高橋 伸哉 Shinya Takahashi×NIKKOR Z 35mm f/1.2 Sメイン作例写真

高橋 伸哉Shinya Takahashi

NIKKOR Z35mm f/1.2 S

NIKKOR Z 35mm f/1.2 S

「画面の余白を高いレベルで活かせる」

私はレンズのファーストインプレッションは裏切らないと思っているが、NIKKOR Z 35mm f/1.2 Sのそれは素晴らしい。試写した瞬間に高まったテンションは撮られる側にも伝わり、感覚的な部分を刺激される写りだ。広角でありながら豊かなボケが得られる開放F値1.2。クリアで被写体が見事な立体感を持って浮き上がる特別な描写に驚かされる。写真で感じる以上の強烈な逆光でも難なく撮れる逆光耐性の優秀さもまた格別で、柔らかい拡散光に包まれるシーンでも積極的に狙える。ポートレート撮影における35mmは標準・中望遠域より背景を活かした作画が楽しめ、それが撮り手の表現に直結する。画面の余白が作画に気付きを与えてくれ、この余白を高いレベルで活かせるのが35mm f/1.2 Sの最大の魅力ではないだろうか。

高橋 伸哉 Shinya Takahashi×NIKKOR Z 35mm f/1.2 S作品

・カメラ:Z8 ・シャッタースピード:1/250秒 ・焦点距離:35mm ・絞り:f/1.4 ・ISO感度:100

最短撮影距離は0.3m。被写体に思い切り寄れて中望遠のような作画が可能。親しい関係性を想像させるようなプライベート感を演出できた。ここまで寄るとボケはとろけるようで、ピント面の右目に吸い込まれるようだ。少し斜め上から撮ることで顔のゆがみを最小限に抑えている。

おしゃれをした外出先から帰宅し、ほっと一息ついたイメージを狙った。自由なフットワークが難しい室内でも、適度に背景を取り入れて圧迫感なく撮れるのは35mmならでは。カーテンを開けることで開放感を出したほか、ややハイアングルから撮って顔がゆがまない工夫をしている。

高橋 伸哉 Shinya Takahashi×NIKKOR Z 35mm f/1.2 S作品

・カメラ:Z8 ・シャッタースピード:1/400秒 ・焦点距離:35mm ・絞り:f/1.2 ・ISO感度:100

高橋 伸哉 Shinya Takahashi×NIKKOR Z 35mm f/1.2 S作品

・カメラ:Z8 ・シャッタースピード:1/2500秒 ・焦点距離:35mm ・絞り:f/1.2 ・ISO感度:320

レンズの最短撮影距離は0.3m。引きの画だけでなく寄って撮れるのも大きな魅力だ。頭を大胆にフレームアウトさせて息づかいが聞こえそうな臨場感を演出し、前ボケを活かして奥の瞳に視線を誘導した。至近からしっとりとした描写で捉えた肌の質感には感動を覚える。

開放F値1.2による美しい雪の前ボケが撮りたくて北国に向かった。着物は凜とした冬の寒さを表現するのに最適だ。質の良いボケは雪が積もる木々の様子を伝えつつ、適度に抽象化してモデルとの一体感を強めた。モデルを少し右に寄せることで、雪に包まれた背景もまた主役になる。

高橋 伸哉 Shinya Takahashi×NIKKOR Z 35mm f/1.2 S作品

・カメラ:Z8 ・シャッタースピード:1/2500秒 ・焦点距離:35mm ・絞り:f/1.2 ・ISO感度:100

高橋 伸哉 Shinya Takahashi×NIKKOR Z 35mm f/1.2 S作品

・カメラ:Z8 ・シャッタースピード:1/1000秒 ・焦点距離:35mm ・絞り:f/1.2 ・ISO感度:100

広い画角で周囲が伝わるように撮ることは情景ポートレートの大切なポイント。着物をまとうモデルの少しけだるそうな表情は、日本家屋のしっとりとした雰囲気に合い、差し込む光が生む強い陰影が良いアクセントになった。着物の質感はレンズの高い描写力の証だ。

日本らしさにあふれた町家は画面に広く取り入れたくなるが、モデルから引くことで背景の割合を増やせる。パースを活かした奥行きが得られるのも魅力だ。全体を包む開放F値1.2の程よいボケが心地良く、モデルを十分に引き立たせている。薄曇りの天気は、しっとりとした雰囲気を出すのにひと役買ってくれた。

高橋 伸哉 Shinya Takahashi×NIKKOR Z 35mm f/1.2 S作品

・カメラ:Z8 ・シャッタースピード:1/5000秒 ・焦点距離:35mm ・絞り:f/1.2 ・ISO感度:400

高橋 伸哉 Shinya Takahashi×NIKKOR Z 35mm f/1.2 S作品

・カメラ:Z8 ・シャッタースピード:1/125秒 ・焦点距離:35mm ・絞り:f/1.2 ・ISO感度:100

暗い時間帯は絶好の情景写真タイム。明るい開放F値1.2による低感度の表現を試したが、ISO感度の影響を受けやすいデリケートな肌の質感は滑らか。画質の良さに加えて美しい陰影も得られている。寄り引きで適度な背景の余白を探すのも実に楽しい。

あたり一帯がオレンジ色に包まれる海辺の夕暮れが見事だった。強烈な光にも対応できるレンズの優れた逆光耐性と開放F値1.2の柔らかい描写特性のおかげで、拡散光が上品に回りながらもピント面にしっかりと芯がある理想的な情景写真になった。

高橋 伸哉 Shinya Takahashi×NIKKOR Z 35mm f/1.2 S作品

・カメラ:Z8 ・シャッタースピード:1/2500秒 ・焦点距離:35mm ・絞り:f/1.2 ・ISO感度:100

Behind The Scenes

Behind The Scenes

「NIKKOR Z 35mm f/1.2 Sは画角の広さを活かして背景を取り入れた撮影が可能だ。それが写真表現の幅を広げ、作品性に直結する」と高橋伸哉氏は言う。撮影距離をコントロールして広角的、望遠的に撮り分けるフットワークや、リズム良くシャッターが切れる素早いAF性能を疑似体験できる動画となっている。

高橋 伸哉プロフィール写真

写真作家

高橋 伸哉(たかはし しんや)

情景的なポートレートを得意とする。日本と世界の旅を紡いだスナップにも定評があり、写真家活動を中心に各地を飛び回っている。定期的に行う写真教室は常に満杯になるほどの人気。書籍『写真からドラマを生み出すにはどう撮るのか?』(インプレス)のほか、写真集『impermanence』(玄光社)などを刊行。多くのカメラ誌にも寄稿する。

NIKKOR Z 35mm f/1.2 S

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