Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

ザ・ワークス Vol.51 COOLPIXのデザインが生まれるまで

「特別な一瞬を記録する親密な道具」その本質的な価値を具現化するために挑戦し続けることが、COOLPIXデザインの哲学

1997年の初期モデル誕生からこれまで、「スイバルデザイン」や「ウェーブサーフェスデザイン」など、斬新なデザインを次々に発表してきたCOOLPIX。2010年の春には「COOLPIX S8000」「COOLPIX S6000」の2機種で、触感に訴える質感などの知覚品質にもこだわったデザインを発表し、また「COOLPIX S3000」ではファッションの一部として楽しめるようにカラーバリエーションを豊富に揃えるなど、カメラとしての機能や性能だけではなく、デザインという側面からも新しい価値を提案しました。では、これらCOOLPIXのデザインはどのようにして考えられ、生み出されているのでしょうか。今回はその開発秘話を紹介します。

橋本 信雄(はしもと・のぶお)

1988年入社。 プロダクトデザイナーとして、カメラ、双眼鏡、顕微鏡など様々なデザインを手がける。 2003年からCOOLPIXのデザインに参加。現在は全COOLPIXデザインの統括ディレクターとして手腕を発揮する。

個性あふれるチームメンバーの技術とセンスを集結させ、COOLPIXデザインは完成されていく

COOLPIXが誕生してから13年。テクノロジーの進化とともに、デザインも大きな進歩を遂げてきましたが、まずCOOLPIXのデザインコンセプトを教えてください。

COOLPIXはこれまで、世界で初めて顔認識AF(オートフォーカス)機能を搭載したカメラや世界最速起動時間を達成したカメラなど、数々の優れた性能、機能を生み出してきました。もちろん、そのテクノロジーの進化は今も急速に進んでいます。そういった、世界に誇れる高性能、かつ多機能なカメラを“お客さまの「特別な一瞬」を記録するための親密な道具”として捉え、その価値をデザインで表現することをCOOLPIXデザインのメインコンセプトとしています。一目見ただけでそのカメラの可能性が感じられる、「良い写真が撮れそうだ」と期待させる、そんなカメラが持つ本質的なクオリティーをデザインでいかに具現化するかを、常に考え続けています。この考えは、フィルムカメラの時代から綿々と受け継がれるニコンのカメラ作りの哲学でもあります。
この考えを軸にしながら、多様化するお客さまのニーズに合わせ、それぞれの商品特性に合わせたデザインを展開しています。コンパクトながらも本格感溢れるデザイン、いつでも持ち歩きたくなるカラフルでファッショナブルなデザインなど、味付けは様々です。
一方、プロジェクターを内蔵したカメラのように、先進的なデジタル機器ならではの新しい価値をデザインで提案する、といった挑戦的な姿勢も大切にしています。

実際、どのような過程でデザインは生み出されているのでしょうか?

製品コンセプトをチームで決定した後に、初めて各デザイナーがペンを取り、具体的なフォルム、質感をスケッチしていく。

まずはマーケティング部門が主体となって製品ラインナップが組まれ、個々の製品コンセプトの構築作業に入ります。もちろんこの段階からデザイナーも積極的に、製品コンセプトの構築作業に参加します。個々の製品のおおまかなコンセプトが決定すると、それをもとに、我々デザイン部でチームを編成し、検討をスタートさせます。その際、デザインとして表現するに当たり、「お客さまが求める期待」、「デザイナーとして発信したい提案」という基本的な要素を徹底的に詰めていきます。COOLPIX S8000を例にすると、最初からデザインスケッチを描くのではなく、「世界最薄の10倍ズーム」というテーマを軸に、ディスカッションを重ねていきます。自分がお客さまの立場になり、カメラを購入する時、使う時に魅力的だと感じるポイントや情景を思い浮かべ、それを文章化していきます。店に入って、売り場に向かって、カメラを手にして、などできるだけ詳細に書きます。すると、個々のデザイナーたちが挙げた情景の中から共通のキーワードが出てくるのです。それを、さらに全員でふるいにかけ、揺るぎないキーコンセプトをチームで決定した後に、初めて個々のデザイナーがその世界観を“スケッチ”で表現していくのです。つまり、初めはチーム戦、後半はそのチームの人間同士がライバルになり、個人戦として切磋琢磨していきます。

その後、最終的なデザインはどのように決定していくのですか?

スケッチをもとに作られたモックアップの数々。 ここでもう一度、製品コンセプトに立ち返り、デザインの精度を高めていく。

まず、デザイナーから上がってきたスケッチをベースにモックアップを作ります。これができるのは、発売のおおよそ1年以上前です。この段階ではある程度幅の広いテイストを検討します。例えば新しさを前面に出したモダンなイメージのものから、本格的なカメラテイストのものまで、複数のモックアップを作成します。S8000では、チームで決定したキーワードが「秘めた力」でした。その言葉からぶれないよう、イメージに合ったフォルム、質感、操作性などについて、モックアップを実際に手に取り、検証しながら案を絞ってゆきます。 その結果、レンズの収納部分に火山のような滑らかな曲面を施し、高倍率ズームという内なるエネルギーを秘めつつも、スリムで上質な雰囲気が漂うデザインに決定しました。

1機種のデザインチームは何名ぐらいですか。また、どのような経歴や個性のデザイナーが集まっているのですか?

1機種のデザインチームはだいたい2~5名です。メンバーは工業デザインを勉強した新卒のデザイナーから、家電、自動車のデザインをしていた者など様々です。あらゆる分野の出身者がいるので、アイディアが尽きることはありません。メカニックに強く、設計部に提案しながら内部デザインまで考えていくデザイナーや、カラーや材質を重視しているデザイナーなど、個性に溢れています。
また、ダイヤルやシャッターボタンの配置・素材やグリップの持ちやすさなど、道具としてのカメラの要素については全員で一貫した思想を持ち、細部まで妥協せずに作り込んでいきます。 ニコンとして一眼レフで培ってきた操作性をCOOLPIXのデザインでさらに発展させるためです。このように、多種多様な経歴やこだわりを持ったデザイナーが集まり、ひと目で伝わる魅力の表現の追求に加え、機能性や操作性といった感覚的、官能的な世界からもアプローチし、知覚品質にもこだわったデザインを考えています。