Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

ザ・ワークス Vol.52 D800/D800E

36.3メガピクセルという圧倒的な有効画素数で、スタジオカメラに匹敵するほどの高い解像感、繊細な質感描写、なめらかな階調表現を実現したD800/D800E。ニコンFXフォーマットデジタル一眼レフカメラの機動性、耐久性を損なうことなく豊かな表現力を備え、静止画、動画を問わず、新しい映像表現の未来を切り拓くD800/D800Eの魅力を、プロダクト担当の方々に伺いました。

原 信也(はら・しんや)

映像カンパニー 開発本部 第一設計部 第一設計課 副主幹

村上 洋(むらかみ・ひろし)

映像カンパニー 開発本部 第一設計部 第二設計課 副主幹

吉松 栄二(よしまつ・えいじ)

映像カンパニー 開発本部 第一設計部 第四設計課 副主幹

中判カメラの画質を扱いやすいサイズに凝縮した新しいジャンルのデジタル一眼レフカメラ D800

開発時に思い描かれていたことをお聞かせください。

「高解像度カメラということでは、ニコンには2008年に発売したD3Xという24メガピクセルの画素数を持つフラッグシップ機があり、市場で高い評価を受けてきました。私達がD800の開発にあたって追求したのはそれを超えるもので、今までのデジタル一眼レフカメラの画質を大きく超えるような、その先を行く画質をコンパクトなボディーに凝縮する、という目標を立てたのです。画質のライバルとしてはデジタル一眼レフカメラではなく、中判の高画素デジタルカメラあるいはデジタルバックです。そういった中判の高画素モデルに匹敵するような画質、階調、鮮鋭感を持ったものを作るというのが大きなコンセプトの一つとしてありました。」

36.3メガピクセルという画素数は途方もないスペックですが、どのように実現の目処がついたのでしょうか?

吉松「ただスペックだけを追いかけた訳ではありません。もともと開発していて実績のある技術を搭載したセンサーを使っています。そのセンサーの画質には定評があったので、出来上がりの画像をイメージできました。あの画質にこの解像度が加わったらどうなるか、というイメージができたので、明確なモチベーションに繋がりました。」

村上「そうですね。36.3メガピクセルを膨大な数として捉えるのでなく、撮像センサーの精度アップや36.3メガピクセルに合わせた光学ローパスフィルターの性能アップ、画像処理エンジン「EXPEED 3」の高速処理技術、また高解像度に合わせた画像処理ソフトの開発などを地道に積み重ねることで達成できる、という目算があったので、自信を持って進められました。また、ニコンには優れた描写性能を誇るNIKKORレンズがあるので、それと一緒に使ってもらえれば、D800とレンズそれぞれの性能を最大限に引き出せるという思いもありました。」

「それから、プロフェッショナルやアドバンストアマチュアの方が使われるので、カメラとして使い勝手の良いもの、中判カメラのような大きいものではなくて、一眼レフカメラらしい機動性を発揮できる、D700同等のコンパクトなボディーサイズにまとめて、高画質を提供する。それがコンセプトの大もとでした。D800はD700の後継機と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私達が目指したのは、新しいカテゴリーのモデルを世に出すことだったのです。」

高画素のみを追い求めたのではないということですか?

「プロフェッショナルやアドバンストアマチュアの方が使われるカメラとして最高画質を追求したいという思いは強くありましたが、カメラとしてそれだけで終わらせたくありませんでした。高画素ばかりが際立つのではなく、カメラの基本性能と使い易さが兼ね備わり、その上に画質が成り立っているというものを作っていきたいという思いが、出発点としてありました。」

撮影道具として使いやすい、基本性能と操作性の高い完成度

どんな人に使っていただきたいとお思いですか?またどんなものを撮っていただきたいと思っていらっしゃいますか?

「高画素、高画質はもちろんですが、ボタンなど操作部材の配置や、ブラケットボタン、ライブビューセレクターの追加など、写真を撮りやすくする工夫も随所に詰め込んでいます。またピクチャーコントロールボタンを設定し、ダイレクトに好みの画に変更することも可能にしています。ですので、スタジオワークや風景を撮影されるプロフェッショナルから、プロフェッショナルに近い技術をお持ちのアドバンストアマチュアの方から写真を趣味とするアマチュアの方まで、いろいろな方に最適だと思います。」

