Nikon Imaging
Japan
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大阪ニコンサロン 2015年1月

12/30 (火) ~1/4 (日)
年末年始休館

第39回伊奈信男賞受賞作品展
金村 修写真展

写真
Ansel Adams Sturdust(You are not alone)
1/5 (月) ~1/14 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

写真

コンデジや携帯カメラ、iPhoneにスマホで大量に写真が撮られているこの時代に、写真の希望なんてどこにあるのだろうか。プリントもされずにデスクトップの中で陽の目を見ることもなく垂れ流しのまま朽ち果てるデジタル写真の山。見ることもできなければ、その片鱗すら感じることもできない不可視のデータの残骸に、フィルムがトラッシュな残骸の山を同期させてくる。
音楽評論家が、ラ・デュッセルドルフのレコードを塩化ヴィニールの無駄遣いと評したように、価値があるのか無価値な屑なのか、判断不能のごみの山を確信的に築くことだけが未来の写真の希望なのだ。
無駄のないフレーミング、黄金比で分割された構図、美しく再現された質感、モノクロのトーンが階調豊かに表現されたバライタ紙に、未来の写真のごみの山が侵食し、その美しい写真の表層に不可視のごみの縄目を刻印する。写真は美しくもなければ汚くもない。ただ薄汚い即物的な汚れがあるだけだ。
汚いという小手先のリアリズムは、現実に嘲笑される。汚さは結局リアリズムの概念に回収され、美意識の回路に組み込まれるだろう。美しさは無限に増え続ける写真の山の中で窒息させられ、その無残な姿を額装されて公衆の面前で辱しめを受ける。未来の写真は美しさの扉を激しく叩き、美しさにうめき声をあげさせるだろう。
写真は性的快感を廃棄し、不能を肯定するボストン絞殺魔。犠牲者が死んでいく過程になんの想像力も持たずに即物的な興味と観察による絞殺を実行する。着飾って美しく仕上げられたプリントに対し、脳腫瘍で鬱血した顔すらもきっちり階調を出す非情のゾーンシステムのリアリズムでトラッシュなアンセル・アダムスになることを未来の写真は希望する。  (金村 修)

授賞理由

私たち選考委員は、金村氏の写真に対する同時代的な問題意識を前景化した展示行為の高い批評性に着目し、本展を本年度で最も優れた展覧会であると認めるに至った。
自己同一的な完結性をいっさい認めない金村氏にとって、すべての写真が始まりも終わりも無く広がり連なっていることは自明であり、「Ansel Adams Stardust (You are not alone)」という表題のこの展覧会も、その例外ではない。
しかし、この展示には少しばかりユニークな点も見受けられた。たとえば、汚れた余白を断裁せず自身の暗室から何も手を加えずに直接会場に持ち込んだ結果、展覧会場と個人の作業場とが地続きになってしまった印象が生じている。これは、暗室制作から展示発表という次元への不完全な転送だったと言えるのではないだろうか。展示されたプリント自体もすでに、フィルムから印画紙への不完全な転送の結果となっている。さらに、ホワイトキューブには不釣り合いな向きのある高密度な都市景観の写真が連なった壁面上に、解読不能な文字列も置かれていた。これは写真と文字の記号的な差異を解除しているのではなく、単に文字列の場違いな場所への配置が目的だったのではないだろうか。こうした物質とイメージの権衡に割り込む誤送や誤配が、金村氏の確信に基づいていることは言うまでもない。
Ansel Adamsにとって、すべてのトーンを完璧にコントロールできるゾーンシステムにより、先住民の聖地シェラネバダ・ヨセミテ渓谷を我が理想郷として写真に描き出すことが唯一の希望だったとすれば、すでに写真がナルシス達の玩具として十分に普及し、そのオーラが消失した現在においては、あらゆる局面で写真のディストピアを積み上げることだけが残された希望なのだろうか。少なくとも金村氏は、そのことに留保を付けてはいない。
一見、過剰なエクスプレッションにも見えるこの展覧会が私たちを怪しく魅了してやまないのは、じつは私たちの写真イメージに対する不和と葛藤が幾重にも織り込まれた、ディストピアをめぐる誤送と誤配のドキュメンタリーだからなのだ。

作者のプロフィール

写真

金村 修(カネムラ オサム)
1964年東京生まれ。93年東京綜合写真専門学校研究科卒業。97年日本写真協会新人賞、第13 回東川町国際写真フェスティバル新人作家賞受賞。2000年第19 回土門拳賞受賞。
著書多数。主な写真展に、(個展)93年「Crashlanding in Tokyo's Dream」(銀座ニコンサロン)、95年「Tokyo Swing」(Yoshii Gallery/ニューヨーク)、00年「土門拳賞受賞記念展 Black Parachute Ears 1999」(銀座ニコンサロン)、05年「Chinese Rocks」(ツァイト・フォト・サロン/東京)、13年「金村修展─ヒンデンブルク・オーメン」(photographers' gallery/東京)、(グループ展)92年「第3 回ロッテルダム写真ビエンナーレ Waste Land from Now on」(ロッテルダム/オランダ)、96年「New Photography 12」(ニューヨーク近代美術館)、03年「日本写真史展」(ヒューストン美術館/米国テキサス州)、04年「アルル国際写真祭」(アルル/フランス)、11年「JAPAN TODAY」(AMADOR GALLERY/米国ニューヨーク州)などがあり、作品は横浜美術館/ニューヨーク近代美術館/東京都写真美術館/東川町文化ギャラリー/東京国立近代美術館/土門拳記念館/ベネッセコーポレーション/ヒューストン美術館/福岡市美術館/サンフランシスコ近代美術館/シカゴ美術館にコレクションされている。

