NIKON

株式会社ニコン
光学本部 第一設計部 第四光学課

福本 哲

光学設計を担当。西岡のコンセプトを機能試作モデルの光学設計にまとめあげた。
双眼鏡をはじめ光学設計の経験が豊富で、超広視界のNAV-HW天体望遠鏡アイピース設計も担当。

“見え”はいい。だが、製品化はどうか。

開発プロジェクトは動き出した。だが、本当に製品化できるのか。
問題は山積していた。超広視界でありながら隅々までフラットでシャープな視界や、
メガネをかけても見やすいロングアイリレーフをいかに両立するか……。

「正直言って、これまで携わってきた双眼鏡とは比べものにならない難易度でした。視界を広げると、周辺の像が崩れる。光学設計の宿命です。それをいかに超えるのか。西岡の当初案を聞いた時、周囲には『そんなものできるわけがない』という声が大半でした。」
光学設計を担当し、求められる見え味を機能試作モデルとしてまとめ上げた福本は、そう振り返る。

福本は当時、天体望遠鏡アイピース NAV-HWの光学設計も担当していた。見掛け視界が102度*もの超広視界でありながら、周辺までシャープな像を実現するものだ。HWシリーズの設計を進めていく中で、WXの設計も方向性が見えてきたと感じた。 *見掛視界=実視界×倍率による値

「もちろん、双眼鏡と天体望遠鏡用アイピースは違います」と福本は言う。「広視野のためには正立プリズムも接眼レンズ径も大きい方がいい。だけど、双眼鏡には人の目の幅や、手で持つという制約があり、際限なく大きくできません。大きさ、重さ、そして視界のスペック、それらを双眼鏡という形の中でいかにまとめていくかが難題でした」

*2010年に組みあがった光学性能確認用機能試作品(7x50)。製品化への最初の突破口になった。

「接眼レンズの構成を少しずつ変えながら、様々なタイプで設計を繰り返し行いました。そしてようやく視界の周辺まで満足のいく性能の光学設計にできた時は、何とか実機として完成させて見え味を確認したいと思いました」
そうして、西岡の提案から2年9ヶ月後(2010年2月)、ついにWXシリーズの視界を実感できる機能試作モデルが、福本の光学設計で完成した。
その視界が、開発の実現を疑問視していた周囲の人間をもうならせた。『これはいい』という印象が社内に広がった。
それは、重さやデザインを度外視し、あくまでも光学性能を確認するためのモデルだったが、製品化への最初の突破口になった。

その4年5ヶ月後(2014年7月)、3Dプリンタによるモックアップがあがってきた。
微妙な差異はあるが、ほぼ、製品化された現在のWXと同じデザインだ。実際の形が手で触って感じられるため、社内の理解もさらに進み、さらにプリズムの製造にも目途がつきはじめ、いよいよ製品化に向けてはずみがついた。
だが、そこに、大きな壁が立ちふさがった。
製品化にあたって、10x50の機能試作品にはまだ必要な改善点が残されていたのだ。
更なる見え方の改善が課題として残されていたが、福本は異動となりWXは富田に引き継がれることになる。

福本「隅々までシャープな視界は、WX専用に特徴を持たせて設計したフィールドフラットナーレンズシステムで解決しました。『大きい』とか『重い』とか言われると思いますが、

広い視界とロングアイリレーフの両立は実に難題で、この大きさの中に世界最高峰の光学技術を詰め込むのは、とても大変だったのです」

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