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2020年9月の星空

夏の大三角や木星、土星が天の西半分へと移り、秋の四辺形や火星が宵空に姿を見せます。夏から秋へ、星空で季節の移りかわりを感じてみましょう。とくに目立つ現象はなくても、いつもの空も面白く美しいものです。

星空写真

新潟県村上市 岩ヶ崎海水浴場にて
2020年3月にアメリカ航空宇宙局の観測衛星『NEOWISE』が発見した彗星が肉眼彗星になり、梅雨の晴れ間の星空に心を揺さぶる雄大な姿を見せてくれました。

2020年7月19日 20時35分
ニコン Z 7+NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct(ISO 1600、露出2秒×8枚を合成、f/0.95)
撮影者:高岡 誠一

9月の星空

南の空

南の空

2020年9月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、満月(2日)、上弦(24日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2020年9月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。

天文カレンダー

2日(水) 満月。次の満月は10月2日です
5日(土) 深夜~翌6日明け方、月と火星が接近
6日(日) 深夜~翌7日明け方、月と火星が接近(「今月の星さがし」で解説)
10日(木) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
未明~明け方、月とアルデバランが接近
13日(日) 明け方、細い月とポルックスが並ぶ
14日(月) このころ、未明~明け方に金星とプレセペ星団が接近(「今月の星さがし」で解説)
未明~明け方、細い月と金星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説)
15日(火) 未明~明け方、細い月と金星がやや離れて並ぶ
17日(木) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
22日(火) 秋分
夕方~宵、月とアンタレスが並ぶ
24日(木) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)
25日(金) 夕方~深夜、月と木星が接近、土星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説)

9月の惑星

水星

15日ごろから、夕方の西~西南西の低空に見えますが、日の入り30分後(東京で夕方18時15分ごろ)の高度は約4度ほどと非常に低く、見つけるのは難しそうです。スマートフォンのアプリなどで方位と高度をよく確かめ、双眼鏡を使って探してみましょう。22日ごろに「おとめ座」の1等星スピカと大接近します。双眼鏡なら、2つ仲良く並んだ様子が見えるかもしれません。

金星

「明けの明星」として未明から明け方の東の空に見えます。日の出2時間前(東京で未明3時20分ごろ)にはすでに地平線から15度ほどまで昇っているので、建物などに遮られなければ美しく輝く光景を目にできるでしょう。

中旬ごろ、「かに座」のプレセペ星団という星の集団に接近します。「今月の星さがし」を参考に、双眼鏡で美しい眺めを楽しみましょう。また14日と15日には細い月も並んで見えます。早起きして観察してみてください。

火星

「うお座」にあります。20時ごろに昇ってきて、0時ごろに南東の空、2時ごろに真南の空の高いところ、4時ごろに南西の空に見えます。明るさは約マイナス2等級で、月末にはマイナス2.5等級まで明るくなります。

10月6日に地球と最接近しますが、今月はそのラストスパートといったところで、明るさと赤さがいっそう目立ってきます。22時ごろには地平線からの高さが30度ほどに達し、目にする機会も増えるでしょう。天体望遠鏡で観察すると表面の濃淡がわかるかもしれません。

5日の深夜から6日の明け方、また6日の深夜から7日の明け方にかけて、下弦前の月と接近して見えます。月との接近は望遠鏡がなくても肉眼や双眼鏡で楽しめるので、遅い時間帯ですが一目眺めてみてください。

木星

「いて座」にあります。空が暗くなったころに南の空に見え、日付が変わる前後に沈みます。明るさは約マイナス2.5等級です。

見やすい時間帯に見やすい高さにあり、観察の好期が続いています。双眼鏡や天体望遠鏡で、木星を公転するガリレオ衛星や木星表面の縞模様を眺めてみましょう。

肉眼では木星と土星が右左に並ぶ光景が見ものです。色と明るさの違いに注目して眺めてみましょう。木星と土星の間隔はこれから年末にかけてどんどん小さくなっていくので、その変化を追うのも面白いものです。また、25日の夕方から深夜には月も接近し、3天体が集合します。

土星

「いて座」と「やぎ座」の境界付近(いて座の領域)にあります。空が暗くなったころに南の空、木星の左に見え、未明1時ごろに沈みます。明るさは約0.4等級です。

木星と並んで見やすい時間帯に見やすい高さにあり、観察の好期が続いています。天体望遠鏡で土星の環を観察してみましょう。

肉眼では木星と土星が右左に並ぶ光景が見ものです。色と明るさの違いに注目して眺めてみましょう。木星と土星の間隔はこれから年末にかけてどんどん小さくなっていくので、その変化を追うのも面白いものです。また、25日の夕方から深夜には月も接近し、3天体が集合します。

今月の星さがし

宵の南天に並ぶ木星と土星に加えて、東天に火星も姿を見せるようになりました。それぞれの色や明るさ、月との接近現象を眺めてみましょう。明け方には金星の輝きが、秋の澄んだ空気の中に映えます。

6日ごろ 半月と火星の共演、25日には半月と木星・土星が集合

月は約27日周期で地球を公転していて、毎日その形と位置を変えていきます。月だけを眺めるのも楽しいものですが、月と明るい天体が並んで見えるタイミングでは面白さが増し、より見ものとなります。明るい天体の代表は惑星で、とくに金星・火星・木星・土星との接近は街中でも気軽に楽しめる現象です。天体そのものを見るというよりも、天体がある風景を眺めるという感覚でしょう。