juna21 三木淳賞奨励賞受賞作品展
池上 諭写真展

写真
目の前の山
1/15 (木) ~1/21 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

山に入る。いつもとは違う色、光、空気に囲まれている緊張感とその解放感で、作者は全身が妙に高揚しているのを確かに感じる。
数えきれない山靴で踏み固められてきた深い道を、荒い呼吸で登ってゆく。見上げる先に遮るものは何もなく、空が近くとも遠くとも見てとれる。
地図を広げてそれぞれの山を望み、思いを馳せらせたりもするが、ファインダーのなかでは、奥に見えるのが名高い山で、手前に見えるのが名も無い低山であるなどという境は消え去り、遠くからは決して見ることの出来ない目の前の山の様相に思わずシャッターを切る。それは登攀中も下山中も登頂した瞬間でさえも変わらない。どんな山へ入ろうとも麓に下りるまで、ひとつの山色としてただ感じるだけである。
“山岳写真”といわれるような自然の雄大さや力強さのある写真とは一線を画した山写真である。
カラー45点。

授賞理由

おそらく、かなり険しい場所で撮っているのだろうと思われる写真でさえ、いわゆる山岳写真に感じることがあるような、どうだすごいだろう感がないのが、「目の前の山」の面白さだと思う。登らないもの、あるいは登ることができないものを、ときに突き放す「あの写真」はない。どの風景もとても美しく、かといって美しすぎない、いい塩梅なのである。
しかし、その場にいるものが享受する全方向的な美しさを、写真は表現しないことを、われわれ写真家は知っている。少し厳しい意見だが、そこに一度も行かない鑑賞者にとって、これらの山の写真がどういうものであり得ると作者が考えるのか、という観点を、もう少しストレートに投げかけてほしかったと思う。その点を今後に期待する。

作者のプロフィール

写真

池上 諭(イケガミ サトル)
1984年神奈川県生まれ。2010年東京造形大学卒業。卒業後はフリーで活動している。
写真展に、13年「SLOUGH」(コニカミノルタプラザ)、14年「羊蹄の西庭」(gallery 福果)、グループ展に14年「NODE」(アイデムフォトギャラリー・シリウス)、「NODE vol.2」(目黒美術館区民ギャラリー)がある。

小林 紀晴写真展

写真
ring wandering 悲しき迷走
1/22 (木) ~1/28 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

作者が生まれ育った八ヶ岳の裾野は冬の寒さが厳しい。その季節、あたかもすべての生命が凍てついたしまったかのように死を強く連想させる。夏のあいだ迷走しながら生長した植物は、冬にその痕跡をあらわにする。
一方、古く縄文の時代から人々はこの地で野生動物を追ってきた。追われる動物たちもまた迷走する。枯れた草木は罠のように立ちはだかる。やがて捕らえられ、大地に滴る動物の血は体温とひきかえに湯気をあげる。そのさまは生の象徴のようにも、生と死の交換のようにも映る。
人もまた冬枯れのなか、植物と動物のあいだで迷走する。
3つの回帰の輪は冬にだけ触れあい、重なる。より死と生があらわになる。それらは悲しくも美しい。

【リングワンダリング】(英:ring wandering)
人が山中などで方向感覚を失い、無意識の内に円を描くように同一地点を彷徨い歩くこと。

作者のプロフィール

小林 紀晴(コバヤシ キセイ)
1968年長野県生まれ。東京工芸大学短期大学部写真科卒業。アジアを旅し作品を制作する。2000~2002年渡米。「DAYS ASIA」で日本写真協会新人賞受賞。写真展「遠くから来た舟」で第22回林忠彦賞受賞。現在東京工芸大学芸術学部写真学科教授。
写真集、著書に『ASIAN JAPANESE』『homeland』『days new york』『はなはねに』『昨日みたバスに乗って』『写真と生活』『メモワール』『kemonomichi』『美女の一瞬』など多数。

写真
大阪芸術大学写真学科
平成26年度卒業制作選抜展
1/29 (木) ~2/4 (水)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会期中無休

写真展内容

写真を志し、大阪芸術大学に集って修練を積み、今まさに各方面に旅立とうとする学生達の作品展である。
作品は、各人が卒業制作としてテーマを選び、それぞれが習得した知識と写真技術を駆使し、研究・創作を重ねた成果である。
本展では、卒業生の中より優秀と認められ選抜された作品と、卒業生全員のポートフォリオ作品を展示する。これから写真界に旅立つ若者たちへの温かい声援を願っている。

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