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2020年5月の星空

金星が高度を下げ、そろそろ宵の明星としての見納めを迎えます。一方、木星や土星は日付が変わる前に昇り、観察しやすくなってきます。春の星々や月や惑星を眺めて、心が少しでも穏やかになりますように。

星空写真

北軽井沢にて
2019年12月28日にハワイのATLAS(小惑星地球衝突最終警報システム)によって発見されたアトラス彗星が、今年3月におおぐま座の銀河M81、M82と接近したタイミングで撮影した画像です。彗星と銀河の色の対比が上手く表現できました。

2020年3月17日 1時51分
ニコン D810A+AF-S NIKKOR 120-300mm f/2.8E FL ED SR VR(300mm、ISO 800、露出180秒×8枚を合成、f/4)
撮影者:高岡 誠一

5月の星空

南の空

南の空

2020年5月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、満月(7日)、上弦(1日(レグルスの右)/30日(レグルスの左))の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2020年5月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。

天文カレンダー

1日(金) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)
2日(土) 夕方~深夜、月とレグルスが接近
5日(火) 立夏(こよみの上で夏の始まり)
6日(水) みずがめ座η流星群の活動がピーク(「今月の星さがし」で解説)
未明、月とスピカが並ぶ
7日(木) 満月。次の満月は6月6日です
9日(土) 未明~明け方、月とアンタレスが並ぶ
13日(水) 未明~明け方、月と木星、土星が接近(「今月の星さがし」で解説)
14日(木) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
15日(金) 未明~明け方、月と火星が並ぶ
22日(金) このころ、夕方に水星と金星が大接近(「今月の星さがし」で解説)
23日(土) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
24日(日) 夕方、細い月と水星、金星が接近(「今月の星さがし」で解説)
26日(火) 宵、細い月とポルックスが並ぶ
27日(水) 夕方~宵、月とプレセペ星団が並ぶ
29日(金) 夕方~深夜、月とレグルスが接近
30日(土) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)

5月の惑星

水星

15日ごろから、夕方の西北西の低空に見えるようになります。日の入り30分後(東京で夕方19時15分ごろ)の高度は10度前後あり、太陽から大きく離れることのない水星としてはかなり好条件です。

とくに、20~24日ごろは水星のそばに明るい金星があるので、金星を目印にして水星を見つけることができます。「今月の星さがし」を参考にして、見晴らしの良い場所で探してみましょう。肉眼でも見える明るさですが、双眼鏡を使うとわかりやすくなります。

金星

「宵の明星」として夕方に西から西北西の空に見えます。

日の入り30分後(東京で夕方19時10分ごろ)の高度は、上旬には25度ほどありますが、下旬には10度よりも低くなります。とても明るいので建物や山などに遮られなければ低くなっても見えますが、中旬以降は見晴らしの良い場所で眺めてみましょう。天体望遠鏡で観察すると、大きく欠けた形がわかります。

22日ごろに水星と大接近します。また24日には細い月も接近し、月と水星、金星が夕空で三角形に並びます。「今月の星さがし」を参考に、3天体の共演をお楽しみください。

火星

「やぎ座」から「みずがめ座」へと移動していきます。未明1時ごろに昇ってきて、日の出1時間前(東京で朝3時30分ごろ)に南東の空に見えます。明るさは約0.2等級です。

10月の地球との最接近に向けて、少しずつ明るさを増しています。特徴的な赤っぽい色もわかりやすくなってきました。今まで見ていなかった方も、これからでもじゅうぶん間に合いますので、長期にわたって明るさや色の感じ方の変化を追ってみましょう。

15日の未明から明け方、下弦の半月と並んで見えます。

木星

「いて座」と「やぎ座」の境界付近(いて座の領域)にあります。深夜23時ごろに昇ってきて、日の出1時間前(東京で朝3時30分ごろ)に南の空に見えます。明るさは約マイナス2.4等級です。

双眼鏡を使うと木星を公転する4つのガリレオ衛星が、天体望遠鏡を使うと衛星のほかに木星表面の縞模様が見えます。空の暗いところまで出かけなくても自宅や近所でじゅうぶん見えますので、機材をお持ちの方はぜひ観察してみましょう。

