先月地球と最接近した火星が、引き続き明るく見えています。明るい星が少ない南の空で輝く様子に、孤高の美しさが感じられそうです。東の空には、火星を追うように冬の星座たちが昇ってきます。
星空写真
群馬県 渋峠にて
未明のマジックアワーに輝く、細い月と金星の共演をギリシャ神話の月の女神アルテミスと美と恋の女神ヴィーナスに見立てると、美しさが増幅するように思います。
2020年8月16日 4時9分
ニコン D6+AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(50mm、ISO 800、露出1秒、f/2.8)
撮影者:高岡 誠一
2020年11月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、満月(30日)、上弦(22日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。
2020年11月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
1日(日) | 天王星が衝(一晩中見え観察の好機です。「今月の星さがし」で解説) |
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3日(火) | 宵~翌4日未明、月とアルデバランが並ぶ |
6日(金) | 深夜~翌7日明け方、月とポルックスが接近 |
7日(土) | 立冬(こよみの上で冬の始まり) |
8日(日)![]() |
下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
10日(火) | 未明~明け方、月とレグルスが並ぶ |
13日(金) | 未明~明け方、細い月と金星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
14日(土) | 明け方、細い月と水星が大接近(「今月の星さがし」で解説) |
15日(日)![]() |
新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
17日(火) | このころ、未明~明け方に金星とスピカが接近(「今月の星さがし」で解説) |
19日(木) | 夕方~宵、細い月と木星が接近、土星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説) |
22日(日)![]() |
上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) |
26日(木) | 未明、月と火星が並ぶ 夕方~宵、月と火星が並ぶ |
30日(月)![]() |
満月。次の満月は12月30日です 夕方~翌12月1日明け方、月とアルデバランが接近 |
明け方の東南東の低空に見えます。中旬には日の出30分前(東京で朝5時45分ごろ)の高度が10度以上となり、これは太陽から大きく離れることがない(日の出前か日の入り後の地平線近くにしか見えない)水星としては好条件です。やや離れたところに輝いている金星が、水星を見つける目印となるのも好都合です。
好条件とはいえ、10度というのはかなり低いので、建物などに遮られない見晴らしの良いところで探しましょう。双眼鏡を使うと見つけやすくなります。
14日の明け方に月齢28という非常に細い月と横並びになります。やや観察が難しい現象ですが、早起きして眺めてみましょう。
「明けの明星」として未明から明け方の東南東の低空に見えます。日の出1時間前(東京で明け方5時15分ごろ)の高度は20度未満と低めですが、金星は非常に明るいので、山やビルなどに隠れていなければ簡単に見つけられるはずです。冷たい空気の中、明星の輝きの強さを感じてみましょう。
13日に細い月と接近します。また17日前後に、「おとめ座」の1等星スピカと接近します。「今月の星さがし」を参考に、早起きして月やスピカと金星との共演をお楽しみください。
「うお座」にあります。日の入りのころに東の空に見え、夜21時ごろに真南の空まで高くなり、明け方3時ごろに沈みます。明るさは約マイナス1.5等級で、地球と最接近した先月よりは暗くなっていますが、都市部でも肉眼ではっきり見えるほど目立ちます。
地球最接近から1か月が過ぎたものの、見ごろが続いています。肉眼や双眼鏡では明るさの変化を追い、天体望遠鏡では表面の模様を観察してみましょう。
26日の未明に、満月前の丸みを帯びた月と並んで見えます。また26日の夕方から宵にかけても月と火星が並びます。赤っぽい火星と白い月の対比を楽しみましょう。
