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大阪ニコンサロン 2017年6月

第36回土門拳賞受賞作品展
梁 丞佑 写真展

写真
新宿迷子
6/1 (木) ~6/14 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

新宿駅東口から歌舞伎町の方に吸い込まれるように歩いて行くと、もう胸がドキドキしてくる。人間の欲望が見え隠れする街が歌舞伎町である。その景色が好きで好きでたまらない。
キラキラ光っているネオンの下に、ダンボールを敷いてあおむけに寝ると、これがまた、気持ちいい。なんだか社会という歯車から外れたようで違った角度から自分のこととか色々なことを考えられる。悩んだ時はダンボールが最高だ。
様々な問題もあるが、この街が私は大好きだった。
しかし、2004年から当時の都知事の方針により、「歌舞伎町浄化作戦」また「歌舞伎町ルネッサンス推進協議会」が発足するなど“安全”で誰もが楽しめる街へと・・・
お金を払えば楽しみが買える“クリーンでクールな”街に変わり始めた。それが悪いとは言わない。しかし、それでは他の繁華街と同じだ。
かつての歌舞伎町は姿を消しつつある。

そういうことで、この街はだいぶ変わったが、誰かの『居場所』である事は今も変わらず、あたたかい、寂しさを漂わせている。
この街の、そういうところが当初の魅力が半減した今でも、変わらず私の足を向かわせるのである。
この街の行き先をしっかりと見届けたいと思う。(梁 丞佑)

受賞理由

毎日新聞社主催の第36回土門拳賞選考会には、千代田区一ツ橋の毎日新聞社で2月16日に開かれ、梁丞佑(ヤン・スンウ)氏に決定した。受賞対象となったのは写真集『新宿迷子』(禪フォトギャラリー)。
90人あまりの選考委員から推薦された12作品の中から梁丞佑氏の『新宿迷子』(禪 フォトギャラリー)、太田順一氏の『遺された家―家族の記憶』(海風社)、金山貴宏氏の『While Leaves Are Falling』(赤々舎)、藤本巧氏の写真集『私の中の韓国』(韓国にて出版)の5点が最終選考に残った。
梁丞佑氏『新宿迷子』は新宿・歌舞伎町を「居場所」とする人々、またそこで起こった諍いを夜間に捉えたスナップ・ショットの集大成。モノクロで写し撮られた人々からは裸のままの人間らしい活気に溢れた姿が浮かび上がり、読者は街、人間のもつ強烈な「臭い」に引き込まれる。
「主」を失った部屋のたたずまいを丹念に撮った太田順一氏の『遺された家―家族の記憶』、精神疾患を煩い変わりゆく母親と変わらない家族のつながりを記録した金山貴宏氏の『While Leaves Are Falling』、過激派組織「イスラム国」(IS)に故郷を追われ、逃れて暮らすヤズディ教徒を数年にわたり追った林典子氏の写真集『ヤズディの祈り』、1970年~90年の20年間にわたり韓国で市井の人々の暮らしを記録した藤本巧氏の『私の中の韓国』は梁丞佑氏の作品には及ばなかった。

作者のプロフィール

梁 丞佑(YANG Seung-Woo )
1996年 来日
2000年 日本写真芸術専門学校卒業
2004年 東京工芸大学 芸術学部 写真学科 卒業
2006年 東京工芸大学 大学院 芸術学研究科メディアアート写真領域 修了
現在フリーで活動中

受賞歴
2001年、2004年 フォックス・タルボット賞 一席
2003年 International Photography Awards Other Photojournalism Sec入賞
2004年 PDN Photo Annual 2004 Studentwork Section入賞
2005年 DAYSジャパン国際フォトジャーナリズム賞 日本国内ドキュメンタリー賞
2006年 第9回 新風社・平間至写真賞  大賞、他

個展
2004年 「外道人生」(東京工芸大学芸術情報館ギャラリー)
2005年 「君はあっちがわ僕はこっちがわ」(JCII 日本カメラ博物館)
2006年 「だるまさんが転んだ」(銀座ニコンサロン)
2007年 「LOST CHILD」 (ギャラリーニエプス)
2009年 「青春吉日」(サードディストリクトギャラリー)
2011年 「自ずからに由る」(サードディストリクトギャラリー)
2011年 「君はあっちがわ僕はこっちがわ2」(禅 FOTOギャラリー)
2012年 「the best days」(禅 FOTOギャラリー)
2013年 「We’re shit but champions」(Reminders Photography Stronghold)
2016年 「新宿迷子」(禅 FOTOギャラリー)
2016年 「青春吉日」(ブレッソン・ギャラリー) (韓国・ソウル)