肉眼では木星と土星が右左に並ぶ光景が見ものです。色と明るさの違いを感じながら眺めてみてください。13日の未明から明け方にはここに下弦前の半月も接近し、3天体の集合が見られます。2つの惑星の間隔は18日ごろに最も小さくなり、その後は9月上旬までかけて間隔が開いていきますので、この変化にも注目してみましょう。

土星

「いて座」と「やぎ座」の境界付近(やぎ座の領域)にあります。深夜23時30分ごろに昇ってきて、日の出1時間前(東京で朝3時30分ごろ)に南の空に見えます。明るさは約0.3等級です。天体望遠鏡をお持ちの方は環を観察してみましょう。

肉眼や双眼鏡では木星と土星が右左に並ぶ光景が見ものです。色と明るさの違いを感じながら眺めてみてください。13日の未明から明け方にはここに下弦前の半月も接近し、3天体の集合が見られます。2つの惑星の間隔は18日ごろに最も小さくなり、その後は9月上旬までかけて間隔が開いていきますので、この変化にも注目してみましょう。

今月の星さがし

金星が低くなっていきます。宵の明星としては今月を最後に当分見えないので、しっかり見ておきましょう。水星との接近も楽しめます。13日の明け方に月・木星・土星が集合する光景も見ものです。

6日未明から明け方、みずがめ座η流星群

「みずがめ座η流星群」は、毎年ゴールデンウィークの終わりごろに活動が活発になる流星群です。8月の「ペルセウス座流星群」や12月の「ふたご座流星群」ほど多くの流れ星が飛ぶわけではありませんが、毎年確実に活動が見られる流星群です。今年は6日の明け方が一番の見ごろと予想されていますが、月明かりの影響で暗い流星は見えなくなるので、条件は良くありません。

5月6日 未明3時の空全体の様子(場所の設定は東京)。流れ星は「みずがめ座」(放射点)を中心とした空全体に飛ぶように見える

流れ星観察の重要なポイントは、空を広く見渡すことです。流れ星は「みずがめ座の方向だけ」に飛ぶのではなく「みずがめ座(放射点)を中心として空のあちこち」に飛ぶので、狭い範囲を集中して見るのではなく、広い範囲をゆったりと眺めましょう。広く見ることが大切ですから、双眼鏡や天体望遠鏡は不要です。

月明かりや街明かりが直接目に入らないように、街灯や月から離れた方向を中心に眺めると良いでしょう。東の空の高いところには「夏の大三角」が、南東の空には木星と土星が見えているので、このあたりに流れ星が飛べば見栄えがしそうです。

たった1つでも明るい流れ星が見えれば嬉しいものですし、もし1つも見えなかったとしても「ゆっくり空を見上げる」時間を持つことは大切です。あまり無理をせず、10分だけでも流れ星を待ってみてはいかがでしょうか。

13日未明から明け方、月・木星・土星が集合

月・木星・土星は、観察会の人気ベスト3と言える天体でしょう。天体望遠鏡でクレーターや縞模様、環を見るのは楽しいものです。

現在、木星と土星は日付が変わる前後の時間帯に昇ってきて、夜明けごろに南東から南の空に並んで輝いています。2つ並んだ明るい星のうち、右にある明るいほうが木星、左が土星です。13日の未明から明け方にはここに下弦前の半月が近づいてきて、人気の3天体が集合するという現象が起こります。

5月13日 未明2時の南東の空の様子(場所の設定は東京)。囲み内は拡大イメージ(視野6度の双眼鏡で観察したイメージ/小さい円はさらに拡大したイメージ)

双眼鏡の視野の中に3つの天体が収まるほど近づくのは比較的珍しいことです。もちろん肉眼でもじゅうぶん楽しめますので、ぜひ気軽に眺めてみましょう。

木星と土星は夏以降、宵空で観察しやすくなります。そのころには落ち着いて星空を見上げられることを願いながら、ご覧になってはいかがでしょうか。先ほどの流星群と同様に未明から明け方の現象なので、やはりあまり無理はしないようにしてください。

