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2022年11月の星空

8日の宵に皆既月食が起こります。時間帯や高さが好条件で見やすい、大注目の現象です。月食中に天王星が月に隠されるという、とても珍しいイベントもあります。観察計画を立てて、しっかり準備して楽しみましょう。

星空写真

長野県 八千穂高原にて
1年前の2021年11月19日、最大食分0.97という「ほぼ皆既月食」の部分月食が楽しめました。今年も11月に、今度は正真正銘の皆既月食が起こります。冴えわたる夜空に輝く赤銅色の月を眺めるのはいかがでしょうか。

2021年11月19日 18時3分
ニコン Z 7+FTZ+AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR+TELECONVERTER TC-14E III(560mm、ISO100、露出2秒、f/5.6)
撮影者:高岡 誠一

11月の星空

南の空

南の空

2022年11月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、上弦(1日:やぎ座/30日:みずがめ座)、満月(8日、月食中)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2022年11月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。

天文カレンダー

1日(火) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)
4日(金) 宵~翌5日未明、月と木星が接近
5日(土) 夕方~宵、月と木星が並ぶ
7日(月) 立冬(こよみの上で冬の始まり)
8日(火) 満月。次の満月は12月8日です
18時過ぎから22時前にかけて、皆既月食(「今月の星さがし」で解説)
20時30分ごろから21時30分ごろにかけて、天王星食(天王星が月食中の月に隠されます。「今月の星さがし」で解説)
11日(金) 宵~翌12日明け方、月と火星が大接近(「今月の星さがし」で解説)
13日(日) 宵~翌14日明け方、月とポルックスが接近
16日(水) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
17日(木) 未明~明け方、月とレグルスが接近
21日(月) 未明~明け方、細い月とスピカが並ぶ
24日(木) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
29日(火) 夕方~宵、月と土星が接近
30日(水) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)

11月の惑星

水星

太陽に近いため、見えません。

次は12月中旬ごろから、夕方の南西の低空に見えるようになります。

金星

太陽に近いため、見えません。

次は12月中旬ごろから、夕方の南西の低空に見えるようになります。

火星

「おうし座」にあります。18時ごろに昇ってきて、22時ごろに東の空、0時ごろに南東の空の高いところに見えます。明るさは約マイナス1.5等級です。

12月1日の地球最接近を目前にして、明るさや赤っぽい色がいっそう目立つようになってきました。「おうし座」のアルデバランや「オリオン座」のベテルギウスなど赤い星と見比べてみましょう。天体望遠鏡で観察すると、表面の濃淡などの模様がわかるかもしれません。

11日の宵から12日の明け方にかけて、満月過ぎの明るい月と大接近して見えます。

木星

「うお座」にあります。18時ごろに南東の空、20時ごろに真南の空の高いところに見え、2時ごろに沈みます。明るさは約マイナス2.7等級です。周りに明るい星が少ないので、とくに目立って見えるでしょう。

宵の見やすい時間帯に見やすい高さにあり、観察のチャンスです。肉眼や双眼鏡では4日と5日に、満月前の明るい月との共演が楽しめます。

天体望遠鏡では縞模様や4つのガリレオ衛星が見ものです。ガリレオ衛星の並び方が日々変化する様子は何度見ても面白いものなので、ぜひ観察してみてください。

土星

「やぎ座」にあります。18時ごろに真南の空に見え、23時ごろに沈みます。明るさは約0.7等級です。

木星と同様に宵の時間帯に見やすい高さにあり観察の好期ですが、21時ごろには低くなってしまいます。早めの時間帯に、天体望遠鏡で環を観察してみましょう。

29日の夕方から宵にかけて、月齢5のやや細い月と接近します。こちらは肉眼や双眼鏡でよく見えるので、気軽にお楽しみください。

今月の星さがし

8日の皆既月食は今年一番の注目現象。見やすい時間帯に見やすい高さで起こり、長く続くので見応えもあります。さらに、月食中の赤い月が天王星を隠すという珍しい現象も起こります。一生に一度レベルのレアイベントをお見逃しなく。

