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2020年3月の星空

明け方の南東の空に火星・木星・土星が集合しています。3惑星の並び方が毎日変わる様子は見ものです。宵空では北斗七星やしし座が高くなり、星座からも春の訪れが感じられます。

星空写真

嬬恋高原にて
嬬恋高原の丘陵地帯に拡がる田園風景、カラマツ防風林、浅間山、夏の銀河、木星と、5つのフォトジェニックな要素をバランス良くまとめることができました。

2019年3月9日 4時50分
ニコン D810A+AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G(ISO 12800、露出5秒×6枚を合成、f/2.5)
撮影者:高岡 誠一

3月の星空

南の空

南の空

2020年3月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、満月(10日)、上弦(3日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

北の空

2020年3月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空の様子です。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。
月は、上弦(3日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

天文カレンダー

2日(月) 夕方~深夜、月とアルデバランが接近
3日(火) 上弦(日没ごろに南の空に見え、夜半ごろ西の空に沈む)
8日(日) このころ、夕方~宵に金星と天王星が接近(「今月の星さがし」で解説)
夕方~翌9日未明、月とレグルスが接近
10日(火) 満月。次の満月は4月8日です
12日(木) 明け方、月とスピカが並ぶ
16日(月) 下弦(夜半に東の空から昇り、明け方に南の空に見える。下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
18日(水) 未明~明け方、月と火星が並ぶ
19日(木) 未明~明け方、月と土星が接近、火星と木星も並ぶ(「今月の星さがし」で解説)
20日(金) 春分
21日(土) このころ、未明~明け方に火星と木星が大接近(「今月の星さがし」で解説)
24日(火) 新月(下弦~新月は夜空が暗く、星が見やすくなります)
28日(土) 夕方~宵、細い月と金星がやや離れて並ぶ
29日(日) 宵、月とアルデバランが並ぶ

3月の惑星

水星

中旬ごろから、明け方の東南東の低空に見えます。日の出30分前(東京で朝5時10分ごろ)の高度は約6度で、太陽から大きく離れることがない水星としてはまずまずの条件です。

とはいえ、日の出前の明るい空の中で低いところにある水星を見つけるのはかなり難しいので、スマートフォンのアプリなどで位置をよく確かめてから見晴らしの良い場所で探してみましょう。双眼鏡を使うと見つけやすくなります。

金星

「宵の明星」として夕方から宵に西の空に見えます。

日の入り1時間後(東京で夕方18時50分ごろ)の高度は30度を超え、とてもよく目立ちます。見晴らしが良ければ、夜21時ごろになっても沈まずに見えるでしょう。反対に、日の入り前にも見つけられるかもしれません。スマートフォンのアプリなどで位置を確かめ、太陽を目に入れないように気を付けながら探してみてください。

上旬から中旬に天王星と接近します。金星を目印にして天王星を見つけるチャンスなので、「今月の星さがし」を参考に観察してみてください。また、28日に月齢4の細い月とやや離れて並びます。さらに月末から来月初めにかけては「おうし座」のプレアデス星団(すばる)とも接近します。

火星

「いて座」にあります。未明2時30分ごろに昇ってきて、日の出1時間前(東京で朝4時50分ごろ)に南東の空のやや低いところに見えます。明るさは約1.0等級です。

先月よりも地球との距離が小さくなったため少し明るくなりましたが、目立って明るいというほどではありません。10月に地球と最接近するころまで、長期にわたって明るさの変化を追ってみましょう。

南東の空に火星と木星、土星が集合している光景は見ものです。21日ごろに火星と木星が最接近し、27日ごろには3惑星がおよそ等間隔に並び、4月1日ごろに火星と土星が最接近します。「今月の星さがし」を参考に、3惑星の位置関係がどんどん変わっていく様子を観察してみてください。18日と19日には、やや細い月もこの並びに加わります。

木星

「いて座」にあります。未明2時45分ごろに昇ってきて、日の出1時間前(東京で朝4時50分ごろ)に南東の空のやや低いところに見えます。明るさは約マイナス2.0等級です。

日の出1時間前の高度は20度ほどと低めですが、そろそろ天体望遠鏡でも観察できるようになってきました。明け方に望遠鏡をセットするのは大変ですが、お持ちの方は木星の縞模様や周囲を巡る4つのガリレオ衛星を観察してみましょう。ガリレオ衛星は双眼鏡でも見られます。

南東の空に火星と木星、土星が集合している光景は見ものです。21日ごろに火星と木星が最接近し、27日ごろには3惑星がおよそ等間隔に並びます。「今月の星さがし」を参考に、3惑星の位置関係がどんどん変わっていく様子を観察してみてください。18日と19日には、やや細い月もこの並びに加わります。

土星

「いて座」から「やぎ座」へと移動します。未明3時15分ごろに昇ってきて、日の出1時間前(東京で朝4時50分ごろ)に南東の空の低いところに見えます。明るさは約0.5等級です。まだ低いので、天体望遠鏡での観察にはあまり適していません。

