2年2か月ぶりに地球と最接近する火星が、宵空に爛々と輝いています。その美しさや力強さを感じてみましょう。頭の真上を天馬ペガススが駆け、南の地平線には首を伸ばした鶴の星座が姿を見せます。
星空写真
南房総にて
つる座を目当てに撮影に行きました。明るく輝いている星が南の一つ星フォーマルハウトです。その下に羽根を広げ首を伸ばしたつる座が写っています。夕焼けのように見えるのは月の残照です。
2020年8月2日 2時52分
ニコン Z 6+FTZ+AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(36mm、ISO 6400、露出13秒、f/2.8)
撮影者:鈴木 祐二郎
2020年10月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、満月(2日(火星のそば)/31日(火星の左))、上弦(23日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。
2020年10月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
1日(木) | 中秋の名月(「今月の星さがし」で解説) |
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2日(金)![]() |
満月。次の満月は10月31日です |
3日(土) | このころ、未明~明け方に金星とレグルスが大接近(「今月の星さがし」で解説) 未明~明け方、月と火星が並ぶ 宵~翌4日明け方、月と火星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
6日(火) | 地球と火星が最接近(「今月の星さがし」で解説) 深夜~翌7日明け方、月とアルデバランが接近 |
10日(土)![]() |
下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
11日(日) | 未明~明け方、月とポルックスが接近 |
13日(火) | 未明~明け方、月とレグルスが並ぶ |
14日(水) | 未明~明け方、細い月と金星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
15日(木) | 火星が衝(一晩中見えるので観察の好機です。「今月の星さがし」で解説) |
17日(土)![]() |
新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります) |
22日(木) | 夕方~宵、月と木星が接近、土星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説) |
23日(金)![]() |
上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む) 夕方~宵、月と土星が接近、木星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説) |
29日(木) | 夕方~翌30日未明、月と火星が接近(「今月の星さがし」で解説) |
31日(土)![]() |
満月。次の満月は11月30日です |
10日ごろまで、夕方の西南西の低空に見えますが、日の入り30分後(東京で夕方17時50分ごろ)の高度は約3度ほどと非常に低く、見つけるのは難しそうです。スマートフォンのアプリなどで方位と高度をよく確かめ、双眼鏡を使って探してみましょう。
「明けの明星」として未明から明け方の東の空に見えます。日の出1時間前(東京で未明4時45分ごろ)には地平線から20度以上の高さまで昇っていて、金星が夜明け空の中に美しく輝く光景を見られるでしょう。
3日前後に「しし座」の1等星レグルスと大接近します。「今月の星さがし」を参考に、獅子の胸に明星が煌めく様子を観察してみましょう。また、14日には細い月と金星の共演が見られます。こちらもぜひ早起きしてお楽しみください。
「うお座」にあります。地球を挟んでほぼ太陽と正反対に位置しているので、日の入りのころから日の出まで一晩中見ることができます。明るさは約マイナス2.5等級で、宵空に見える天体としては(月を除けば)一番明るくなります。
今月6日に地球と最接近します。その当日だけ大きく明るく見えるわけではありませんので、晴れた夜には何度でも眺めてみましょう。また、最接近といっても肉眼や双眼鏡では模様は見えないので、機会があれば天体望遠鏡でも観察してみましょう。表面の濃淡がわかるかもしれません。
3日の宵から4日の明け方、また29日の夕方から30日の明け方にかけて、満月に近い丸い月と接近して見えます。月との接近は望遠鏡がなくても肉眼や双眼鏡で楽しめるので、月の明るさに負けず輝く赤い惑星を眺めてみてください。
「いて座」にあります。空が暗くなったころに南の空やや西よりに見え、深夜22時30分ごろに沈みます。明るさは約マイナス2.3等級です。
夏に比べて沈む時間帯が早まってきましたが、日が暮れるのも早いおかげで、まだ比較的観察しやすい時期です。双眼鏡や天体望遠鏡で、木星を公転するガリレオ衛星や木星表面の縞模様を眺めてみましょう。