8日宵 皆既月食

月が地球の影の中に入って暗くなる現象が月食です。地球の影は太陽の反対方向に伸びているので、月食は必ず、月が太陽の反対にあるとき、つまり満月のタイミングで起こります。ただし逆に、満月なら必ず月食になるわけではありません。今月8日の月食は、日本で見えるものとしては昨年11月以来(地球全体で見ると今年5月以来)の現象です。

月が欠け始める(部分食の始まり)は18時9分ごろで、東の空のやや低いところにある月の左下が暗くなっていきます。その後、月は高度を上げながらどんどん大きく欠けていき、19時17分ごろに月全体が地球の影に入ってしまう「皆既食」の状態になります。東の空の高度30度前後と、見やすい高さです。

11月8日 18時から22時までの東の空の様子(場所の設定は東京)。囲み内は月のクローズアップ。全体の図で月は大きめに描いている

地球の影の中に入った月は見えなくなりそうに思われますが、実際には影の中の月にも光が届くので、皆既食の間も月は見えます。このとき赤い光のほうが(青や緑よりも)届きやすい性質があるので、皆既食の満月は赤やオレンジ、茶色っぽい色に見えることが多いです。今回の月食では月の下のほうに「おうし座」のアルデバランや火星など赤っぽい天体があり、「赤の共演」が見られるでしょう。皆既食は約85分間、つまり約1時間半も続きますので、たっぷりと楽しめます。

20時42分ごろに皆既食が終わると満月の色と明るさが元に戻り始めます。そして21時49分ごろに月食が終わり、南東の空60度ほどまで高くなった丸く白い月が夜空を照らします。全体では3時間40分の長丁場となるので、適度に休憩しながら観察しましょう。なお、月食の進み方は月が見えるところであれば、世界中どこで観察しても同じタイミングで同じように見えます(月の高さや方位は場所によって変わります)。

月食の観察に特別な道具は必要ありません。月の色や形が変わっていく様子は肉眼でもよくわかりますので、気軽に眺めましょう。双眼鏡や天体望遠鏡があれば微妙な色の違いなども楽しめます。忙しい場合や天気に恵まれなかった場合には、インターネット中継を見るという方法もあります。

平日ではありますが夜更かしをする必要がなく、月の高さがちょうど良く、長時間見ることができる(=見られるチャンスが多い)という、とても条件の良い皆既月食です。事前の準備をしっかりしたうえで、当日は好天に恵まれますように。

月食中の天王星食

月食が起こっている8日の宵、同時にもう一つ別の食現象が起こっています。月が天王星を隠す「天王星食」です。つまり、地球の影の中に入って欠けている月が、背後にある天王星を隠すという現象です(厳密な天文用語では食ではなく掩蔽(えんぺい)と呼びます)。遠く離れたところから眺めると、太陽・地球・月・天王星がほぼ一直線に並んでいる状態ということになります。

札幌・東京・大阪・福岡で見た天王星食の様子

天王星が月に隠されるのは20時30分ごろ、月から出てくるのは21時30分ごろです。月食は全国で同時進行ですが、天王星食は見る場所によって、月に隠れる/月から現れる時刻が異なります。つまり、天王星食が起こるタイミングでの月食の進行具合(月の欠け具合)も見る場所によって変わるということです。また、月の縁のどこに隠れてどこから現れるかも異なります。それぞれの瞬間を見たい場合には、シミュレーションなどでよく調べておきましょう。

天王星の明るさは約6等級で、双眼鏡や小型の天体望遠鏡でもじゅうぶん見ることができます。普通は明るい月がそばにあると天王星はとても見づらくなりますが、月食で暗くなっているので見やすいのです。ただし、出現時には月の明るさがかなり戻っているので、双眼鏡ではやや見えにくいかもしれません。天王星が月から出てくる時は「どこから」というのがわかりにくいこともあり難易度が高いので、天王星が月に隠される時をしっかり見届ける、というのを第一目標として観察してみましょう。

食そのものは一瞬ですが、天王星が隠される前と出てきた後も欠けた月と天王星は大接近していて、隠される前は月の左下に、出てきた後は月の右に天王星が見えます。月食中の月に惑星が隠される現象は次回は80年以上先と非常に珍しい現象ですが、月食中に月と惑星が大接近しているというだけでも、なかなか見られるものではありません。ぜひご覧になれますように。