南東の空に火星と木星、土星が集合している光景は見ものです。27日ごろに3惑星がおよそ等間隔に並び、4月1日ごろに火星と土星が最接近します。「今月の星さがし」を参考に、3惑星の位置関係がどんどん変わっていく様子を観察してみてください。18日と19日にはやや細い月もこの並びに加わり、とくに19日は土星と月が接近します。

今月の星さがし

未明から明け方にかけて南東の空に火星・木星・土星が集合している光景が見られます。並び方がどんどん変わっていく様子を確かめてみましょう。宵空では金星が圧倒的に目立っており、その近くに天王星も見えています。

宵の明星と天王星

昨年の晩秋から一番星として夕方の西の空に見えている「宵の明星」の金星は、今月も圧倒的な輝きを放っていて存在感があります。今月は地球から見た金星の位置が太陽から最も大きく離れる時期にあたるので、太陽の眩しさの影響が少し弱くなるため、いっそう目立ちます。

今月上旬から中旬にかけて、この金星の近くに天王星も見えます。肉眼で見るのは難しい天王星ですが、双眼鏡を使うと比較的簡単に見えます。とくに金星という目印のおかげで見つけやすくなっているので、このチャンスに天王星を見てみましょう。

3月4日から12日まで2日ごとの、19時の空の様子(場所の設定は東京)。囲み内は拡大イメージ(視野6度の双眼鏡で観察したイメージ)

星図を参考に、金星との位置関係を頼りにして天王星の位置の見当をつけてみてください。8日の星図の囲み内に表示される「天王星を含む三角形」の星の並びが手がかりになります。時間が早いうちは空が暗くなりきっていないので天王星が見えず、反対に時間が遅くなりすぎると金星や天王星が低くなるので、観察のタイミングにも気をつけましょう。

金星と天王星が見かけ上最接近するのは8日ごろですが、このとき地球からの距離は金星が約1.3億km、天王星が約31億kmで天王星のほうが25倍も遠くにあります。こうした点も意識すると、空に奥行きが感じられるかもしれません。

金星は天王星と離れた後、28日に月齢4の細い月と並びます。また、月末から来月上旬に「おうし座」のプレアデス星団(すばる)に近づき、最接近する4月4日ごろには金星が星団の一部になったかのように見えます。次にご紹介する3惑星の集合も含めて、見かけの天体接近が織りなす様々な美しい共演をお楽しみください。

未明から明け方の空で火星・木星・土星が大集合

未明から明け方にかけて、南東の空に3つの明るい惑星が見えています。一番明るいのが木星、次に明るいのが土星で、もう一つが赤っぽい色の火星です。先月下旬ごろから3惑星が並んでいる光景が楽しめるようになっていましたが、今月はよりコンパクトになり、「並ぶ」というよりは「集まる」というほうがピッタリの光景になります。

まず上旬のころは木星を挟んで火星が右上に、土星が左下に見えます。このころはまだ「並ぶ」状態で、5日ごろに3惑星が等間隔になります。

その後、火星と木星の間隔がどんどん小さくなっていき、中旬ごろにはかなり接近して見えるようになります。18日と19日には細めの月も近づき、土星を含めて4天体が並ぶ光景が見られるでしょう。

3月13日から4月2日まで2日ごとの、朝4時半の南東の空の様子(場所の設定は東京)。囲み内は拡大イメージ(視野6度の双眼鏡で観察したイメージ/21日の小さい円は視野1度=50倍程度の天体望遠鏡で観察したイメージ)

火星と木星は21日ごろに最接近します。50倍程度の天体望遠鏡で同じ視野内に見えるほどの大接近となり、火星の色と木星の縞模様、ガリレオ衛星を一緒に見ることができます。望遠鏡をお持ちの方は、早朝ではありますがぜひ観察してみましょう。

その後、火星は木星を離れて土星に近づいていき、27日ごろに再び3惑星が等間隔に並びます。5日ごろの並び方とは順番も間隔も異なることに注目してください。このころになると3惑星が「集まって」いる感じが強くなります。火星と土星は4月1日ごろに最接近し、やはり望遠鏡で両惑星が一緒に見えるほどの大接近となります。

3月27日の太陽系の惑星の配列。わかりやすさのため太陽や惑星は拡大して表示(拡大率はそれぞれ異なる)。この日の地球から火星は約2.3億km、木星は8.1億km、土星は15.6億km

惑星の並び方の変化を観察したり色や明るさの違いを感じたりするのは、肉眼や双眼鏡でもじゅうぶん可能です。望遠鏡がなくても気軽に楽しめるので、ぜひ早起きして眺めたり、地上風景を入れて撮影したりしてみましょう。また「宵の明星と天王星」のところでもご紹介したように、地球からそれぞれの惑星までの距離が異なることも意識して眺めてみると、違った視点での面白さも感じられるかもしれません。夜明けが早くなってきたことや空気の冷たさが少し和らいだことなど、地球の季節の変化も一緒に、味わってみてください。

今月の星座

アルゴ座

3月中旬の夜21時ごろ、南西の空に輝く「おおいぬ座」のシリウスの左、真南の空の低いあたりには明るい星が少なく、目立った星の並びもありませんが、ここには大きな船の星座「アルゴ座」が広がっています。ギリシャ神話では勇者ヘルクレスや双子のカストルとポルックスを乗せて冒険を繰り広げた船とされています。

