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talk! talk! talk! : ミュージシャン 坂本美雨さん


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写真を撮る側と撮られる側の エネルギーの交換



好きな写真家はいますか?

たくさんいますよ。森山大道さんや紀里谷和明さん、川内倫子さんも好きですね。彼女の写真は空でも花火でも、ドロドロとしたような生々しさが現れている感じがして、恐ろしいけれど惹き込まれてしまいます。でも、見ていて好きなのと、撮ってもらうのが好きっていうのは全然違うんですよね。

撮られていて好きというのはどのような方ですか?

撮ってもらうというと、アラーキーや篠山紀信さん、紀里谷さんもとても素晴らしいですね。あと、HIROMIXは女の子なのでまたちょっと感覚が違いますし、蛭川実花ちゃんは撮られていて楽しいですね。彼女も私も“乙女”だから、純粋に楽しい!

乙女?

“女の子らしさ”っていう部分ですね。彼女もそうだから、私も“乙女”な部分がどんどん引き出されるんですよ。撮られていて楽しいし自然でいられるし、いっぱい笑えるんです。だから彼女の撮る女の子はほんとうにみんなかわいいんですよ!

坂本美雨さん



お互いの波長がピッタリと合って撮影ができるんでしょうね。

そうですね。でも、実花ちゃんに限らず、写真家のみなさんってエネルギーがすごいんです。そうするとこっちも負けちゃいけないと思うんですけど、でも意気込み過ぎてバリアを張ってしまうとダメなんです。中身をさらけだして、エネルギーの交換をしているような……とにかくすごいですよ。

一筋縄ではいかない感じですね。

そうなんです。バリアを張らずに生の自分でいることって、ものすごく難しいんですよ。バリアを張るとすぐに見つかってしまう。それが一瞬で相手にわかってしまうから恐ろしくて。レンズを通して「お前、何カッコつけてんだよ」って。でも、自分の中身を見透かされるというのも、これまた人生で一番恥ずかしいような思いなんですけどね。

美雨さんも撮っている相手の気持ちが見えることがあるんですか?

私に相手のことが見える? いえ、まだそこまで気が回らないですね。でも、相手と通じ合う瞬間というのはわかります。「あ、今だ!」っていう瞬間。それはもうお互いに一瞬でわかるものなんです。何百枚撮ったうちの1枚か2枚だったりするんですけどね。


写真を撮った場所にいたことが その人の才能の一部



Photo(撮影・坂本美雨さん)

「強烈なロサンゼルスの陽射しの中、足をプールに浸し、ほてった身体を冷ます」


いつも思っていることなんですけど、写真はカメラという機械を使って写すから誰でも撮れるんですよね。だから歌手の方が撮ったり画家の方が撮ったり、いろいろな人が撮ってどこかに発表したりしている。それは写真の技術だけではなくて、写真を撮った場所に「行った」という行動力だったり、そこにそのとき「いた」という偶然や運命にその写真の素晴らしさの半分があるんじゃないかと思うんです。

その写真はそのとき、その場所にいなければ撮れなかった、ということですか?

そう、その上で構図やテクニックや、その人の持ってる波長などの要素があるわけで……私は出会ったその場所、景色に撮らされている気がします。

撮らされている?

たとえば東京の空を同じカメラで同じ時間帯に撮った人ってたくさんいると思うんです。だけど、「今日、この時間にこの場所で、この角度から東京の空の写真を撮った」ということ、そしてそれを
「切り取った」ということが私の才能であり、自分を表現するということなんじゃないかと思います。

なるほど。


Photo(撮影・坂本美雨さん)

「ニューヨークの大停電の夜。唯一の光を求めて、ハドソン河沿いにわらわらと集まってくる人達……。ピースな場所でした」

だから、そのためにいつもアンテナを張っていないといけないと思います。人を撮る場合は、相手の感情や表情を引き出すことがそれにあたると思います。その表情が撮れたのは、今その表情を引き出した自分しかいないっていう。

引き出される感覚というのは撮られる側にもわかるのですか?

わかりますね。やっぱり、撮る人の人間性がこっちにも影響してくるんです。だからいつもと違う表情になれる。人間性というと努力ではどうにもならない部分かもしれませんが、それも才能の一部ですよね。

オリジナリティというのはそういった所に出るのかもしれませんね。

自分でも、こんな写真誰にでも撮れる、似たような写真は山ほどあるって一時期は思っていました。でも、これを撮ったのは私なんだから、そのことだけで素晴らしいんだって思うようになったんです。私のオリジナルというのはそれしかないなって。もちろん、何年も写真を勉強して突きつめてきた人には技術や歴史があって、「そういうレベルの問題じゃないんだよ」って言うかもしれませんが、素人としては、そう思っています。



「自分は世界に生かされている」 その思いをわかり合いたい



歌、そして写真や文章を通して美雨さんが表現していきたいこととは何ですか?

世界は美しいということ、それから自分は小さくて、世界に生かされているんだなぁっていうことですね。

世界に生かされている?

アガペー(※注)です。自分ではなく、相手を思う。自分ひとりじゃ生きられないですから、その気持ちがなければ何もできなくなってしまいます。今日はこんなにおいしいものを食べられて、こんなにかわいいものに出会って、それはみんな自分ひとりではできないことです。世界に生かされているんです。

その気持ちを多くの人に伝えてゆきたいと思って活動を続けているんですね。

伝えたい……というよりも、自分を使って伝えられるんだったらそれに用いられたいという感覚ですね。誰でも持っている気持ちだと思うので、お互いにそれをわかり合えたら、通じ合えたらいいなと思います。でも、発信する側というか、影響を与える側というのはすごく責任が重いんですよね。いい加減なことは言えないし、でも考え過ぎると何もできなくなってしまうから、自分の中で闘いつつやっています。

これからチャレンジしていきたいことはありますか?

なんだろう? ……ライブを早くやりたいですね。まだまだ自分が楽しむことでいっぱいいっぱいですけどね(笑)。あとはこれからも歌だけでなく、写真も、詩も、散漫にならないように、でも全部手を抜かずにちゃんとやっていきたいです。

坂本美雨さん
では最後に、写真の話に戻りますが、これから撮ってゆきたいもの、撮りたいものを教えてください。

2年前、ロシアを旅してたくさんの写真を撮ったんですが、思うように撮れなくて。私の感じたロシアの温かみが出ていなかったんです。だから、今度は、ロシアに限らずどこか知らない土地に行って、そこに住む人の「個人」をとらえたような写真が撮りたいです。私は人を撮ることにはあまり興味がないんです。それよりも、その土地の生活や人の存在が残っているような物や場所から、温かみがにじみ出るような写真が撮ってみたいです。

では、それをより表現しやすいように、ちょっと勉強して技術アップをしたり、カメラやレンズに凝ってみるのも面白いかもしれませんよ。

そうですね。これからはそういうふうに広げていきたいと思います。

※注 アガペー=代償を求める打算的な愛ではなく、見返りを求めない、他者中心、自己犠牲的な性格の愛のこと。

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