talk! talk! talk! : ミュージシャン 坂崎幸之助さん |
被写体については、何を撮ろうというふうに決めてから撮影されるのですか?
何を撮ろうというわけではなく、基本的には見たまま、本能のままにシャッターを押しています。 被写体だけでなく、画角も、構図も僕はあまり考えないんですよ。普通、ここだったら28mmで撮るだろうなとか、85mmで撮ろうかなとか考えてレンズを変えたりしますよね。でも僕はその時付いてたレンズで撮っちゃう。だから、やたらと広い範囲が写っていたり余計な部分が入っていたり、逆にもっと広角で撮った方がいいんじゃないの?っていうのもあるみたいです。 “あるみたい”?
そう、“みたい”です。僕ね、本当にあまり気にしていないんですよ。普段人が目で物を見る時「あっ、この風景は広角で見よう」とは意識しないですよね。僕の場合は写真もその延長で、ただ見えたままにシャッターを押しているだけなんです。寄ろうとか、離れて撮ろうとかもあまり思いませんね。自分がいる所から見えたものを、その場にあるレンズで撮ろうと思っています。 見たままにということは、どちらかと言ったら広角レンズで撮られることが多いのですか?
広角が多いですね。だから本当に目線に近い写真が多いです。それにフレーミングも考えないし、テーマもない。いわゆるコンテストに出したら、多分、まず最初に落とされるだろうなっていう写真ですよ。テーマを決めると1本のフィルムを撮るのに相当の時間がかかってしまうと思うんです。おそらく考え込んでしまって、今日は1枚も撮れなかったってことになりますね。それよりも撮ることそのものが好きなんです。ピントを合わせて、露出を合わせてっていう、シャッターを押すまでの動作が楽しいんです。 では、でき上がった写真についてもっとこうした方がよかったな、というようなことを考えたりはされないのですか?
でき上がった写真はただ「おお、撮れてる、撮れてる」って思うだけ。自分でも何を撮ったのかわからないような写真ばかりですから、人が見たら「何が言いたいんだ、この写真は!」って思うんでしょうけど、いいんです。人に頼まれた写真じゃないから(笑)。でもそれがね、何年か経って見てみると、意味のない写真でもその頃の自分のことや生活環境、ここに行ったとか何を思ったとか、そういうことを思い出すんですよね。どんなに下手な写真でも、こうして写真としての1つの役割を果たしているんだなって……この間、写真を整理していたらふとそんなことを思って。忘れた頃に見ると自分の写真って結構感動するものなんですね。 |
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今日は数枚写真をお持ちいただいています。
ええ、でも自分の写真を選ぶのは難しいですね。たとえば「自慢の1枚を持ってきて下さい」と言われると「これがお前の自信作か」ってなってしまうでしょ。本当にすっごく難しいんです!
でも、坂崎さんご自身にとっての自信作というのはあるんですよね?
うーん……テーマもなく撮っているから、自分ではもう何がよくて何を基準にどう選べばいいのかわからないんです。自分ではよくても、人に見せたときにこの写真では伝わらないと思ってしまうんですよね。人から「これは面白い写真だね」って言われて、そういう見方もできるんだと気づくことは多いですよ。それは偶然できた自信作ですね。でも、そもそも人に写真を見せるのって恥ずかしいことじゃないですか。
恥ずかしいというのは?
僕の目線をそのまま写しているということは、僕がいつもどういうふうに周りを見ているかがバレちゃうってことなんです。女性の写真を撮れば一番分かりやすいですよね。「坂崎は女性をこう見てるのか」って思われるわけでしょ。逆に、テーマを持って撮れば恥ずかしくないですよね。上手い、下手を評価されたりもしますが、1つの作品としてこうやって撮るという目標を持つわけだから、その人の目線の写真とは違うんです。僕のはほとんど恥ずかしい写真です。
(笑)その恥ずかしい写真をお持ちいただいたわけですが。
猫の写真とツアーの最中に撮った写真です。猫は被写体そのものがかわいいから、そっちに注目が行くんですよ。だから結構恥ずかしさから逃げられるんです。僕と猫との付き合い方みたいなものは見られちゃいますけどね。名前は「ななめ」と「ぎんちゃん」です。「ななめ」はもう里子に出してしまったんですが、顔をいつもななめにかしげてるから「ななめ」って付けたんです。「ぎんちゃん」はもうずっとうちにいる猫なんですよ。
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ツアー中の写真は、やっぱり恥ずかしいですね。ツアーでいろいろな所へ行ってはいるんですが、飛行機か新幹線で移動して現地に着くとすぐホテルですから、あんまりネタがないんですよ。あ、今日持ってきたのは自信作ではないですから(笑)。
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これからも欲しいカメラがどんどん増えていくのではないですか?
そうですね。僕の場合はこのカメラの兄弟にあたるやつが欲しいとか、同時代の他のメーカーのカメラが欲しいという欲望が出てくるんです。でも僕はまだいい方で、「シリアル番号が違う」とか言って同じレンズを10本集めている人もいますからね。家にあるのにお店に並んでいるのを見ると欲しくなっちゃうんですって。でも、その気持ちはわからなくもないんです。照明の下できれいに並べられているカメラを見ているとね、カメラが僕を呼ぶんです!
(笑)「買って!」という声が聞こえる?
いや、買う時の言い訳ですよね(笑)。自分の欲望に負けているだけですね。でも、FやSのシリーズだったら何台あってもいいと思いますよ。ファインダー部分が違うものを揃えてもいいですし、僕もFだけで3、4台持っています。ですがまったく同じ機種でも1台1台癖があるから、自分の持っているカメラとはやっぱり違うんです。そうやって細かく違いを見てしまうからどんどんハマって、どんどん物が増えちゃう。そして我が家はえらいことになっちゃうんです(笑)。
坂崎さんがどんどんハマっていってしまうカメラとは、坂崎さんにとってどういう存在なのでしょうか?
僕にとっては……恋人でもなければお友達って感じでもない。いつもそばに置いておきたいとは思いますが……僕にとって何かという意味はあまりないですね。カメラはカメラです。ただ、僕らは今でこそ簡単にカメラを使っていますが、ここに至るまでカメラは凄く長い歴史を積み重ねてきているわけ
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です。こんな小さなものですけど、人間のアイデア、才能、技術がたくさんつまっている。多くの人間の英知の塊なんだから、そう簡単にカメラについてどうこう語れるものではないですよね。開発に携わってきた人たちに怒られちゃいますよ。カメラはご立派、えらいです。 その思いがあるからこそ1台1台に、余計に愛着が湧くのでしょうね。
そう、だから使うときも簡単に使っちゃいけないんです。1台1台の癖にこっちが気を使って合わせながら、カメラを使わせていただくという感じですね。デジタルカメラも使っていますけど、これからもこのスタンスで銀塩カメラを使い続けていきたいと思っています。 |