実は、「アルゴ座」は現存しない星座です。もともとは2世紀ごろに定められた歴史の長い星座でしたが、現在では「とも(船尾)」「ほ(帆)」「らしんばん(羅針盤)」「りゅうこつ(竜骨)」という4つの星座になっています。

「とも座」「ほ座」「らしんばん座」「りゅうこつ座」(星雲の画像クレジット:ESO DSS2 (AURA))

日本(本州あたり)から見ると南の水平線(地平線)近くを左から右へと進んでいくように見え、いかにも船らしい姿に感じられるのですが、低いためあまり注目されません。

一方、オーストラリアなどでは頭の真上近くに見え、大きな船が天を悠々と渡っていくように見えます。この付近には天の川も流れているので、肉眼や双眼鏡で美しい眺めを楽しめます。南半球で星空を眺める機会があれば、ぜひご堪能ください。

カノープス

「りゅうこつ座」のカノープスは、夜空に見える星としてはシリウスに次いで2番目に明るい輝星です。東京あたりでは冬の時期、地平線すれすれに見えますが、大気の影響でかなり暗くなってしまい、全天2位の明るさを実感することはなかなかできません。

日本には「昇ったと思ったらすぐに沈んでしまう」ことから「横着星」という呼び方があります。また中国では「南極老人星」や「寿星」と呼び、一目見ることができれば寿命が延びる縁起の良い星とされています。機会があれば、南の見晴らしが良いところでぜひ探してみましょう(見やすいのは1~2月ごろです)。

散開星団M46、47

「とも座」にある2つ並んだ天体M46とM47(Mはカタログの符号)は、双眼鏡で見ることができる散開星団です。散開星団とは、誕生して数千万年から数億年程度の若い星々が数十~数百個集まってできている天体です。

M46とM47は、シリウスと「うみへび座」の2等星アルファルドの間あたりに位置しています。星図にあるように、東(左)のM46のほうが微光星の集まりで暗めに見え、西のM47は明るくややまばらに見えます。街中ではかすかにしか見えませんが、2つの印象の違いはわかるでしょう。天体望遠鏡で見比べてみると、それぞれの個性がよりハッキリとわかっていっそう面白く感じられます。

エータカリーナ星雲NGC 3372

エータカリーナ星雲は、宇宙に漂うガスが星の光を受けて光って見える天体で、先月ご紹介した「オリオン座大星雲」と同種の天体です。双眼鏡で観察すると、白く淡い雲のような印象に見えます。南天の名所の一つで、南半球では見逃せません。

にせ十字、ダイヤモンド十字

「にせ十字」は、「ほ座」と「りゅうこつ座」の星4つでできる星の並びです。本物の南十字星より少し暗いものの、本物より大きいため目立ち、見間違えられることがあります。

また、「にせ十字」と本物の南十字星(「みなみじゅうじ座」)の間には、やはり4つの星が十字に並ぶ「ダイヤモンド十字」があります。他の2つと反対向きで、やや細長く見えます。

エータカリーナ星雲と同様、南半球では見やすく見逃せない星の並びなので、ぜひ3つの十字を見つけてみましょう。

緑の線:各星座の領域(境界線)/オレンジの線:この線より上(北)の星が、札幌・東京・那覇のそれぞれで見られる。札幌では「りゅうこつ座」はまったく見えず、東京ではカノープスがかろうじて見え、那覇では「にせ十字」まで見えるが「ダイヤモンド十字」は見えない

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は3月中旬の深夜1時ごろの星空です。4月中旬の深夜23時ごろ、5月中旬の夜21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(月や惑星が見えることもあります)。

2020年3月中旬 深夜1時ごろの星空

北の空の高いところに「北斗七星」が昇っています。ひしゃくの柄のカーブを南へと延ばしていくと、「うしかい座」のアルクトゥールス、「おとめ座」のスピカへと連なる「春の大曲線」が描けます。アルクトゥールスの力強い輝きとスピカの優しい光の対比は美しく見ものです。この2つと「しし座」のデネボラでできる「春の大三角」が、南の空に大きく広がっています。

北東の空には「はくちょう座」のデネブや「こと座」のベガ、南東の空には「さそり座」のアンタレスと、夏の1等星も見え始めました。さらに夜が更けると「わし座」のアルタイルも昇り、東の低空に「夏の大三角」が見えるようになります。また、「今月の星さがし」でご紹介した火星・木星・土星が、並んで南東に昇ってきます。

寒さが少しずつ和らぎ、深夜や早朝の星空観察も冬の間ほどには苦になりませんが、空気が冷たい日もまだ多いでしょう。体調に気を付けてお楽しみください。

星空観察のワンポイントアドバイス

季節の星座や天体の動きを観察する星空観察。実は、ちょっとした知識や下準備で、得られる楽しさが大きく変わります。ここでは、流星の見つけ方や星座の探し方、場所選びや便利なグッズなど、星空観察をよりいっそう楽しむためのポイントをご紹介します。

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