At the heart of the image.

“自分の世界観を描き出す”ためNIKKORレンズに行き着く

写真家 三好和義氏インタビュー

学生時代、広角レンズの描写に魅了される

私が写真を撮り始めたのは小学校5年、11歳の時です。夏休みの間、大阪万博に20日以上通い詰め、ハーフサイズカメラで1000枚以上撮影しました。中学生になると写真部に入り、コンテストに多数入選したこともあって、世界中を旅して写真が撮れるカメラマンになりたいと思い始めました。

ニコンのカメラを初めて使ったのは、水中写真を撮りたいと高校の入学祝いに買ってもらった「ニコノス」です。そのすぐ後には、「ニコンF2 フォトミックS」も使うようになりましたから、ニコンのカメラやレンズとの付き合いはかれこれ40年以上になります。そして1976年、高校2年生の時には、銀座のニコンサロンで、個展「沖縄・先島」を開きました。最年少での個展開催で、今でもその記録は破られていないようです。

ニコンF2はファインダーが取り外せるため、よく外して、上からのぞき込んで撮っていました。レンズは50mmの標準も持っていましたが、24mmが気に入っており、こちらを主に使っていました。もともと広角レンズが好きで、近所の写真屋さんから借りた28mmは肉眼で見るよりも広く撮れるため、面白いと感じていました。

大学2年生の時には海洋学部の練習船「望星丸」に乗り込み、南太平洋を43日間航海し、波だけを撮り、ニコンサロンで個展を開きました。その直後、今度はカリブ海の島を撮影しに行き、14mmを持って行きました。ビーチで撮影したり、花をアップにして後に青空が広がっている写真を撮るのに、この14mmがぴったり。現在も「AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED」を使うことは多いのですが、その時14mmにハマり、気に入ってしまったわけです。

周辺の描写に優れるNIKKORレンズを愛用

自分にとって14mmのレンズは特別な存在。今撮影する時も、大学生の時に使った感覚が蘇り、被写体に対してどの位の距離感で踏み込んだらよいか、海岸を撮る時もどの位のアングルで撮ったらよいか、といったことがパッと直感的に判断できるほどです。

人物撮影でもファインダーを覗くまでもなく、ここからここまで写るだろうと構図がはっきりと頭に浮かびます。ですので、こんな撮り方をしようと、立ち位置を含めて自然とアングルが決められるわけです。

また、デジタルカメラになって、感度も良くなりましたし、濡れたものなど水の質感もよく写るようになりました。機材の進化によって、銀塩カメラで撮影していた時代とは違った楽しさも生まれています。一方で学生の頃は、色々なメーカーのカメラを使っていました。今はカメラ、レンズともに使っているのはニコンだけです。ニコンはシャープな写真が撮れますし、カメラ自体に信頼性がありますので愛用しています。

私がよく使う広角レンズは、周辺部分の描写が重要です。NIKKORだと森の中の風景を撮った時に、画面の端にある一枚一枚の葉まできちんと写ります。プロとして仕事で撮影をするには、そうした描写が不可欠だったため、レンズは自然とNIKKORに絞り込まれていた感じです。現在のNIKKORの14mmの描写もすばらしく、ほぼ開放でとっても隅々まで写ります。こういう優れたレンズで撮れるのは、写真家冥利に尽きると感じています。

「撮りたい世界」に近づくためにレンズを選ぶ

写真を撮る人だったら誰でも、「この1本」という自分の好きなレンズを持つのが大切ではないでしょうか。

例えば、写真クラブに入っている人だと、誰かが推薦したレンズを「右にならえ」で、全員が使うようなことがあります。しかし、レンズは人に勧められたから使うのではなく、自分が撮りたい、表現したい写真から選ぶべきです。私が仮に「14mmがよい」と言ったとしても、かなり特殊なレンズのため、なかなか一朝一夕では使いこなせません。

誰か他の人が撮った写真を数多く見ていると、その中で、「この写真が好きだ」という自分の好みがにじみ出てくるものです。写真の画角だけではなく、絞りの使い方などを参考にして、自分が撮影したい写真の世界観を創り上げていきます。そんなことを考えながら写真を撮ることで、自分の好きなレンズもはっきりしてくると思います。

それでもあえて、私がレンズを1本に絞るとすれば、「AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED」でしょうか。被写体に近寄って撮れますし、誰もが使える万能なレンズです。

現在は、展覧会「日本の世界遺産」に向けた撮影と、学生の頃から続けている“楽園”をテーマにした撮影を世界中で行っています。“楽園”では、南国だけではなくて、エジプトも訪れていますし、次の目的地はバリです。この1~2カ月の間にも、沖縄、モルジブ、タヒチ、セイシェル、スリランカなどを訪問しました。

カメラはニコンの「D5」や「D810」を持って行き、場所に合わせて、さまざまなレンズから取捨選択し撮影しています。デジタルになって夜景のような暗い場所での撮影もしやすくなり、動物なども撮った後にすぐ確認できます。水の透明感や質感もリアルに表現でき、一層撮るのが面白くなりました。これからも“楽園”を探して、優れたカメラとレンズで撮影し続けられるのは、写真家として心からワクワクしますし、楽しいものです。

Pickupレンズ

AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED

(引用元:BRAND PRESS)

三好 和義 ( みよし かずよし )
58年徳島生まれ、85年初めての写真集「RAKUEN」で木村伊兵衛賞を受賞。以降「楽園」をテーマにタヒチ、モルディブ、ハワイをはじめ世界各地で撮影。その後も南国だけでなくサハラ、ヒマラヤ、チベットなどにも「楽園」を求めて撮影。その多くは写真集として発表。「巡る楽園 四国八十八ヶ所から高野山へ」で、第四回藤本四八写真文化賞を受賞。
近年は伊勢神宮、屋久島、仏像など日本での撮影も多い。近著は「京都の御所と離宮」(朝日新聞出版)。日本の世界遺産を撮った作品は国際交流基金により世界中を巡回中。2014年4月からニッコールクラブ顧問。

楽園写真家・三好和義公式ウェブサイト