“大いなる水の舞い”
ブラジルとアルゼンチンの2国にまたがる世界最大の滝、イグアス。“Iguazu”とは、先住民族のグアラニ語で、“大いなる水”という意味をもつ。大小275もの滝が4キロにわたって連なり、なんと毎秒6万5,000トンもの水が流れ落ち続けているという。少し離れた場所からでも水煙が空に湧き上がるのが見えるほどだ。中でも、巨大な滝が集まり常に轟音を響かせている“悪魔ののど笛”は、まさに絶景中の絶景で、朝、昼、夜、とその時々の表情がまったく異なる。常に水しぶきが襲ってくるため、すぐにぐしょぐしょに濡れてしまうが、それでも何度も、何度も行って、水の洗礼を受けながら撮影したくなるほどフォトジェニックだ。
絶え間なく流れ落ち続ける水。
順光で見ると、水の勢いや水量が手に取るように感じられる。
“悪魔ののど笛”を真上から見る。
太陽が雲間から顔をのぞかせると、水煙に綺麗な虹が現れた。
巨大な滝の前を大きなカラスが横切る。
あの位置からだと、滝はかなりの迫力に違いない。
太陽が沈み、あたりが少しずつ暗くなってくると、
“悪魔ののど笛”を妖しい“気”が包み込んでいく。
崖の形状や生えている植物が、水の落ち方に変化を付ける。
崖を落ちた水が無数の小川を作って流れ、
その上を虹のベールが覆い、彩りを添える。
高速シャッターで撮影してみると、
水がさまざまな形を作って落ちているのが分かる。
水は、大地や動植物に潤いを与え、
山々の養分を、下流、そして海へと運ぶ。
やがて蒸発し、雨となってまた山々に戻る。
水はまるで地球の血液のように、
この惑星上をぐるぐると循環している。
小さな滝つぼに落ちる水。よく見ると、
水面で弾けた水滴の一部が虹の色彩を帯びている。
怒涛の如く流れ続ける瀑水。
上流の水が無くなってしまわないのが不思議なほどだ。
上からの滝と、横からの滝がぶつかり、
お互いに溶け合うように混ざり合う。
何本もの滝の水が滝つぼに落ち、
それが一つになって大きな川を作る。
夕日が雲を染めても、あたりが真っ暗になっても、
水量と轟音は変わらないままだ。
夜に一人、イグアスの滝と向かい合う。
飛んでくるしぶきが身も心も洗い流してくれるようだ。
滝のしぶきに月の光が当たって、夜の虹が現れた。
2015年12月、自然写真家 高砂淳二が独自の視点で自然の姿とその営みを捉えるスペシャルコンテンツ『THE PLANET』が公開されました。そして今年、Nikonの製品を駆使して撮影した作品を、ニコン公式サイトを中心に、写真展、写真集および各種メディアで立体的に公開するプロジェクトを『THE PLANET』をキーワードに展開します。
このプロジェクトでは、かけがえのない地球、そして自然の大切さを、写真を通じて伝えていくことを主な目的に、高砂淳二とNikonが共に力を合わせてその果てしない魅力を表現していきたいと思っています。高精細な画像表現で展開される、優しさと豊かさに包まれた独自の世界観をさまざまな場面でお楽しみください。