今月はまず、5~6日と6~7日に月と火星の接近が起こります。下の図は7日0時の見え方を表していて、月は火星の左にありますが、5~6日にかけての夜は月は火星の右にあります。また、この図の月よりも少しだけ太い形をしています。1日の間に月の形と位置が変わることがよくわかるでしょう。地球との最接近を来月6日に控えた火星の明るさにも注目してみてください。

9月7日0時の東の空、月と火星の接近の様子と、25日19時の南の空、月・木星・土星の集合の様子(場所の設定は東京)。囲み内は拡大イメージ(視野6度の双眼鏡で観察したイメージ/小さい円はさらに拡大したイメージ)。ピンポイントでこの時刻というわけではなく、地平線の上にあって空が明るくなければ前後の時間帯でも見られる(方角は変化します)

この日以降、月はさらに細くなり、14日ごろに明けの明星と並びます(次の項目で解説します)。そして17日の新月を過ぎると夕方から宵の空に見えるようになり、25日に上弦過ぎの半月が木星・土星と並びます。この集合の様子も肉眼でよく見えますが、天体望遠鏡で3天体それぞれを拡大して観察するのもお勧めです。月のクレーター、木星の縞模様と周囲の衛星、土星の環などを見てみましょう。同じ倍率で観察すると見かけの大きさの違いもわかります。翌26日には月が土星の左まで動き、1日分だけ太くなりますので、その変化も確かめてみましょう。

明けの明星がプレセペ星団に接近

見やすい4惑星のうち金星は、現在「明けの明星」として夜明け前の東の空に見えています。明け方にはすでに「オリオン座」や「冬の大三角」など冬の星々が昇っていて、色とりどりの明るい星々がにぎやかに輝いていますが、明星の光はどの星よりも圧倒的に目立ちます。空気が澄んでくる時期なので、いっそう美しく感じられそうです。

その金星は今月、「かに座」の領域を通り過ぎていきます。「かに座」にはプレセペ星団という星の集団があり、中旬ごろにこのプレセペ星団と金星との共演が見られます。早起きして眺めてみましょう。

9月10日から18日まで2日ごとの、早朝4時の東の空の様子(場所の設定は東京)。囲み内は拡大イメージ(視野9度)で、金星とプレセペ星団(14日は月も)の位置関係を示している

プレセペ星団は比較的明るい天体なので空の条件が良ければ肉眼でも見えますが、街明かりなどの影響があると見つけるのは少し難しいかもしれません。双眼鏡を使えば見やすくなるので、お持ちの方は双眼鏡を金星に向けてみてください。図を参考にして金星との位置関係を頼りにすれば、プレセペ星団の星々とその周りを囲む4つの星が見えてくるでしょう。最接近は14日ごろです。

また、14日と15日には金星とプレセペ星団の近くに細い月も見え、さらに美しい空模様となります。もし双眼鏡がなくプレセペ星団が見えないとしても、細い月と金星が並ぶ様子だけでも早起きする価値のある光景です。

月や惑星は家の近くや普段の生活圏内でもじゅうぶん見られる天体です。そうした場所で空を眺めることは、日常の魅力の再発見につながるかもしれません。気軽で気楽な天体観察を、安全に楽しんでみてはいかがでしょうか。

今月の星座

いるか座、こうま座

「いるか座」「こうま座」は9月中旬の夜21時ごろに南の空の高いところに昇っている星座です。先月ご紹介した「こぎつね座」「や座」と同じくマイナーな星座ですが、ぜひ見つけてみましょう。

「夏の大三角」と「いるか座」「こうま座」。大きい囲み内は拡大イメージ(視野7度の双眼鏡で観察したイメージ)

位置の見当としては、夏の大三角の一角である「わし座」の1等星アルタイルと、南東の空を駆けている「ペガスス座」の2等星エニフの間あたりと覚えておくとわかりやすいでしょう。「いるか座」「こうま座」とも小さい星座で、「こうま座」は全天88星座のうち小さいほうから数えて2番目の星座です。

また、どちらにも3等星より暗い星しかないので、街明かりがあるような場所ではなかなか見えませんが、双眼鏡を使うと見やすくなります。視野の中に主な星々が全部入る、コンパクトでかわいい姿が楽しみましょう。とくに「いるか座」は、いるかが水面からジャンプしている様子を想像させるような形をしているので、イメージしながら眺めてみてください。

二重星いるか座ガンマ

「いるか座」の顔先に位置するγ(ガンマ)星は、オレンジと白の星が並んだ二重星です。倍率をやや高くした天体望遠鏡で観察すると、微妙な明るさの違いや美しい色の対比が楽しめます。

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は9月中旬の深夜1時ごろの星空です。10月中旬の深夜23時ごろ、11月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。

2020年9月中旬 深夜1時ごろの星空

南の空の高いところに、赤っぽく光る火星の輝きが目立ちます。西の空の「夏の大三角」、東の空の「オリオン座」など、明るい星は他にもありますが、火星の明るさは圧倒的です。地球と最接近する10月6日に向けてさらに輝きを増す様子を追ってみましょう。

南の空は、火星の他には明るい星が少ない領域です。南西の空にポツンと光る「みなみのうお座」の1等星フォーマルハウトには「秋のひとつ星」などという呼び方もあります。今シーズンは火星があるので1つではありませんが、火星が目立ちすぎるので、かえって少し影が薄くなってしまっています。忘れずに見ておきましょう。

昼は暑さが残る日もありますが、深夜には肌寒さが感じられる季節になりました。例年以上に体調管理にお気をつけて、星空観察をお楽しみください。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

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