「いて座」にあります。日の入り1時間後(東京で夕方17時30分ごろ)に南南西の空のやや低いところに見え、夜20時30分ごろに沈みます。明るさは約マイナス2.1等級です。
空が暗くなってから木星が沈むまで3時間ほどしかなく、本格的な観察シーズンはそろそろ終わりですが、機会があれば双眼鏡や天体望遠鏡で、木星を公転するガリレオ衛星や木星表面の縞模様を眺めてみましょう。
肉眼では木星と土星が並ぶ光景が見もので、先月よりもさらに間隔が小さくなってきました。これから年末にかけていっそう近づくので、その変化を追ってみましょう。19日の夕方から宵には細い月も接近し、3天体の集合が見られます。
「いて座」にあります。日の入り1時間後(東京で夕方17時30分ごろ)に南南西の空のやや低いところに見え、夜21時ごろに沈みます。明るさは約0.6等級です。
空が暗くなってから土星が沈むまで3時間半ほどしかなく、本格的な観察シーズンはそろそろ終わりですが、機会があれば天体望遠鏡で環を観察してみましょう。
肉眼では木星と土星が並ぶ光景が見もので、先月よりもさらに間隔が小さくなってきました。これから年末にかけていっそう近づくので、その変化を追ってみましょう。19日の夕方から宵には細い月も接近し、3天体の集合が見られます。
明けの明星(アプロディーテー)と細い月(アルテミス)が「おとめ座」(デーメーテール)で並びます。女神3柱をイメージしながら眺めてみましょう。天王星探しにも挑戦してみてください。
金星は年末ごろまで「明けの明星」として、夜明け前の東の空に見えています。冬が近づき日の出が遅くなってきているので、極端な早起きをしなくても目にすることができるでしょう。
今月13日にはこの金星のそばに、新月2日前の細い月が接近します。明るい2天体が並ぶ光景はとても美しく、空気の冷たさや早起きの眠たさを吹き飛ばすほどです。肉眼で見られますので、ぜひご覧ください。夜明けとともに空の色が変化していく様子にも注目してみましょう。
翌14日には月がさらに細くなり、金星の下のほうに見える水星と接近します。月の細さに加えて、地平線に近いことや水星が(金星よりは)暗いこともあり、観察はやや難しいのですが、それだけに見えたときの感動も大きいので、こちらも挑戦してみてください。やはり肉眼で見えますが、双眼鏡を使うと見やすくなります。
11月13日から19日まで1日ごとの、未明5時15分の東南東の空の様子(場所の設定は東京)。囲み内は拡大イメージ(視野6度)、小さい円は月と金星をさらに拡大したイメージ(月は70倍程度の天体望遠鏡、金星はさらに高倍率の望遠鏡)
ふたたび金星に目を向けると、17日ごろに「おとめ座」の青白い1等星スピカと並ぶ光景も見ものです。2つの星の明るさと色の違い、日によって角度や間隔が変化していくことなどにも注目してみましょう。
これらの天体接近現象を「金星の女神アプロディーテー、月の女神アルテミス、『おとめ座』のモデルで豊穣の女神デーメーテール」の会合だと想像しながら眺めてみると、朗らかで楽しい様子が思い描けそうです。女神たちが優雅に集う光景をお楽しみください。ちなみに夜明け(暁)の神エーオースも女神です。
※「おとめ座」のモデルは、正義の女神アストライアーなどともされます。また水星神ヘルメースは男性神です。
13日と14日に明け方の空に見えていた細い月は、新月を過ぎると夕方から宵の空に姿を現すようになります。そして19日には、南西の空で並んでいる木星と土星のそばにやってきて、3天体の集合が起こります。双眼鏡の視野の中に3つとも見えるほど近づく機会は少ないので、こちらの宵空の接近現象にも注目してみましょう。深夜や明け方ではないので見やすいことも嬉しいですね。
木星と土星の間隔は今後さらに小さくなっていき、来月21日前後には「月の見かけの大きさよりも狭い範囲」に並ぶという超大接近が起こります。1か月間でどのように間隔が変化していくのか、時々確かめてみてください。
11月19日 夜18時の南南西の空の様子(場所の設定は東京/火星は実際には南東にある)。囲み内は拡大イメージ(視野6度)、小さい円は月と惑星をさらに拡大したイメージ(月は70倍程度の天体望遠鏡、惑星はさらに高倍率の望遠鏡)
また、先月6日に地球と最接近した火星が、今月も明るく見えています。激しいほどの勢いは感じられなくなったかもしれませんが、火星の周囲には明るい星がないので、依然としてよく目立ちます。宵の時間帯に南の空に高く昇って目にしやすいこともあり、まだまだ注目を集めそうです。機会があれば、天体望遠鏡でも観察してみてください。
夜21時ごろに南東の空の高いところに昇る「おひつじ座」の領域に、太陽系の第7惑星である天王星が位置しています。太陽から約30億km(土星の約2倍)と遠くにありますが、木星、土星に次いで直径が3番目に大きいおかげで、約6等級ほどの明るさで見えます。多少の街明かりがあるようなところでも、双眼鏡を使えば意外と簡単に見つかり、空が暗いところなら肉眼でも見つけられる明るさです。