村上「とにかくじっくり撮ってもらいたいですね。写真を一枚一枚丁寧に撮られるお客様に使っていただくことを念頭に設計しているので、これまでの上位機種・下位機種を問わず、使いやすい機能を厳選して採り入れています。視野率約100%のファインダー、見やすい3.2型の液晶モニターはもちろん、写真が好きな様々なお客様が、ご自分の志向に応じて使えるように、2方向の水準器表示、HDR、画像編集機能なども搭載しています。これ一台で幅広い層の人たちに満足していただけると思います。また機動性の向上をはかるため、D700と比較して約10%の軽量化をしています。そのために構成を何度も見直し、性能を確保するための評価を繰り返しました。」

吉松「親戚に年配の写真愛好家がいまして、風景写真を撮りに行くと、周りには中判カメラを持っている方が多くて、いいカメラだなぁ、欲しいなぁと思うそうなんです。でも、中判カメラは大きすぎる、重すぎる。だから、高解像度で手頃な大きさ、重さのカメラがあればなぁ、と言うのを度々耳にしていました。まさに、その要望に対して D800で応えられたと思っています。それから、これはかなり詳細な機能の一例ですが、スタジオでフラッシュ撮影をされるお客様は、予めホワイトバランスをスタジオ内のフラッシュに合うように、色温度やプリセットマニュアルで合わせて使われていると思いますが、実際、スタジオ内の定常光は色温度の低いタングステンであることが多いので、フラッシュを発光させる前のライブビューの色味が異常に赤く、イメージが掴みにくいというご指摘をいただいておりました。そこで今回、ライブビュー用のホワイトバランスと、撮影時のホワイトバランスを分けて設定できるようにしました。ライブビュー画像は定常光用のホワイトバランスで表示し、撮影はフラッシュに合わせたホワイトバランスで行うことが可能ですので、高解像を必要とされるスタジオカメラマンの方にも喜んでいただけるかと思います。このような機能も含めて、撮影の現場で喜ばれる機能を沢山盛込んでいます。」

カメラとしての基本性能も重視なさったということですが、具体的にはどういう部分に注力されたのですか?

「他のモデルより開発期間をたっぷりかけたので、改善している機能が多数あります。例えば、写真を撮る時の基本となるレリーズタイムラグの短さとか、36.3メガピクセルの大容量データに合ったバッファーメモリーなど、スペック表には並ばないような仕様の磨き込みにも配慮して開発しました。D800は36.3メガピクセルという非常に多くの画素があるわけですが、RAWを数枚撮るとバッファーが一杯になって書き込みが止まってしまうようだと、使いにくいですよね。そのようなことがないように、お客様がすべての機能を気持ちよく使えるレベルに仕上げています。AFの精度も同じで、やはりこれだけの高画素になるとAFの合焦精度が出ていないとせっかくの高画素が活かせません。位相差AFでは、D4と同じ改良されたセンサーモジュールを採用し、暗い所でも撮れるようにAFの感度を上げるなど性能向上を図っています。また、91KピクセルRGBセンサーを新規に開発し、測光センサーの画素数を大幅に増やしたことで、光学ファインダー撮影時に顔の認識までできるようになり、一段と高精度なAEも可能にしています。」

吉松「電池寿命もそうですよね。高画素になったからといって半減しては使い物になりません。画素数が大きいだけではなく、それを活かすための性能として付随するものを、すべてグレードアップさせたというイメージです。」

村上「信頼性の部分でもマグネシウム合金を使用したボディーや、シーリングによる防塵・防滴、また、耐久回数は20万回ですがD4とほぼ同じシャッター、絞り、ミラー駆動機構を搭載して、レリーズタイムラグ約0.042秒を達成し、快適な撮影をサポートしています。そういう点では、上位機種と同等の仕様を多分に盛り込んでいますので、値ごろ感のあるカメラになっていると思います。」

約100%のファインダー視野率は、画素数を活かしきったフレーミングができるように採用されたということですが?

「D800がターゲットとしているお客様は、じっくり構図にこだわって撮影される方々です。そういう方々にとっては、ファインダー視野率は約100%にする必要があると思いました。また36.3メガピクセルすべてを使って撮影していただきたいという思いが、基本にあります。」

村上「しかし、視野率約100%を達成するために大きく重くなっては意味がありません。ですので、製造精度、プリズム性能を高め、極力小さく軽く設計しています。そういうこだわりも入っています。」

吉松「昔からフィルムカメラを使ってこられた方々はよくわかると思うのですが、やはり大きいファインダーの方が見やすいのです。見やすさという点でも、FXフォーマットで約100%というのは非常に価値があると思います。」