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ニッコールクラブ会員展

「西山を見る日」和田喜博

撮影者プロフィール

1947年、岐阜県出身。各写真雑誌のフォトコンテストにて入賞多数。夫婦で写真を嗜み、共作の写真展を複数回開催。近年ではニコンサロンbis新宿、大阪両会場にて「コノ世ノハナ」を展示(2013~2014年)。

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インタビュー

今回の作品について教えてください

標高650メートルの山里にある実家から西の方には、県境に連なる山が見えます。これを昔から「西山」と呼んで、人びとは広々と開けたその山の麓で暮らしていました。近年、私は無人となった家の維持管理や、獣害を受ける畑を整備するために、週に1回ほどのペースで帰省しています。今回の展示では、数年かけて故郷で撮影したものをまとめました。

撮影しながら意識したことは?

どこにでもある日本の田舎だと思っていた景色をあらためて眺めてみると、今まで見えていなかったものに気づきました。それは、四季の移ろいとともに変化する自然の表情。光や色、豊かさと荒々しさ、何よりもその美しさです。
行くたびに西山を眺め、山里の姿を写します。空き家も多く「限界集落」という言葉も当てはまる地域になりましたが、まだ人の手で維持されていて、荒れ果てているわけではありません。そんな、自然の中の人びとの暮らしを意識して撮影しています。

展示にあたってこだわった点はありますか?

四季を巡るようなイメージでの展示を考えています。統一感を重視し、プリント制作はいつもモノクロです。プリントの質には特に気を遣っています。展示会場は都会なので、「日本の田舎の風景」を懐かしんだり、どこかホッとするような心地で見ていただけるといいな、と思っています。

顧問講評 大西みつぐ

「故郷はいつの時代もいつの日も朽ちることはない」。生まれ育った土地の記憶を映像化することは、ある時は懐古に涙し、ある時は現在の自己との葛藤を強いることになります。しかし、それでも故郷は美しい。和田さんの眼差しは生きとし生けるものへの愛情に満ちています。モノクロームの豊かなトーンの中に私たち日本人の共有すべき情感といったものが表現されているように思えます。県境にあるという「西山」を見つめ、去来する胸のうちをシャッターに託す写真家の姿が克明に目に浮かびます。