グループ展
2012年 TOKYO PHOTO
2012年 nofound photo fair (フランス・パリ) 
2013年 「青春吉日」( in)(between gallery )(フランス・パリ)
2014年 「桜」( in)(between gallery )(フランス・パリ)
2017年 「さくら」(ブレッソン・ギャラリー)(韓国・ソウル)

写真集
「君はあっちがわ僕はこっちがわ」(新風舍)
「君はあっちがわ僕はこっちがわ2」(禅 FOTOギャラリー)
「the best days」(禅 FOTOギャラリー)
「新宿迷子」(禅 FOTOギャラリー)
「青春吉日」(NOONBIT出版社/ 韓国・ソウル)
「さくら」(NOONBIT出版社/ 韓国・ソウル)

juna21 張 笑秋 写真展

写真
Time after Time -平静の市場
6/15 (木) ~6/21 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

今日の日本でも古い市場が存在している。市場で客と店主は物の売り買い以上の交流が生まれ、お互いの関係を深めていく。しかし時代の変化に伴い、施設の老朽化、衛生面の問題などにより、昔からある市場は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアへ変わり、生活の様子はすっかり変わってしまった。そして市場は衰退の一途を辿っている。
ひっそりとしている市場に入ると、かつては賑やかだったであろう昔の面影はない。現在の市場の厳しい状況の中でも、細々と営業を続けている店主らにとっては、今日も市場の時間は流れている。しかし、かつての面影は店舗の看板や店主の顔から感じ取ることが出来る。これらを目にした時、かつて繁栄していた市場にタイムトラベルしたかのようにその様子を想像することが出来た。今後も社会の発展に伴い市場の数が減少し、昔の雰囲気を感じるところはどんどんなくなっていくだろう。
私は外国人の視点から、日本の市場のもつ独特な美しさを表現した。これらは現在の日本の市場の佇まいに感動した私の視点である。  (張 笑秋)

カラー 35 点。

作者のプロフィール

張 笑秋(チョウ ショウシュウ)
1984年上海市生まれ。2008年上海工程技術大学 芸術設計学部写真学科卒業。同年同学同学部助教、16年九州産業大学芸術研究科造形表現専攻 写真領域修士修了、同年から同学同科造形表現専攻博士後期課程在学中。
写真展(グループ展)に、15年「フィラメント」(福岡県立美術館)、同年「交差する世界」(コニカミノルタプラザ/新宿)、16年「point」(福岡アジア美術館)、同年「島」(福岡アジア美術館)、同年「いち」(福岡市美術館)、同年第3回天神アートビエンナーレ「第二2回福岡・新世代アートフロンティア」展 」(福岡アジア美術館)がある。
受賞歴に、08年第9回上野彦馬賞「上野彦馬賞」、同年世界報道コンテスト(中国)入賞、09年中国第二回大学生芸術コンテスト二等賞、11年第一回上海青年写真芸術コンテスト最高賞、15年第16回上野彦馬賞最高賞「上野彦馬賞」がある。

PHOTO CULTURE WEEK CROSSING 企画展
宮崎 学 写真展

写真
ヒトの傍らで―シナントロープから見た世界
6/22 (木) ~6/28 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

シナントロープとはギリシア語の「syn(共に)」と「anthropos(人間)」を語源とする言葉で、人間社会の近くに生息し、人間や人工物の恩恵を受けて共生する野生の動植物を指す。簡単に言えば、スズメやカラス、タヌキ、ネズミなど人間の生活環境に依存している動物のことだ。例えば、森林だった場所を人間が田んぼや畑にして農地化すれば、その環境を歓迎して繁栄する生物や植物も増える。つまり、一般的には環境破壊と言われるような「自然撹乱」を必要としている生物たちが存在しているのだ。そんな視点で日本の自然環境を見つめれば、人間が自然の中で生きていくための多くの発見と示唆とヒントが見えてくる。「黙して語らない自然界」にどのような言葉を与えるかが問われているのだろう。

作者のプロフィール

宮崎 学(ミヤザキ マナブ)
1949年、長野県生まれ。1982年に『鷲と鷹』で日本写真協会賞新人賞、1990年に『フクロウ』で第9回土門拳賞、1995年に『死』で日本写真協会賞年度賞、同書と『アニマル黙示録』で講談社出版文化賞を受賞。2013年、IZU PHOTO MUSEUM(静岡)で個展「自然の鉛筆」を開催。2016年、カルティエ現代美術館財団(パリ)でグループ展に参加。写真集・著書は70冊余。本展キュレーターの小原真史との共著『森の探偵』(亜紀書房)を出版予定。長野県駒ヶ根市在住。