肉眼では木星と土星が右左に並ぶ光景が見ものです。先月まではやや間隔が開いていましたが、今月からは双眼鏡の同一視野内に見えるようになります。間隔はこれから年末にかけてどんどん小さくなっていくので、変化を追ってみてください。22日と23日の夕方から宵には月も接近し、3天体が集合します。
「いて座」にあります。空が暗くなったころに南の空やや西よりに見え、深夜23時ごろに沈みます。明るさは約0.5等級です。
夏に比べて沈む時間帯が早まってきましたが、日が暮れるのも早いおかげで、まだ比較的観察しやすい時期です。天体望遠鏡で土星の環を観察してみましょう。
肉眼では木星と土星が右左に並ぶ光景が見ものです。先月まではやや間隔が開いていましたが、今月からは双眼鏡の同一視野内に見えるようになります。間隔はこれから年末にかけてどんどん小さくなっていくので、変化を追ってみてください。22日と23日の夕方から宵には月も接近し、3天体が集合します。
1日に中秋の名月、3日ごろ金星とレグルスの大接近、6日に地球と火星の最接近と、上旬に楽しみな現象が目白押しです。計画を立てて観察してみましょう。
7月の七夕や8月の伝統的七夕、ペルセウス座流星群が夏の風物詩とすれば、秋の風物詩と言えるのが「中秋の名月(十五夜の月)」です。澄んだ秋の夜空に白く輝く丸い月は、とても美しく感じられます。街中からでも月はよく見えるので、気軽にお月見を楽しむことができるでしょう。
「中秋」とは、秋のちょうど真ん中を指す言葉です。日本でかつて使われていた暦(いわゆる旧暦)では7~9月が秋なので、旧暦の8月15日が中秋ということになります。現行の暦(新暦)では毎年異なる日付になり、今年は10月1日になります。そしてこの夜の月が「中秋の名月(十五夜の月)」と呼ばれています。
※旧暦は現在公的には使われていないため、中秋の名月の日は「太陽太陰暦と同じような方法で求めた8月15日に近い日」として、太陽の位置や月の満ち欠けをもとにして決められます。
ところで十五夜の月は必ずしも満月になるとは限らず、今年の場合は翌2日が満月です。1日の夜に天体望遠鏡で月を観察すると縁が少しだけ欠けているのがわかるかもしれませんが、肉眼や双眼鏡では「丸い月」に見えるでしょう。
十五夜以降の月にも様々な呼び名が付けられています。翌日の月は十五夜よりやや遅く昇ることから、「ためらう」という意味の「いざよい(十六夜)」と呼ばれ、さらに翌日は「立って待っていると昇ってくる」ので「たちまちづき(立待月)」(以降、「いまち(居待)」「ねまち(寝待)」「ふけまち(更待)」)となります。こうした呼び方から、月が古来より親しまれてきたことが実感できるでしょう。
満ち欠けによる形の変化や「月のウサギ」として有名な表面の暗い模様は肉眼でもわかりますが、望遠鏡で観察すると、海と呼ばれる暗い部分(ウサギの正体)や数々のクレーターも見ることができます。さらにしっかりと観察すると、月の見かけの大きさが変化したり、月縁部の見え方が変わったりすることもわかるかもしれません。大きさが変わるのは月と地球との距離が変わるため(近いほど大きく見える)、縁付近の見え方が変わるのは月が地球に向けている面が微妙に変わるためです。少し意識して観察してみましょう。
普段、星空を見るにはまぶしすぎるため月明かりはないほうが嬉しいのですが、反対にその明るさから、月はどんな場所からでも手軽に楽しむことができる天体です。お供え物を用意して、ぜひ名月を愛でてみましょう。
「しし座」は春の宵空で見やすい星座ですが、10月にはもう明け方の空に見えます。東の地平線から昇ってくる姿を眺めると、ライオンが勢いよく空を駆け上がるように感じられ面白いものです。
「しし座」の胸の部分には、青白い色の1等星レグルスが光っています。このレグルスに10月上旬ごろ、明けの明星として輝いている金星が大接近します。最接近する3日には、金星とレグルスの間隔は満月の見かけサイズの半分以下にまで、つまり半月の光っている幅よりも狭い距離まで近づきます。
レグルスは「小さな王」という意味の言葉に由来する名前で、実際に「しし座」のシンボルとして立派に輝く星ですが、金星の圧倒的な輝きと比べるとさすがに分が悪くなります。「金星の威光を借る獅子」の姿を、早起きしてお楽しみください。また、最接近する日だけでなく前後の日にも観察すれば、惑星である金星がレグルスや「しし座」の星々に対して移動していく様子がよくわかります。この動きにも注目してみましょう。
夜21時ごろ、東から南東の空にひときわ明るく赤っぽい星が目立って輝いています。太陽系の中で地球の1つ外側を巡る惑星、火星です。今月6日に地球と火星が最接近する(実際の距離が最も近づく)ので、この秋は火星が最も明るくなり、天体望遠鏡で見たときの大きさが最も大きくなって見ごろを迎えています。
地球と火星が太陽の周りを公転するとき、地球の公転周期(1年)のほうが火星(約1.9年)よりも短いので、地球は火星を内側から追い越していきます。この追い越すタイミングが「地球と火星が最接近する」ときで、およそ2年2か月ごとに起こります。
各回の最接近で、地球と火星の距離は大きく変わります。これは、火星の軌道がかなりつぶれた楕円軌道だからです(地球も楕円軌道ですが、火星のほうがよりつぶれた軌道です)。近い最接近であれば6000万kmよりも近づきますが、遠い最接近だと1億km以上も離れることもあります。今回の最接近距離は約6210万kmで、かなり近いほうです。次に同程度の接近となるのは13年も先なので、ぜひ今回のチャンスにしっかり火星を観察しておきましょう。
