Nikon Imaging
Japan
プレミアム会員 ニコンイメージング会員

2020年6月の星空

21日の夏至の日の午後に全国で部分日食が起こります。次に全国的に日食が見られるのは10年後なので、今回の貴重な機会に向けてしっかり準備しましょう。梅雨の晴れ間の星空もお楽しみに。

星空写真

ほたるの里にて
日が沈み、薄明が徐々に暗くなる中で、ぽつんぽつんとほたるの明かりが輝き始めました。ほたるは時間が経つにつれ上空へ舞い上がり、北斗七星と共演していました。
(※2018年撮影の画像です)

2018年6月4日 19時58分
ニコン D800E+AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED(14mm、ISO 3200、露出30秒、f/2.8)
撮影者:鈴木 祐二郎

6月の星空

南の空

南の空

2020年6月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、満月(6日)、上弦(28日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2020年6月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。

天文カレンダー

2日(火) 夕方~宵、月とスピカが並ぶ
5日(金) 夕方~翌6日未明、月とアンタレスが並ぶ
6日(土) 満月。次の満月は7月5日です
8日(月) 深夜~翌9日明け方、月と木星が接近(「今月の星さがし」で解説)
9日(火) 未明~明け方、月と土星が並ぶ(「今月の星さがし」で解説)
13日(土) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
未明~明け方、月と火星が接近(「今月の星さがし」で解説)
19日(金) 明け方、細い月と金星が並ぶ
21日(日) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
部分日食(夕方16時ごろ~18時ごろまで。「今月の星さがし」で解説)
夏至(北半球では、一年のうちで一番夜が短い日)
24日(水) 夕方、細い月とプレセペ星団が接近
25日(木) 夕方~宵、細い月とレグルスが接近
28日(日) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)
29日(月) 夕方~深夜、月とスピカが並ぶ

6月の惑星

水星

10日ごろまで、夕方の西北西の低空に見えます。日の入り30分後(東京で夕方19時30分ごろ)の高度は10度以上あり、太陽から大きく離れることのない水星としてはかなり好条件です。

ただし、水星を見つける目印になるような天体が近くにないので、探し出すのは少し難しいかもしれません。スマートフォンのアプリなどを使って方位と高度をよく確かめてから探してみましょう。肉眼でも見える明るさですが、双眼鏡を使うと見つけやすくなります。

金星

下旬ごろから「明けの明星」として明け方の東北東の低空に見えるようになります。

日の出30分前(東京で明け方4時ごろ)の高度は10度ほどと低いのですが、とても明るいおかげで、建物や山などに遮られなければ肉眼でもよく見えます。

19日の明け方に月齢27の細い月と並びます。一年で最も夜明けが早い時期の明け方の空を、ぜひ眺めてみましょう。

火星

「みずがめ座」を東に移動していき、月末ごろに「うお座」に移ります。日付が変わるころに昇ってきて、日の出1時間前(東京で朝3時20分ごろ)に南東の空に見えます。明るさは約マイナス0.2等級です。

いよいよ等級がマイナスになり、その明るさと赤っぽい色がいっそう目立つようになってきました。依然として未明から明け方にならないと見えませんが、先月までよりも早めに昇ってくるので、目にする機会もありそうです。10月の地球最接近に向けてさらに明るくなるので、長期にわたって明るさや色の感じ方の変化を追ってみましょう。

13日の未明から明け方、下弦の半月と並んで見えます。

木星

「いて座」と「やぎ座」の境界付近(いて座の領域)にあります。夜21時ごろに昇ってきて、未明2時ごろに南の空に見えます。明るさは約マイナス2.7等級です。

双眼鏡を使うと木星を公転する4つのガリレオ衛星が、天体望遠鏡を使うと衛星のほかに木星表面の縞模様が見えます。空の暗いところまで出かけなくても自宅や近所でじゅうぶん見えますので、機材をお持ちの方はぜひ観察してみましょう。

肉眼では木星と土星が右左に並ぶ光景が見ものです。色と明るさの違いに注目してみましょう。8日の深夜から9日の明け方にかけては満月過ぎの月も接近し、3天体の集合が見られますので、こちらにも注目してみてください。