宵の明星が見納め、水星と大接近

昨年11月ごろから一番星として夕方から宵に西の空に見えてきた「宵の明星」の金星が、いよいよ太陽に近くなってきました。今月上旬にはまだ比較的高く見えますが、月の後半からはどんどん低くなっていくので、そのぶん見つけにくくなります。

低いとはいえ非常に明るいので、西北西の方向が開けた場所で探せば見つかります。位置を示してくれるスマートフォンのアプリなどもあるので、活用してみてください。

5月20日から24日まで1日ごとの、夕方の西北西の空の様子(場所の設定は東京、19時25分ごろ)。囲み内は拡大イメージ(視野6度の双眼鏡で観察したイメージ/24日の小さい円はさらに拡大したイメージ)

22日前後には、この金星の近くに水星も見えます。水星は金星よりも太陽に近いため、比較的明るいにもかかわらず見つけにくい惑星ですが、金星を目印にできる今回は見つけやすいタイミングです。星図を参考にして金星との位置関係を確かめ、探してみてください。肉眼でも見えますが、双眼鏡があるとわかりやすいでしょう。

24日には月齢2の細い月も近くに並び、水星・金星とで整った三角形を作ります。先ほど「(月・木星・土星と)3天体が双眼鏡の視野の中に収まるのは珍しい」と紹介したばかりですが、その珍しい接近が24日にも別の3天体で再び起こることになります。低空という点ではやや難易度が高めですが、時間帯の点では見やすい現象です。ぜひ観察してみましょう。

金星は今後、見かけ上太陽と同じ方向に位置するようになり、6月中旬ごろからは「明けの明星」として明け方の東の低空に姿を見せるようになります。再び宵の明星として見えるようになるのは約1年後です。当分先まで夕空の金星を見ることはできなくなるので、今月は見送る気持ちで金星を眺めてみてはいかがでしょうか。

今月の星座

ケンタウルス座、みなみじゅうじ座

5月中旬の夜21時ごろ、南の空に「春の大三角」が大きく広がっています。そのずっと下のほう、地平線近くには、「ケンタウルス座」や「おおかみ座」という少し聞き慣れない星座があります。「ケンタウルス座」は半人半馬のケンタウルスを描いた星座で、その槍に突かれているのが「おおかみ座」です。

さらに、ケンタウルスの後ろ足あたりには「南十字星」として知られている「みなみじゅうじ座」があります。

「ケンタウルス座」「みなみじゅうじ座」「おおかみ座」(NGC 5128とNGC 5139の画像クレジット:ESO DSS2 (AURA))

本州あたりでは地平線に近く見えづらい(ケンタウルスの下半分や南十字星はまったく見えない)星座ですが、沖縄や小笠原では5月の真夜中ごろ、南の地平線ギリギリのところにケンタウルスの足先や南十字星が昇ります。さらに南、シンガポールあたりでは多少見やすくなり、オーストラリアあたりまで行けばほぼ一年中見ることができます。

「ケンタウルス座」や南十字星を見つける際に目印になるのは、ケンタウルスの前足に並んでいる2つの1等星、リギルケンタウルスとハダルです。明るいほうのリギルケンタウルスからハダルへと線を結んで延ばした先に、南十字星があります。実は南十字星のアクルックス(図で十字の下の星)とミモザ(左の星)も1等星なので、この付近には4つも1等星が集まっています。明るめの2等星や天の川もあり、とても見ごたえのある領域です。ちなみに「みなみじゅうじ座」は、全天88星座の中で一番小さい(領域が狭い)星座です。

リギルケンタウルス

「ケンタウルス座」のリギルケンタウルスは、様々な点でとても興味深い星です。

まず、リギルケンタウルスを天体望遠鏡で観察すると、2つの1等星(0等級と1.4等級)に分離して見えます。公式には明るい0等級の星がリギルケンタウルスで、暗い1.4等級の星には「トリマン」という別の名前が付いています。つまり実は、「ケンタウルス座」にはハダルを含めて1等星が3つもあることになります。

