<写真展内容>
日々の生活の中、寄り道、立ち止まる事は何処かへ忘れてきてしまったのだろうか。
ただ目的へ急ぐことばかりが求められることが多い。それは現代文明が内在する“スピード・生産性・効率万能主義”とでもいうことなのだろうか。
旅に出る。
旅の目的は、はっきりしたものがあるものの、目的地に行くことだけが〔旅〕ではなく、その目的地に着くまでの〔過程〕が旅そのもの。
そこにはなんら特別な場所、特別な時間は要らない。寄り道をしながら各駅列車に乗り、道中の窓からみえる光景は、次から次へと途切れることなくその地域のたたずまいや日常生活を見せてくれる。
どこかへ向かう列車に揺られながら、たまたま乗り合わせた人たちと一緒に、車窓から見える景色をそれぞれに眺める。窓の外では春の訪れを待ち侘びるかのように桜が咲きはじめたり、日傘が手放せない日差しの光景だったり、柿の実が赤々となっていたり、雪が降り積もっていたりする。それらの光景は、ここではない他のどこかでもあり得るのかもしれない。
そんな一つ一つの情景を、漆工の技のように何層にも何層にも積み重ねる。
日本の輪郭、かたちをなぞるように作者の列車での旅は、これからもしばらくつづく。
(作者がニコンサロン展のために書いた遺稿)
カラー45点。 |