NIKON

明るくなるウィルタネン周期彗星をWXで楽しむ

塩田 和生

Kazuo Shiota

天文歴56年、皆既日食を追って46年のベテラン天文家。長年勤めていたフィルム会社でミニラボシステムなどの開発に携わりつつ、日食や月・太陽などを中心に、天体写真全般の撮影・画像処理方法を開発。現在も最前線で活躍中。天文誌などで解説記事を多数執筆。

異次元の星空に出会える双眼鏡

 私は、中学生の時に望遠鏡を手に入れてからは月をはじめに、太陽・惑星・星座・流星・星雲や星団・日食などを眺めたり撮影したりしながら、天文ライフを楽しんできました。天体の姿をもっと詳細に見たくて望遠鏡の口径はだんだん大きくなりましたが、一方で、双眼鏡も口径や倍率が違う機種を何台も買いそろえました。そして、撮影に行くときには必ず双眼鏡も持参して、撮影の合間にお気に入りの天体を眺めることを楽しんでいます。空がきれいな場所で双眼鏡を使って眺める星空は、今その瞬間に届いた光で宇宙とつながっている感覚があり、また、瞬時に向きを変えながら眺められるので、写真とは違う感動があります。特に、皆既日食のコロナや尾を引く大彗星など、その時にしか見られない天文現象の場合、双眼鏡の視野に浮かぶ姿にはいつも大きな感動を覚えます。
 今回、ニコンWXの7×50と10×50を見る機会を得、好天に恵まれた入笠山で天の川やジャコビニ・チンナー周期彗星を眺め、これまで手にしてきた双眼鏡とは次元の違う星空に圧倒されました。広視野であるために抜けが良い星空が視界一杯に広がり、全面均一な星像は、実に気持ちのいい見え味です。

 天の川に沿って双眼鏡の向きを変えていくと、最近の天体写真のように天の川の濃淡がよくわかり、ところどころに点在するメシエ天体が次々にくっきりと見えてきました。
 ふたご座を移動中だったジャコビニ・チンナー周期彗星は、肉眼では見えない7等級でしたが、WXの視野の中では淡い尾がはっきりとわかり、7等級の彗星がこれだけきれいに見えるので、2018年末から年明け以降も明るく見やすいウィルタネン周期彗星は、すばらしい姿で眺められます。
 7×50と10×50の違いでは、7×50は圧倒的な視野の広さ、10×50は散開星団を見た時の星々の分離が印象的でした。どちらも素晴らしいので、できれば両方持ちたいところですが、どちらか選べと言われたら、私の場合はより大きく見える10×50に軍配を上げます。
 私は、来年には70歳になり、視力の衰えが心配な年齢になり、大彗星や日食などをあと何回見られるかわかりませんが、素晴らしい天文現象を脳裏に焼き付けておくためにも、ぜひ持っておきたい双眼鏡だと思います。

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美しい星空のタイムラプス動画を、Youtubeにて公開中。

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