11~12日 月と火星が大接近

12月1日に2年2か月ぶりに地球と最接近する火星が、宵空で目立っています。月や木星には負けますが、その他のどの星よりも明るく輝いていて目を引きます。さらに、特徴である赤っぽい色が火星の存在感をいっそう際立たせています。火星の近くに見える星々、「おうし座」の1等星アルデバランや「オリオン座」のベテルギウスと色や明るさを比べてみましょう。一口に「赤っぽい」と言っても違いがあるので、橙や紅、朱など様々な感じ方ができるかもしれません。

11月11日21時の東の空の様子(場所の設定は東京)。大きい円は拡大イメージ(視野3度)、小さい円はさらに拡大のイメージ(正立像、月と火星で拡大率は異なる)

11日の宵から12日の明け方にかけて、この火星の近くに明るい月がやってきます。月3個分ほどの間隔まで近づき、見応えがあるでしょう。肉眼でもじゅうぶん楽しめますし、双眼鏡を使うとさらに迫力が増します。見かけの大きさは月のほうが約110倍大きいのですが、言い換えるとこれは「110倍の天体望遠鏡で火星を見ると、肉眼で見た月と同じ大きさになる」ということになります。望遠鏡をお持ちであれば、ぜひ月と火星の両方に向けてみてください。

火星だけでなく、木星(0時ごろまで)と土星(20時ごろまで)も見ごろが続いています。月との接近(木星は4日と5日、土星は29日)を眺めたり、望遠鏡で模様や環を観察したりと、これらの惑星たちも併せて楽しみましょう。

今月の星座

うお座

2月下旬から3月中旬ごろに誕生日を迎える人の星座として名前が知られている「うお座」、宵空で見やすいのは11月ごろです。11月中旬の21時ごろに、南の空の高いところに見えます。

「うお座」(銀河の画像クレジット:ESO DSS2 (AURA))

「うお座」は一番明るい星でも4等星なので、街中で見つけるのは難しい星座です。空が暗いところでも、月明かりがある夜には見つけられないかもしれません。双眼鏡などを使って1つずつ星を探してみましょう。

「うお座」を見つける目印となるのは、周囲に広がる星座に含まれる2等星(星図中にカッコ付きで名前を書いている星々)や、アルフェラッツとマルカブを含む「秋の四辺形」です。「うお座」の星々は、秋の四辺形の東側(南を向いて四辺形の左)と南側(四辺形の下)の辺に沿うように並んでいますので、位置の見当をつけてみてください。南西側は、今年は木星が目印になるでしょう。

星座の絵には2匹の魚が描かれていますが、神話の一つによれば神の親子が変身した姿とされています。2匹の尾をつなぐリボンは親子が離れ離れにならないように結んだもの、とする説もありますが、由来ははっきりしていません。

渦巻銀河 M74

北側に伸びる星の列の中ほどあたりに、渦巻銀河のM74があります(Mはカタログの符号です)。地球から見ると正面に渦(腕)があり、美しく整った形が楽しめますが、とても暗いため実際の空で見つけるには熟練した技術や鋭い観察眼が必要で、「幽霊銀河」というニックネームが付けられているほどです。インターネットに公開されている画像や写真集などで楽しむのがおすすめです。

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は11月中旬の深夜1時ごろの星空です。12月中旬の深夜23時ごろ、来年1月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。

2022年11月中旬 深夜1時ごろの星空

深夜になると街明かりが減り、暗い星も見やすくなるのですが、それでも西から南西の空には木星以外に目立つ星がなく、寂しく感じられます。目を凝らして「秋の四辺形」や「うお座」を探してみましょう。

対照的に頭の真上から南東の空には「オリオン座」や「冬の大三角」などを形作る明るい星々が色鮮やかに輝き、とても華やかです。今年は火星も加わって、いっそう派手な印象です。また、東の空に「しし座」、北東の空に「北斗七星」が見え始めました。どちらも地平線から立ち上がって格好良く見えますね。

深夜にはすっかり冬の寒さです。暖かい服装で健康安全に、星空をお楽しみください。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

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