NIKON

株式会社ニコンビジョン
設計部 第一設計課

西岡 達志

入社時から天体望遠鏡の設計を主に、天体観測機器の開発にも携わる。
WXシリーズの提案者として、プロジェクトをまとめるとともに、メカ設計を担当した。

すべては、一人の設計者の夢から始まった。

まるで見ている風景の中に飛び込んだような没入感に浸れるほど、視界が広く周辺まで美しく見える双眼鏡。
それは、双眼鏡の開発に携わる設計者なら、誰もが望むものかもしれない。
WXシリーズの開発を提案した西岡も、例外ではなかった。
しかし、その夢の双眼鏡を実現するには、超えなければならないいくつもの壁がある。だからこそ、これまで、世の中のどこにも存在しなかったのだ。
「より視界の広い双眼鏡を作りたいという願望は、双眼鏡開発の歴史が物語っています。

これまでにもさまざまな広視界双眼鏡が世に送り出されてきましたが、それらを超えるもの、とにかく最高の光学性能のものを作ってみたかった。7×50 SP双眼鏡(1982年発売の高性能双眼鏡)が発売されてからしばらくたった頃に次のモデルとして、更に広視界の7x50双眼鏡を提案したことがあったのですが、当時は技術やコスト、社内の状況などの理由で具体化はできませんでした」
その後、西岡は特注品開発部門に異動となり、しばらく双眼鏡からは離れることになる。

*2014年に製作した3Dモックアップ。社内に手持ち可能であることを示し、外観イメージを共有した。

2006年に再び双眼鏡の設計部署に戻ることになったのを機会に、さらに視界の広い超広視界双眼鏡の提案を行った。
コンセプトは、視野最周辺までシャープな超広視界双眼鏡。光学性能は決して妥協しない。
使用用途は天体観察に限らず超広視界で景色も楽しめる直視型、長時間の使用では三脚を使用するが、手持ちが可能なもの、という提案だった。
光学性能を最優先にすると、どうしても大きく重くなるが、持ちやすい形状とできる限り軽量化を目指した。
またピント合わせ方式については、天体や遠方の景観観望が主用途のため、IF式を選択した。
「提案から製品化まで10年。長い時間がかかったのは、製品化へのコンセンサスを得るのに、多くの時間と労力がかかったという面があります。しかし粘り強く説得を続けていく中で結果としては社内の理解と協力を得て実現することができました。」

今まで世の中になかった性能の双眼鏡。市場があるのかどうかも定かではない。
開発は長い道のりであった。コンセプトを提案したのが2007年5月であったが、その後光学性能確認のための機能試作品が完成したのが2010年2月、この試作機の問題点や改善方法、そして製品化の可能性を模索しながら3D造形によるモックアップを作り、ニコンの技術力の高さをアピールしたいとコンセプトの再提案と説得を行ったのが2014年8月。そして2014年10月、ついに製品化のための開発プロジェクトがスタートした。
西岡は詳細な設計検討を進め、プロジェクトを主導するとともに、外観形状を含むメカ設計と全体のまとめを担当した。

西岡「手持ちの双眼鏡の重さは2キログラム以下と言われたりしますが、それを考えてしまうとWXシリーズのコンセプト自体がありえなくなる。そこに妥協せず、製品化できたのは非常に良かったと思っています。

周りの人たちがこういう双眼鏡をつくることを承認してくれ、協力してくれたおかげでここまで来ることができました。とても感謝しています」

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