第70回ニッコールフォトコンテスト

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第4部 TopEye&Kids

ニッコール大賞
推選
特選
入選
応募点数 1,220点
講評 大西 みつぐ

講評 大西 みつぐ

身近な暮らしを素朴に撮られた作品

 第4部の応募作は圧倒的に高校生からの作品。みなさん、それぞれ写真部に所属されているわけですが、最近の「TopEye」などを脇から拝見し感じていたことは、ここ20年ほどのうちに「高校写真界」といった、小説でいえば「文壇」のような世界が自然にでき、顧問の先生方も巻き込み、各地で随分ヒートアップした取り組みが続けられているなということでした。
 過去の作品群と大きく違うのは、実に堂々と「主張」していることにあります。カメラとの直接的な関わり、撮影現場での大胆なアクション、自作自演といった若いみなさんならではの積極的な動きに支えられた作品は表現として溌剌としています。
 しかし、一方で過剰で過激な演出があまりに「さらけ出し過ぎ」ではないかと思うこともしばしばでした。ガチガチに行儀よくとはいいませんが、高校で学んでいるみなさんとしての節度は大事ですし、自分や友人だけでなく、社会を構成している一つとしてみなさんの地域を素朴に見つめる時間ももっと作っていただきたいものだと、かつて「TopEye」の審査を担当していた頃と変わらず私は願っていました。
 そうした願いが少し届いたかもしれないと思えた今回の第4部でした。身近な暮らしを素朴に撮っている作品が、いぶし銀のように光ったのが印象的でした。
 ニッコール大賞の内田莉奈さんの「私の町」がその一つ。自分の町をあらためて凝視することで、ふっと見えてきた愛おしい風景、猫、白鷺、人の温もり。「あーっ、自分はこんな町に今いるんだなぁ」という深い想いに支えられた組写真です。コロナ禍ながら、自分の町で深呼吸しながらシャッターを押している感じがよく表現されています。
 推選の玉村心優さん「冬日之温」も所変われど、わが町と暮らしに寄せる感情が雪模様の風景の中に静かに横たわっています。さらにお弁当だけをしっかり撮っている入選「幸せ」の大谷萌愛さんの写真や「愛し合って55年」の越本悠里さんのストレートなカメラアイも素敵です。身近な同級生を個性的に撮っている「トランペット故障中」の荻朱里さん、「純」の小上馬杏南さん、あるいはセルフポートレイトかもしれぬ「昼下がり」の村島聖琉さんなどの作品も技術的な工夫が見られ大いに評価できます。
 楽しくゆったり撮るというのは基本ではあるのですが、そうはいっても、若いみなさんにも自分はいったい何を撮っていいのかわからないという局面もあるかと思います。特選「暗中模索」の小川結衣さん、入選「42」の萩原律さんの組写真などはそれらに当たるかもしれません。この2作、撮り方も色調もよく似ています。何か共通の想いがあるのかもしれません。自分たちはどこに向かっているのか? そんなことをささやかに問いかけているように感じます。コロナ禍であるないに関わらず、迷い道や分かれ道に際し、しばし自己を見つめてみる機会は大事です。そしてそこにカメラがあれば必ず道も開かれます。なんだかそんなことを表現してくれているようで心の底から共感します。
 カメラと写真はいいものなのです。このニッコールコンテストへの応募のみならず、みなさんにはもっともっとシャッターを押していただき、明日につなげていただきたい。ファインダーから広がる世界は無限です!