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新宿ニコンサロン


第13回酒田市土門拳文化賞受賞作品展
セイリー 育緒展
[甘い地獄]

5/15 (火)~5/28 (月)
10:00~19:00(最終日は16:00まで)
会期中無休





<写真展内容>
「ハリウッドという現代のバビロンで
限りなく許される自由に溺れ、人間が堕ちてゆく。」

作者はハリウッドに部屋を借りていた。2階建てアパートの104号室。窓からは風に揺れるヤシの木が見えた。
左隣に住む白人女性は、性転換してから薬物に溺れ、右隣のイスラエル人夫婦は、パレスチナ人を何人も殺したと誇り、その右隣の女性は、ある夜、天井から響く足音がうるさいと言って上に住む青年を撃ち殺した。
作者はハリウッドに、この世の果てを見た。
ルール無用の自由を求め、人が迷い込む街。けれど手に入れるはずだった自由はそこで、剥き出しの欲望、快楽の泥沼、野放しの暴力へと姿を変え、彼らの魂を喰いちぎる。押し寄せる観光客の波間で、骨抜きになった人間たちが幽霊のように彷徨い歩いていた。
戦争や貧困、あらゆる地獄があるけれど、ハリウッドには自由や快楽に蝕まれて堕ちてゆく、甘ったるい地獄の口が開いている。
作者は、この作品の中で、東京やあらゆる巨大都市にも開こうとしているその空虚な「地獄の口」を映し出そうとしている。モノクロ30点。

<受賞理由>
豊かさと自由の象徴ともいえるアメリカ、その代表的な大都市であるハリウッド。豊かさや自由を光だとすれば、一方には飽食や、限りない自由や快楽に蝕まれる人間がいるという影の部分も顕在化している。作者は、そうした影の部分を「甘い地獄」~ハリウッドという現代のバビロンで、限りなく許される自由に溺れ、人間が堕ちていく~と、鋭い視線を向けている。
作者(彼女)は、ハリウッドのアパートに暮らし、街の空気、匂いなどを、自らの身体、肌で感じ取りながら、アメリカ社会の陰を切り取っている。スナップショット的な、粒子の粗い、時にはブレがある写真だが、それが逆に作者固有のアグレッシブな表現となっている。文明や物質社会への鋭い批評精神をもった作品で、表現者としての鋭い視点や思想性が光る秀作である




<作者のプロフィール>
セイリー 育緒(セイリー イクオ)
1968年京都市生まれ。87年神奈川大学入学。東京のレコード店でR・ストーンズ『Exile on main st.』のアルバム・カバーを見たときの動揺が、ロバート・フランクという存在、そして「写真」という表現手段との出会いであった。以来独学で写真を始める。2000年機械式カメラ修理の名人、直井浩明氏のもとで修理技術を学ぶ。02年渡米。ロサンゼルスのカメラ修理店で、アンティーク機種専門の技師を務める。03年ハリウッドを撮り始める。05年『甘い地獄』完成。06年帰国し、現在も作品の制作を続けている。
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