第23回酒田市土門拳文化賞受賞作品展
ストラーン 久美子 写真展

写真
横須賀ブルー ペルリ164年目の再上陸を想起する
6/29 (木) ~7/5 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

黒船の砲艦外交から163年、ペルリ(幕府文書・以下一般名辞としてペリーを用いる)の恫喝外交は、良くも悪くも、形を変えながら続いてきました。
ペリー提督、マッカーサー元帥、そして今、黒船を想起させるトランプ新大統領の未知数の力が日本に忍び寄っています。寛容と多様性に重きを置いてきたアメリカという国のあり方を不透明にしています。米軍基地で長く働いている私の実感です。
ペリーは日本の土を初めて踏んだ刹那に「ペリーアイランド」と口にしたといいます。アメリカ海軍第7艦隊所属の空母や艦船が入港して、私のオフィスの窓を覆うたびに、その威丈高な光景が「私の島」と感慨を漏らしたペリー上陸と重なります。それは、新大統領の強権的な発言にもつながるのです。
日本に開港を迫る手段を「威圧」が最も有効と計画したペリーです。その一方で、黒人の人権擁護の立場をとった人でもありました。日本上陸の際、側近には複数の黒人を就けていたことは、アメリカの多様性の現れでした。
1854年、日本は不平等な和親条約を締結しました。しかし国の母体を失うことはありませんでした。古来、よろずの神を受容して祭ってきたように、幕府はペリーというひと柱の渡来の神を受け入れたのです。
街のいたるところで渡来神と戯れる日本人の姿が見られるのが横須賀の町です。この平和な光景はアメリカの神がもたらしたと、米軍人たちは心の内で確信しています。安全保障条約においてアメリカが日本を護っている、という声は、今後のアメリカ国内で大きくなっていくと予感します。東アジアが過去になく緊張をはらむようになった今、そしてトランプ氏が新大統領に選出された今、日本の軍備拡張につながらないのか、私には一抹の不安がきざしています。
アメリカと日本、二国にどのような未来が待ちうけているのか、改めてペリー上陸の意味を考えています。 (ストラーン 久美子)

受賞理由

アメリカ・トランプ大統領の出現は、世界を震撼させ、国内では原発事故による放射能汚染が明日を暗くしている。このように写真は時代や社会の混沌を鏡のように写し出し、未来に向けての、“語り部”の役割を果たしている。
土門拳文化賞は土門拳が確立した、「リアリズム写真」の精神にのっとり、言わば写真本来の力である記録性を基に、新たな地平を切り開くことを目的としている。
今年23回を迎え、賞の方向性と、かたちが整い、それを踏まえた国内はじめ、アジア、欧米にモチーフを求めた多彩な作品が寄せられた。その全体を大雑把に分けると、祭事を捉えた作が目を引き、アジアを主にした海外の作も思いのほか多かった。祭りも異文化も視覚的に豊かだからだろうか。
そうしたなか、トランプ米大統領の言動が波紋を広げている時、70年余りにわたってなお、アメリカの金縛りになったままの基地問題を、鋭く突いたストラーン・久美子さんの作は、時節と相まって秀逸だった。 (江成 常夫)

「1853年(嘉永6年)アメリカ使節ペリー艦隊を率いて浦賀水道に来る。翌年ペリー久里浜に再び来る。日米和親条約を締結する」と歴史教科書には記してある。
ストラーン久美子さんの「横須賀ブルー」はこの大テーマの今を横須賀周辺で映像化した。
久美子さんは高校生の時に渡米し20年間アメリカにいたという。帰国後、座間基地で13年、今は横須賀の基地で10年働き、実感した日米のカルチャーの違いを米兵や日本人に教えている。
自宅の窓から沖を行く黒船が見える。基地内の撮影は許容範囲の中で写せるという利点を生かしている。
写真歴は4年足らず。何処にも応募せず、満を持して、今回土門拳文化賞に応募した。はっきりとしたポリシーを持って写した写真は強い。お世辞にもいい写真がたくさんあるとはいいがたい。それ以上に、写真の実在性やリアリティがある。 (藤森 武)

作者のプロフィール

ストラーン 久美子
1955年東京生まれ。1974年アメリカ高校留学を機に米国在住20年を経て1995年に帰国。米軍基地日本人従業員として採用され現在に至る。
2013年6月、感動させられたある一枚の写真との出会いから一念発起し初めてのカメラを購入。以後、横須賀を基点に歴史、文化、人に焦点を当てた撮影活動を続けている。
2015年9月「横須賀ブルー」(初版蛇腹本)作成。

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