JUNJI TAKASAGO THE PLANET 高砂淳ニ 母なる地球を巡る

Season1|中国
– 山水画の奇観・張家界 –

張家界市は湖南省にある観光都市で、武陵源や天門山などの景勝地を含んでいる。 中でも「武陵源の自然景観と歴史地域」はユネスコの世界遺産(自然遺産)に登録されており、 高さ200mを超える岩の柱が3100本以上も林立する奇景で知られている。 中国での撮影地を検討していたとき、中国通の知人に新たに人気が高まっている場所を尋ねたところ、 真っ先に教えてくれたのがこの張家界だった。 試しにとネットで調べてみると、武陵源の奇岩に目がとまり、心底驚かされた。 そこには人間の叡智を超える雄大で荘厳な情景が存在していた。 僕は迷うことなく、張家界を撮影地に選んだ。

中国の自然遺産-九寨溝・黄龍・張家界-

アバターの世界

「アバターの世界」

映画“アバター”はこの張家界で撮影されたそうだ。作中に出てくる山があまりにも凄い地形だったので、架空のものとばかり思っていた。そのモデルとなったのが実在する場所だと分かった時、自分の目で確かめてみたいと思った。 実際その場に立った時に目に入ってきた光景はあまりにも現実離れしていて、文字通り言葉を失ってしまった。この世のものと思えないような岩の柱が無数に林立している様子に、ただただ圧倒される。自然が創りだすものは、人間の想像力を楽々と超えてしまう。このときの畏怖にも似た感動を、多くの人と共有したいと思った。

<撮影の裏側で>

張家界の象徴としての奇岩群の迫力を伝えたかった。遊歩道から突き出しているデッキから手が届くほどの近さに、岩の柱が何本も迫っている。圧倒的な景観を写真に収めるために、AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VRの広角端で撮影した。超広角での撮影にも関わらず、画面の周辺での光量落ちが抑えられ、周囲の岩肌や木々の緑まで忠実に撮ることができた。最もインパクトある岩が天を指してそそり立つ雄大な光景も、超広角ならではの迫力あるアングルで表現できた。

カメラ:D810 レンズ:AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/100秒、f/8 焦点距離:16mm ホワイトバランス:晴天 ISO感 度:400 ピクチャーコントロール:ビビッド

張家界の住人

「張家界の住人」

森を歩いていると、ときどきワサワサっと、木々を揺らす音が聞こえてくる。張家界の住人である猿たちが枝から枝へと渡っている音だ。自然の中に少し入り込んだだけなのに、こちらは葉っぱに足を取られたり、枝でひっかき傷を作ってしまったりと大変なあり様。それに比べて猿たちは、木の枝を味方につけて自由自在に森を渡り、悠々と暮らしている様子だった。 張家界の独特な岩山をバックに、そんな場所でたくましく暮らす生命を撮りたいと思った。

<撮影の裏側で>

野生の猿を撮影するため、森に分け入った。D810は、最高レベルの画質とともに、機動性の高さも大きな魅力。このクラスとしてはコンパクトで、グリップを握ったときの感触や安定感も良い。さらに優れた防滴・防塵性能で、天気が変わりやすい山中での撮影にも安心だ。おかげで雨上がりの濡れた地面に足を取られ、行く手を木々に阻まれながらも、野性味あふれる姿を捉えることができた。さらに、D810とAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRの組み合わせによる優れた解像力で、猿の鋭い目つきや少し水に濡れた柔らかそうな毛並みまで忠実に再現できた。

カメラ:D810 レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/800秒、f/6.3 焦点距離:70mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:400 ピクチャーコントロール:ビビッド

無限の山々

「無限の山々」

遠くの山々を張家界の頂上から望む。標高の低いところに靄(もや )が溜まり、連なる尾根だけがくっきりと現れて折り重なっていた。人を寄せ付けない自然がどこまでも続いているように見え、地球の雄大さが改めて感じられた。 一見、人が住めないように見える土地にさえ様々な動物や植物が生息し、野生のサイクルを作り上げているのだろう。撮影をしている間に、ふとそんな思いが頭をかすめた。

<撮影の裏側で>

太陽が沈む頃、どこまでも連なる山々のふもとに靄(もや )がかかり始め、水墨画のような幽玄の世界が広がっていた。全体にブルーがかった風景の中で、白っぽい谷間から山頂まで、微妙なトーンを再現するグラデーションの豊かさは、さすがD810だと思わせる。画像を拡大して見ると、ふもとにはうねった道や家屋など、わずかに人の生活の気配さえも見て取ることができる。このカメラの優れた描写力を改めて認識することができた。

カメラ:D810 レンズ:AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/320秒、f/5.6 焦点距離:70mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:400 ピクチャーコントロール:ビビッド