天王星を見つける目印となるのは、「おひつじ座」と「くじら座」の星々です。まず、ハマル(2等級)やシェラタン、メンカル(ともに3等級)を見つけましょう。次に、ハマルとメンカルの間あたりに双眼鏡を向け、周りの星の並びと見比べれば、天王星が見つかるはずです。日付や時刻によっては、図を傾けないと実際の見え方と一致しないことがあるので、星の配列をよく確かめてください。
天体望遠鏡で観察すると青緑色の小さな円盤状に見えます。模様こそないものの、独特の色合いはとても魅力的です。南の空に輝く火星の色との対比も美しいですね。公開天文台や科学館で見られるチャンスがあるかもしれませんので、観察会などに参加して眺めてみましょう。
「カシオペヤ座」と「ケフェウス座」はどちらも北の空にある星座で、日本ではほぼ一年を通じて見ることができる星座ですが、宵の時間帯に高く昇って見やすいのは11月ごろです。夜21時ごろに北の空を見上げると、5つの星がアルファベットのMの字形に並んでいるのが見つかり、このあたりが「カシオペヤ座」です。このカシオペヤと北極星(ポラリス)の間からやや左(西)寄りに広がるのが「ケフェウス座」で、細長い五角形に星が並んでいます。
「カシオペヤ座」にはカフ、シェダルという2等星が、「ケフェウス座」にはアルデラミンという2等星があるので、真北の方角がわかれば街中でも両星座の位置の見当がつけられるでしょう。残りの星も主に3等星なので街明かりを避ければ肉眼でじゅうぶん見つけられます。5つの星で作られる、それぞれの特徴的な形を探してみてください。
ギリシャ神話ではこの二人は夫婦で、ケフェウスが国王、カシオペヤは王妃とされています。カシオペヤの口が災いして神の怒りをかい、国を荒らされたり二人の娘の王女アンドロメダを生け贄に差し出す羽目になったりと散々な目に遭います。2等星があるとはいえ少し目立たないのは、反省しているのかもしれません。
シェダルのそばの3等星アキルドは、天体望遠鏡で観察すると黄色とオレンジ色の2つの星に見える二重星です。暗いほうのオレンジの星は紫色に見えると表現されることもあります。美しいペアを観察してみましょう。
シェダルとカフを結んで同じだけ伸ばしたあたりに、M52(Mはカタログの符号)という番号が付けられた散開星団(星の集団)があります。双眼鏡ではぼんやりとした光のシミのように見え、望遠鏡を使うと微光星が集まっている様子がわかります。この星団のあたりには天の川が流れているので、双眼鏡でボンヤリと眺めているだけでも夜空の美しさを堪能できるでしょう。
また、「カシオペヤ座」から「ケフェウス座」あたりには赤っぽい星雲も点在していて、天体写真撮影の人気のエリアとなっています。
「ケフェウス座δ(デルタ)星」は5日ほどの周期で明るさが変わる変光星です。明るさが変わる以外に特徴がなさそうに思える星ですが、実は天文学で非常に重要な意味を持つ天体です。
ケフェウス座δ星に代表されるタイプの星は、その変光周期と星本来の明るさの間に一定の関係があることが知られています。たとえば、遠く離れた銀河の中にこのタイプの変光星を見つけて変光周期を調べると、本来の明るさがわかります。その明るさと見かけの明るさを比べ、遠くなるほど見かけが暗くなるということと併せて考えると、変光星(すなわち銀河)までの距離がわかります。ケフェウス座δ星タイプの変光星は、遠く離れた天体までの距離を測る手段としてたいへん有用な天体なのです。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は11月中旬の深夜1時ごろの星空です。12月中旬の深夜23時ごろ、来年1月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます)。
今月ご紹介した「カシオペヤ座」は北西の空の高いところ、「ケフェウス座」はその下のほうに見えています。北を正面にすると、「カシオペヤ座」は北極星の左上、「ケフェウス座」は北極星のちょうど左あたりになります。上の図を180度回転させて(北が下になるようにして)位置関係をつかみ、実際の空で探してみましょう。
西の空では火星が明るく光っています。10月上旬の地球最接近のころよりは暗くなりましたが、依然としてよく目立ち、南東の空に昇ってきた華やかな星々にも負けない輝きを見せています。
手袋やマフラーなど寒さ対策の準備をしっかり整えて、星空散歩をお楽しみください。
季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。