火星が最接近し大きく見えるといっても、満月の1/80~1/100の大きさしかありませんから、肉眼や双眼鏡で模様が見えるわけではありません。天体望遠鏡を使ってじっくり観察すると、表面に濃淡がある様子がわかります。天体観察会やインターネット中継イベントなどで確かめてみましょう。
肉眼や双眼鏡では、とくに明るさの変化が見ものです。10月上旬は宵空に見える木星よりもやや明るいのですが、下旬には木星とほぼ同じになり、11月にはもう木星よりも暗くなります。つまりそれだけ地球と火星が遠ざかるということで、明るさから距離の変化を感じることができるでしょう(もちろん、地球と木星の距離の変化により、木星の明るさも変わります)。また、火星からは少し離れていますが「秋の四辺形」や「おひつじ座」「おうし座」の星々との位置関係を見ていると、惑星である火星が星々の間を動いていく様子もわかります。
火星はこの後も来年5月ごろまで長期間見ることができますが、木星よりも明るく、(望遠鏡で)大きい様子を見られるのは今月だけです。今後約10年以上の期間で一番の火星を、ぜひご堪能ください。
今月起こる、月と惑星の接近現象をまとめてご案内しましょう。それぞれの接近ごとに月の形、月と惑星の間隔、惑星の色と明るさが異なることが、よくわかるはずです。日時と方角・高さを確認して、肉眼や双眼鏡で眺めたり、地上風景とともに写真に撮ったりして楽しみましょう。また、望遠鏡で見たイメージはすべて同じ拡大率にしてあるので、各惑星の見かけサイズがどのくらい違うのかを確かめてみてください。金星が半月状に見えることもわかるでしょう。
図はすべて、
10月中旬の夜21時ごろ、「秋の四辺形」がほぼ頭の真上あたりに見えています。四辺形の西側の辺(南を正面として右側の辺)を南の地平線に向けて伸ばしていくと、南の空の低いところに1つ、他よりも明るく輝く星が見つかります(ページ上部「10月の星空」の星図参照)。これが「みなみのうお座」を見つける目印となる1等星のフォーマルハウトです。日本には「秋のひとつぼし」「南のひとつぼし」という呼び方もあります。
フォーマルハウトは魚の口に当たる位置にあります。そこから右(西)に体の星が並んでいますが、フォーマルハウト以外の星は暗いので、魚の姿をイメージするのは少し難しいかもしれません。星座の絵を見るとお腹を上にしてひっくり返っていますが、一説によればこれは「みなみのうお座」の上(北)にある「みずがめ座」から注がれるお酒を飲んで酔っているためだということです。
さて、このフォーマルハウトが真南の空に見えるころ、そこからさらに低いところに「つる座」が姿を現しています。左右に並ぶアルナイルとティアキは2等星で、空の条件が良ければ簡単に見つけられるのですが(ページ上部「星空写真」で見つけてみましょう)、街明かりや大気の影響で見えにくいこともあります。双眼鏡を使うなどしてこの2つの星を見つけ、そこから「つる座」をイメージしてみてください。良い空に恵まれれば、長く伸びた鶴の首の星々まで見えるでしょう。
夜空に輝く星のなかには、太陽と同じようにその周りに惑星が存在するものが多数あります。これらは太陽系以外の惑星ということで「系外惑星」と呼ばれ、現時点では3000個以上の恒星に対して4000個以上の系外惑星が発見されています。
2008年に行われた観測からフォーマルハウトにも惑星が見つかり、「ダゴン」という名前が付けられました。ところがその後の観測では見えなくなってしまい、ダゴンが実在するかどうかははっきりしていません。果たして惑星は存在するのかしないのか、今後の研究に注目しましょう。
また、星図中の矢印のあたりに光る「ラカイユ9352」という星には2個の系外惑星が見つかっています。この星と惑星は約11光年の距離にあり、これは太陽系から10番目に近い恒星系です。11光年ということは光や電波が11年で届くので、もし文明が存在すれば往復約20年で通信できる可能性があります。
地球外生命や太陽系外文明の探査は、今後ますます発展していく研究分野でしょう。星空を眺めながら、こうした研究の世界にも思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。
図は10月中旬の深夜1時ごろの星空です。11月中旬の深夜23時ごろ、12月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます)。
南東の空に「オリオン座」や「冬の大三角」が昇っています。冬の大三角を構成する星の一つ、「おおいぬ座」のシリウスは、星座を形作る恒星としては全天で最も明るい星でよく目立ちます。しかし、この秋はシリウスよりももっと目立つ星が頭上に輝いています。今月6日に地球と最接近する火星です。東の空に散りばめられたほかの1等星も含めて、色や明るさを見比べてみましょう。
北の空の高いところには「カシオペヤ座」が見えます。Wの字の形に星が並ぶと説明されることが多い星座ですが、北を正面にして空を見上げると(図を180度回転して北が下になるようにすると)、Mの字に見えるでしょう。「カシオペヤ座」には「やまがたぼし(山形星)」という呼び方もあり、その名前に納得できるはずです。
深夜には肌寒さを感じることも増えてきます。日中の陽気に油断せず、暖かい服装で星空観察をお楽しみください。
季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。