張家界の朝日

「張家界の朝日」

林立する岩山の合間に雲が立ち込めている幻想的な写真を多く目にしていたので、僕もそうしたシーンを撮りたいと思った。現地の人に聞くと、前日の夜に雨が降った次の日の朝にそのような光景が見られることがあるという。そこで、張家界の山頂にある民宿に泊まり、早朝から朝日が眺められる場所に向かった。 前夜に雨が降らなかったので雲は全くなかったが、それでも朝日が山々の合間からまばらに差し込み、ところどころに立ち上がる岩山に当たっている様子がとても美しかった。偶然出会うことができた、期待以上の絶景だった。

<撮影の裏側で>

遠くの山から昇った朝日が雲間から顔を出した。その瞬間の空の色合いや山肌と木々の質感など、目に映るもの全てを余すことなく表現したかった。こうした撮影では、D810のダイナミックレンジの広さが生きてくる。鮮やかに輝く太陽から日陰の山を覆う森まで、明暗の差が大きい場面をリアルに写し取ることができた。また、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRのナノクリスタルコートの効果で、逆光での撮影にも関わらずゴーストやフレアが良く抑えられて、雄大な光景を美しく再現することができた。

カメラ:D810 レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:絞り優先オート、1/160秒、f/5.6 焦点距離:24mm ホワイトバランス:プリセットマニュアル ISO感度:800 ピクチャーコントロール:ビビッド

山頂の星々

「山頂の星々」

張家界の天子山頂上は標高1200mほど。そこには市内の街灯りはまるで届かず、星々の世界に迷い込んでいるような感覚になる。 そびえる木々はまっすぐ天空に向け伸びて宇宙と繋がっているように見え、ピーンと張りつめた冷気はあたり一面を神聖なものに変えているようでもあった。


カメラ:D810 レンズ:AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:マニュアル、30秒、f/4 焦点距離:16mm ホワイトバランス:電球 ISO感度:4000 ピクチャーコントロール:ビビッド

天門山

「天門山」

張家界市内から10kmほどのところに天門山がある。紀元263年に強い地震がありこの洞窟が出来上がったと言われているが、この穴は高さ131mととてつもなく巨大だ。 このような大きく不思議な造形を目の当たりにすると、その背後には何か目に見えない力が働いているように思えてくるから不思議だ。


カメラ:D810 レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR 画質モード:RAW(14-bit) 撮影モード:マニュアル、25秒、f/6.3 焦点距離:45mm ホワイトバランス:晴天 ISO感度:200 ピクチャーコントロール:ビビッド

これまでに見たことの無い、
孤高の自然に出逢うために、中国を訪ねた。

少し前に知り合いが、「人間に、”美しいね!”とか、”ありがとう!”とかと言ってもらうことで、”自然”というものはパワーをもらうし元気になるんだよ。高砂さんも今度は、人のパワーをもらっていないような、例えば中国とかに行って、自然を愛でながら、自然にお返しするような気持ちで撮影してくるのもいいかもね。」という話をしてくれた。そんなきっかけで中国がロケ地として浮かび上がることになった。
ところが実際に訪ねた中国の秘境は、ひと気のない荒涼としたイメージとは正反対。高度数千メートルの山奥にも関わらず、ものすごい人がいて賑わっていた。
しかもそこには寺院もあって、修行中の僧侶たちが毎日祈りを捧げているようだった。そんな人間のパワーをたっぷりと受けているからか、山奥にひっそりと存在する神秘的な山々や湖沼は、満ち満ちた美しさをもって目の前に広がっていた。
このごろは風景を撮影するとき、D810を持って行くことが多い。コレの最もいい所は、3635万画素の高精細で撮れて、ボディーが小さいこと。ロケ撮影の場合、カメラバッグに2台入ることが大切だし、三脚も大きいものを持って行けないので、なにより軽いボディーがありがたい。しかもボディーバランスが良くて、手持ちでもめったにブレない。さらにこのクラスでは珍しく、内蔵フラッシュがついている。機材が限られてスピードライトが持てないとき、ボディーにフラッシュがあると、いざという時の大きな強みとなってくれる。
今回大活躍のAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRは、ニコンのまじめなもの造りの代表みたいなレンズで、周辺光量とか、解像度とか、不安無く、隅々までシャープに撮れる安心感がある。光学設計や、フードの形が良く、逆光に強い。
ナノクリスタルコートの効果もあり、ゴーストやフレアなど、気にしたことすら記憶に無かった。

高砂 淳二 高砂 淳二(たかさご じゅんじ)

自然写真家。1962年、宮城県石巻市生まれ。世界中の国々を訪れ、海の中から生き物、虹、風景、星空まで、地球全体をフィールドに撮影活動を続けている。最新作「Dear Earth」(パイ インターナショナル)をはじめ、「night rainbow」「yes」「ASTRA」「虹の星」「free」(以上小学館)、「PENGUIN ISLAND」「そら色の夢」「南の夢の海へ」(パイ インターナショナル)ほか著書多数。 ザルツブルグ博物館、東京ミッドタウン、渋谷パルコ、阪急百貨店など、写真展多数開催。海の環境NPO法人“OWS”理事

オフィシャルウェブサイト
http://junjitakasago.com/

facebook artist page
https://www.facebook.com/JunjiTakasago/

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第3回 ロケ撮影機材リスト

Nikon D810

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