次に、リギルケンタウルス&トリマンは、太陽系から最も近い恒星系です。最も近いといっても光の速さで4.4年ほどかかります(時速1000kmの飛行機なら約500万年かかります)。この恒星系にはもう1つ暗い星も含まれていて、この「プロキシマケンタウリ」という名前の星が太陽系に最も近い恒星です。距離は約4.2光年です。

さらに、プロキシマケンタウリにはその周りを回る惑星が見つかっています。つまりこの天体は、太陽系の惑星以外で一番近くにある惑星ということになります。

ω星団、ケンタウルス座A電波源

「ケンタウルス座」にある別の見どころ天体に「ω(オメガ)星団」(カタログ番号ではNGC 5139)があります。数百万個もの恒星がボール状に集まった球状星団というタイプの天体で、空の条件が良ければ肉眼でも見えるほどの明るさと大きさを誇ります。

また、NGC 5128というカタログ番号の天体は、中央を暗黒部が横切る姿が見事な銀河です。非常に強力な電波を放っていることから「ケンタウルス座A電波源」という名前で呼ばれることもあります。双眼鏡でもボンヤリとした像が見えますが、天体望遠鏡や天体写真向けの対象です。

日本ではどちらも高く昇らないため見づらいのですが、南半球では必見の天体です。インターネットの画像検索などで調べながら、いつか実際に自分の眼で見ることを想像するのも楽しいかもしれませんね。

コールサック、宝石箱星団

「みなみじゅうじ座」にもいくつかの見どころがあります。まず1つ目は「コールサック(石炭袋)」という愛称が付けられた領域で、天の川の流れの中に、穴が開いたように見える部分です。星図(文字や線がないもの)の、アクルックスとミモザのすぐ左が不自然に暗くなっているのがわかるでしょうか。

コールサックの正体は、ガスや塵が濃く集まった暗黒星雲というタイプの天体です。背景の星の光を遮ってしまうので、まるで何もないように見えるというわけです。天の川が見えるくらい空の条件が良ければ、肉眼でハッキリと存在がわかります。機会があれば、ぜひ忘れずに眺めてみましょう。

2つ目の見どころは「宝石箱星団」(カタログ番号ではNGC 4755)という星の集団で、ミモザのすぐ隣にあります。観察には天体望遠鏡が必要ですが、星の配列や色、明るさのバランスがよく、まさに宝石箱と呼ぶにふさわしい美しさがあります。こちらも機会があれば、ぜひ観察してみましょう。

緑の線:各星座の領域(境界線)/オレンジの線:この線より上(北)の星が、札幌・東京・那覇のそれぞれで見られる。札幌ではω星団は見えない。東京ではω星団は低空に見えるがリギルケンタウルスや南十字星は見えない。那覇では非常に低空ではあるが南十字星が全部見える

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は5月中旬の深夜1時ごろの星空です。6月中旬の深夜23時ごろ、7月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月が見えることもあります)。

2020年5月中旬 深夜1時ごろの星空

「春の大曲線」や「春の大三角」が西の空へと移ってきました。西を正面にして空を見上げる(図を時計回りに90度回転させて見ることになります)と、春の大曲線が北西(右)から南西(左)へと大きなアーチを描きます。北斗七星からアルクトゥールス、スピカと、アーチをたどってみましょう。

南の空では「さそり座」のアンタレスの赤さが目立ちます。そこから東へ目を移すと木星と土星が並ぶ光景が目を引き、さらに東の低いところに火星も昇り始めています。また、東の空の高いところには「夏の大三角」が輝いています。明るい1等星や惑星の色や明るさの違いは肉眼でもよくわかるので、気軽に楽しめるでしょう。

悠長に星空を眺めよう、という気持ちになるのは少し難しいかもしれませんが、星明かりや月の光に、安らぎや落ち着きを感じられるかもしれません。自宅で5分だけでも、空を見上げてみてはいかがでしょうか。どうぞご安全に。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

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