第67回ニッコールフォトコンテスト

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第3部 ネイチャー

ニッコール大賞
推選
特選
入選・U-31賞
入選
応募点数 6,415点
講評 三好 和義

講評 三好 和義

ネイチャー写真としての価値

 自然の中にはたくさんのドラマがあります。風景、山岳、野生動物など、ネイチャー写真はそれらをきれいに撮るだけではなく、撮る側の愛情が表現され、撮影条件を超える作品の力強さが、見る者への感動に繋がるのだと思います。
ニッコール大賞に選ばれた秋山ゆき子さんの「アフリカを生きる」は、まるでミュージアムでジオラマをのぞいているかのような錯覚にとらわれました。ケニアを舞台に野生動物を撮影したものですが、動物のアップではなく、周りの様子も広く写しています。奇をてらわず、素直なまなざしでとらえた作者の温かな気持ちも伝わってきました。その場の興奮を抑え、客観的に見つめることで見えてくる物語があります。
 推薦、佐藤 圭さんの作品「エゾモモンガの生活」は、北海道で撮影されています。朝焼けや月の光、飛翔の一瞬をとらえたカットなど、素晴らしいシーンの連続で、こんな写真が撮れるんだと、驚きました。エゾモモンガと心をかよわせ、友だちになったような気分にさせてくれる作品です。
 特選、平山弘さんの「爪痕」は昨年、近畿地方中心に襲った台風21号による被害の様子です。ドキュメンタリーとして組写真でまとめたことで、自然の驚異を強く表現しています。3枚目、背景に写るボケた彼岸花が印象的で、想像をかき立てられます。高橋玲子さんの「True Love」は太平洋に浮かぶ島、トンガで出会ったザトウクジラの親子が被写体です。深いブルーの海の世界で、クジラの親子が寄り添いながら泳ぐ姿に、美しい愛情を感じました。松元良平さんの作品「命を喰らう」は、キツネが幼いエゾシカをくわえている作品です。キツネの目に映り込む風景がシャープに描写されていて、作者の撮影テクニックの高さがうかがえます。濡れた毛並みも生々しく、体温や息づかいまでもが伝わり、自然の営みの厳しさを感じさせる作品です。
 最近、ネイチャー写真の定義について、考えさせられることがありました。やはり自然がテーマなので、風景はもちろん動物でも自然の中で撮影することが基本だと思っています。その中で感動やエネルギーを伝えることが大切です。我々の住む地球の美しさを多くの人に伝え、自然の尊さを感じてもらえることがネイチャー写真の醍醐味であり、価値といえるでしょう。
 審査中、応募作品を拝見していると、いい瞬間をとらえていても過度な画像処理が目立ち、賞に選ばれないことがあります。プリントは被写体の魅力を引き出すだけではなく、作者が込めた思いも表れます。来年のニッコールフォトコンテストではぜひ手応えのある、美しいプリントでの応募をお待ちしています。