土星

「いて座」と「やぎ座」の境界付近(やぎ座の領域)にあります。夜21時ごろに昇ってきて、未明2時ごろに南の空に見えます。明るさは約0.2等級です。天体望遠鏡をお持ちの方は環を観察してみましょう。

肉眼や双眼鏡では木星と土星が右左に並ぶ光景が見ものです。色と明るさの違いに注目して眺めてみましょう。9日の未明から明け方には月も並びます。

今月の星さがし

一番の見ものは21日午後の部分日食です。ちょうど日曜日なので見やすい方も多いでしょう。梅雨のシーズンですが、当日は晴れてほしいですね。また、先月に続いて月・木星・土星の3天体集合も起こります。

8日深夜から9日明け方に月・木星・土星が集合、13日には月と火星

今年の木星と土星は夏から秋にかけて見やすくなります。今月は22時から23時ごろには南東の低空に見え、日付が変わる前には目にできるようになっています。2つ並んでいるので、とくに目につくことでしょう。右の明るいほうが木星で、左が土星です。

8日の深夜から9日の明け方には、この2惑星の近くに満月を過ぎたばかりの明るい月が接近し、3天体の集合が起こります。視野が広めの双眼鏡なら、3つを同一視野内で見ることができます。平日の深夜ではありますが、天体望遠鏡でそれぞれを拡大して観察するのも楽しみです。月のクレーター、木星の縞模様やガリレオ衛星、土星の環と、どれも見飽きることがありません。また、周りの星や地上の風景と共に、肉眼で広く眺めたり写真に収めたりするのも面白いでしょう。

6月9日 未明2時の南の空の様子(場所の設定は東京)。囲み内は拡大イメージ(視野6度の双眼鏡で観察したイメージ/小さい円はさらに拡大したイメージ)

6月13日 未明2時の南東の空の様子(場所の設定は東京)。囲み内は拡大イメージ(視野6度の双眼鏡で観察したイメージ/小さい円はさらに拡大したイメージ)

その4日後となる13日の未明から明け方には、さらに欠けて下弦になった半月が火星と接近します。火星の見ごろは今年の秋から冬ごろですが、もう明け方には赤い輝きを見られるようになっているのです。火星はまだ木星ほど明るくはありませんが、そばに半月があっても負けないくらいには目立ちます。月と並ぶ13日だけでなく他の日にも火星を眺めて、これが10月の地球最接近のころにはもっと明るくなるのだと想像し期待をふくらませてみてはいかがでしょうか。

21日の午後に全国で部分日食

夏至の日の21日、16時ごろから18時ごろにかけて、太陽の一部が月に隠される部分日食が全国で見られます。日本国内で日食が見られるのは昨年12月26日以来です。

太陽が欠け始める時刻や、欠け具合が最も大きくなる(食最大の)時刻は、観察する場所によって異なりますが、だいたい16時前後に始まり、17時10分ごろに最も大きく欠けます。おおむね南西の地方ほど早く始まり、欠ける部分が大きくなります。また、日食が終わる時刻は18時ごろで、昼が一番長い日とはいえ、太陽はかなり低くなっています。

主な地点での、日食開始の時刻、最も大きく欠ける時刻とその時の太陽の形、日食終了の時刻

東京から見た日食

日食観察は太陽を見ることと同じなので、「日食グラス」など安全性が確認された専用の道具を正しく使う必要があります。不適格な道具では、太陽のまぶしさは抑えられても紫外線や赤外線などを防ぐことはできず、目を傷める可能性があります。

日食グラスを使うと、太陽以外は見えなくなります。太陽を見ていないときにグラスを外すのはもちろんのこと、段差や歩行者、車など、安全にも配慮が必要です。とくに子供が観察する際には、日食グラスの正しい使い方や周囲の様子の確認など、大人がしっかりと気配りしましょう。また、木漏れ日やピンホール投影の像でも欠けた太陽の形がわかり、これは道具を使わなくても安全に見られます。

この日、アラビア半島南部やインド北部、中国、台湾などでは金環日食が見られます。こちらはインターネット中継などでお楽しみください。

ちなみに次回、日本から見られる日食は2023年4月20日(九州南部~紀伊半島より南で部分日食)、その次は2030年6月1日(北海道で金環日食、全国で部分日食)です。部分日食であっても日常の生活圏内で見られるチャンスはめったにないので、この機会を逃さないようにしましょう。梅雨の時季ですので、てるてる坊主もお忘れなく。

