第70回ニッコールフォトコンテスト

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第3部 ネイチャー

ニッコール大賞
推選
特選
入選
応募点数 5,392点
講評 三好 和義

講評 三好 和義

2度と撮ることができない貴重な瞬間

 今回も力作揃いで見応えのある審査になりました。全ての審査員が目を通す中で上位が決まっていきます。毎回、意見が分かれ、なかなか決まらないものですが、今回に限っては、すんなりと意見がまとまり大賞が決まりました。大変珍しいことです。
 まず全員が絶賛した佐藤圭さん「生命萌ゆる」。ドラマチックなシーンを組み合わせた見事な作品です。サロベツ原野での撮影ですから、すべて夕日になるのでしょうか。オレンジ色からサーモンピンクに染まる大地に動物たちが小さく、時には大きく配されています。日本で撮ったとは思えないようなスケールに圧倒されました。小さく動物を配したことによって、より雄大さを感じさせます。また幽玄とも思える画面作りが見事です。もう一つ全員の目を引き付けたのは2枚目のオジロワシのカットです。国旗や紋章などに使われる双頭の鷲が太陽に重ねられているのです。これにはマイッタと思いました。信じられない! という感動的な1枚です。ちょうど、2羽のオジロワシが重なったところに夕日が重ねられた奇跡の1枚です。2度と撮ることのできない貴重なものでしょう。シルエットにはなっていますが羽根の透け具合もシャープに描写されています。オーケストラの大迫力な演奏に包まれた気持ちになりました。
 推選の安藤隆雄さん「眼、日が沈む」。フクロウの眼の表面にピタリと合わせられたピントが驚くほどシャープで感動しました。タイトル通り、瞳の中に沈みゆく夕日の光景が広がっているのです。どんなに近づいて見ても、どこまでもシャープに写されています。飛んでいく鳥を、ここまで鮮明に撮れるなんて相当な運動神経と集中力があるのでしょう。動画では表現することができない、張り詰めた緊張感があります。構図も頭部だけ切り取ったところが斬新です。見たことのない世界を体験させてもらいました。どうやって撮ったのかわからない、不思議な写真で、心に残る作品です。
 特選の秋山ゆき子さん「桜とキッス」。ユーモラスな作品です。秋山さんの動物に向けた愛情があふれています。花畑の中にひょっこりと立ち上がったエゾリス。桜の花びらが鼻にくっついていて、かわいいですね。ほんの一瞬のシャッターチャンスだったでしょう。カメラアングルもリスの目線も良いですね。森の中、リスと戯れながら夢中で撮っている秋山さんの姿が想像できます。手の仕草もいいですね。
 佐藤章さん「花朝風月」。小さな小さなモモンガに愛情を込めて撮っています。NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sのレンズ1本で撮っています。彩り良く、バリエーションがあり、組み合わせも上手です。樹氷をバックに跳ぶ姿も見事です。レンズの焦点距離や滑走するコースを予測するなど、豊かな経験を重ねて撮っているのでしょう。
 山田美希也さん「四季折々」。九州の山々の上から見渡す雄大な風景を四季折々にとらえています。1点ずつでも入賞間違いない作品ですが、4点を組み合わせることで、より味わい深い作品になっています。深度合成なども駆使しながら隅々までシャープで完璧を追求しています。明暗差が見事にコントロールされた点も評価につながりました。これからも感性をさらに磨いて素晴らしい作品を創り出して下さい。いつか写真展で大きなプリントで見てみたいと思いました。
 今年も感動を覚える作品に出会えたことに幸せを感じています。