスアルハゲとの対比は美しい眺めです。双眼鏡を使って観察すると色がわかりやすくなるでしょう。

また、ラスアルゲティを天体望遠鏡で観察すると二重星であることもわかります。

球状星団M13

「ヘルクレス座」の右腰あたりには有名な球状星団M13があります(Mはカタログの符号)。

球状星団とは、数万~数十万個の星々が球状に集まった天体です。M13はその中でも大きく明るいもので、空の条件が良いところでは肉眼でも存在がわかるほどです。頭の真上に昇ったころであれば、街中からでも双眼鏡でボンヤリとした小さな丸い姿が見つけられるでしょう。天体望遠鏡で観察すれば、さらに壮観です。星図を参考にして、ぜひ見つけ出してみてください。

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は7月中旬の深夜1時ごろの星空です。8月中旬の深夜23時ごろ、9月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます)。

2023年7月中旬 深夜1時ごろの星空

織り姫星ベガと彦星アルタイルが空の高いところに見えます。街明かりや月明かりがなければ、七夕伝説のとおりベガとアルタイルの間を流れる天の川も見えるはずです。見えなくても確かにそこにあるので、想像してみてください。

南東から東の空には秋の星座が昇ってきています。明るい星が少ない領域にあって、「みずがめ座」の土星と「おひつじ座」の木星はよく目立ちます。これらの惑星の本格的な見ごろは秋以降ですが、夏の深夜に一足先に楽しんでみるのも良いでしょう。天体望遠鏡でも観察したいですね。

まだ梅雨が明けていない地方もありそうですが、晴れた夜には5分でも10分でも、星空を眺めてみてはいかがでしょうか。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

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