今月の星座

りゅう座

「りゅう座」は北天の星座で、「おおぐま座」(北斗七星)や「こぐま座」と同様に日本ではほぼ一年中見ることができますが、夜21時ごろに高く昇って見やすいのは6月ごろです。星図にあるように、北斗七星と北極星、「こと座」の1等星ベガに囲まれた、平仮名の「て」のように並んだ星々が「りゅう座」を構成しています。

「りゅう座」(星雲の画像クレジット:NASA, ESA, HEIC, and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA))

竜の頭に位置するエルタニンは2等星で、意外と目立ちます。宵のころ、北東の空に昇ったベガの近くを眺めて「あんなところに星があったかな」と思うことがあれば、おそらくエルタニンでしょう。「りゅう座」の他の星は3等級より暗いため、空の条件が良いところでなければ見えないかもしれません。北斗七星や北極星、ベガとの位置関係を頼りにしながら、長い体をたどったり想像したりしてみましょう。

竜の頭の星々

竜の頭に位置する4つの星々は、2等級のエルタニンと3等級のラスタバン、そして4、5等級の明るさです。つまり、どの星まで見えているかによって夜空の暗さを示す指標になるのです。郊外でも双眼鏡を使うと4つとも見えるので、探してみてください。

キャッツアイ星雲

竜の首の辺りには、猫の目のように見えることからその名が付けられた「キャッツアイ星雲」(カタログ番号ではNGC 6543)という天体があります。

太陽のような星は一生の終わりに差し掛かると、宇宙空間にガスを放出します。そのガスが中心の星に照らされて光っているのが、キャッツアイ星雲のような「惑星状星雲」に分類される天体です。

星図に示したのはハッブル宇宙望遠鏡が撮影した星雲の姿で、複雑に入り組んだ構造や同心円状の模様などが目立ちます。インターネットで検索すると、さらに外側に広がった様子やX線で観測した画像など、大口径の望遠鏡や観測衛星がとらえた様々な表情を楽しめます。曇りや雨の夜には天体画像を眺めて、宇宙を楽しみましょう。

トゥバン

竜の尾の中ほどにある4等星トゥバンは目立つ星ではありませんが、歴史的には重要な意味のある天体です。

約4000~5000年前、エジプト文明が栄えたころは、このトゥバンが北極星でした。「北極星」とは地球の自転軸を天に伸ばした先のあたりに位置する星を指し、現在は「こぐま座」のポラリスが北極星です。自転軸を伸ばした先の位置は地球の歳差という運動(不安定なコマが見せる首振りに似た運動)によって動いていくので、北極星となる星も年月とともに移っていきます。

現在の明るい空では見つけることも難しい星ですが、エジプト文明当時の空なら肉眼でも簡単に見え、北の方角を示す星として重宝されていたことでしょう。人類の歴史や当時から続く天体観察の意義、楽しさなどに思いをめぐらせながら、ぜひトゥバンを探してみてください。

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は6月中旬の深夜1時ごろの星空です。7月中旬の深夜23時ごろ、8月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。

2020年6月中旬 深夜1時ごろの星空

頭の真上(図の真ん中)に輝くのは、七夕の織り姫星として有名な「こと座」のベガです。ベガと、その南にある「わし座」のアルタイル(彦星)、そして「はくちょう座」のデネブを結ぶと「夏の大三角」ができあがります。また、ベガと北西の空に見える「北斗七星」の間に、「今月の星座」でご紹介した「りゅう座」があります。竜の頭の四角形を探してみましょう。

南の空のやや低いところでは、木星と土星が並んで輝いていて目を引きます。空の条件が良ければ、木星と土星の右あたりに天の川が見えるかもしれません。東南東の低空には火星も見え始めました。木星には及ばないものの土星やベガよりは明るく、赤っぽい色もよく目立ちます。

夜が短く晴れ間も少ない時期ですが、小さなチャンスも逃さずに短時間でも空を見上げて、天体観察を楽しみましょう。引き続き、どうぞご安全に。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

星空観察のワンポイントアドバイス

ニコンイメージングプレミアム会員
ニコンイメージング会員