Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

ザ・ワークス Vol.49 COOLPIX S1000pj

ニコンのコンパクトデジタルカメラ「COOLPIX」に、デジタルカメラとして世界初の超小型プロジェクターが内蔵された、新機種が登場しました。小型・軽量ボディながら、画像鑑賞・シェアの新しいスタイルを提案する、新ジャンルの映像ツールの誕生です。製品化までの背景やエピソードを、プロダクトマネージャー、設計担当、GUI担当それぞれの視点で語ってもらいました。

小宮山 桂(こみやま・かつら)

映像カンパニー マーケティング本部 第一マーケティング部 第二マーケティング課
長年カメラ・映像関係の仕事に携わり、2006年に入社。今回のCOOLPIX S1000pjがニコンで担当した第一号機。製品コンセプトの策定から予算や進行、販売・宣伝への橋渡しまでトータルで管理するプロダクトマネージャー。趣味は写真を見る・撮ることで、新商品のテストも兼ねて外出時には必ず携える。

後藤 孝夫(ごとう・たかお)

映像カンパニー 開発本部 第三設計部 第二設計課
1995年入社当時より、コンパクトカメラの設計に従事。フィルム時代では、Nuvis S、デジタルではCOOLPIX 5200、COOLPIX 8800、COOLPIX P1など、主に革新的な機種を手掛ける。プライベートでも写真を撮るのが好きで、休日は山などに出かけて、気に入った風景を撮影する。

阿達 裕也(あだち・ゆうや)

映像カンパニー デザイン部 グラフィックデザイン課
2006年入社後に、昨年発売されたCOOLPIX S60のタッチパネルのGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)を手掛ける。今回も、背面の液晶のGUIを担当し、スライドショーの製作などで活躍。趣味はショッピングで、街に出てジャンルを問わずお気に入りを見つけるのが得意。

コミュニケーションツールとしての役割を担う、画期的なコンパクトデジタルカメラを提案

世界初のプロジェクター内蔵機が発売されましたが、まずは製品の特長を教えてください。

製品のコンセプトや楽しみ方につ
いて説明する小宮山さん

小宮山 「やはり、プロジェクター機能をカメラに搭載させたところが、最大のポイントです。ニコンが今日まで追求し続けてきた“写真を撮る”行為からさらに一歩踏み出し、“撮った写真をどうやって楽しむか”に焦点を当てました。その表現の一つとして、大人数で写真を鑑賞するのはどうだろう、という案があがったのが始まりです。通常のカメラの背面の液晶を見る場合1~2人が限界ですよね。それを複数人で共有できる機能として、プロジェクターを搭載した製品を開発しました。」

プロジェクターは、具体的にどのように使用するのでしょうか。

後藤 「専用のプロジェクターボタンがついていますので、ワンタッチでモードを切り替えるだけです。白い壁や、市販のミニスクリーンなどにそのまますぐ投映できます。静止画だけではなく、動画も投映が可能です。投映画面サイズは、5型から40型相当まで。付属の簡易スタンドでカメラを固定させたり、リモコンでの遠隔操作など、ユーザーインターフェイスにもこだわっています。」

想定されている楽しみ方やシチュエーションを教えてください。

小宮山 「“いつでもどこでも”がコンセプトなので、自宅のリビングから旅先などあらゆる場面で幅広く使っていただくことができます。例えば、旅行中に撮った写真をその日のうちにみんなでホテルで楽しんだり、イベントやホームパーティーでの演出、ベッドの天井に映して、お子さんが寝る際の読み聞かせなどですね。音楽やキャラクターなどの効果をスライドショーにつけることもできるので、ちょっとしたパーソナルシアターのように活用できます。そのほか変わったところでは、スポーツのフォームをチェックしたり、部屋のインテリアとしてお気に入りの写真などの投映もいいですね。お客様次第で、利用方法は無限に広がります。友人・知人などや、お子さんを含めた家族で、コミュニケーションを深めて盛りあがっていただきたいというのが狙いです。」

プロジェクター設計の経緯やこだ
わりについて語る後藤さん

なるほど、アイディア次第で夢が広がりますね。製品が生まれたきっかけは何だったのでしょうか。

小宮山 「今後コンパクトカメラ市場は大きな成長は望めませんので、何か新しいことを打ち出さなければいけないという想いが会社全体としてもありました。社内で製品アイディアを公募した際に、カメラで撮影した画像をすぐ投映して楽しめないだろうか、という意見があったのです。最初は、かなり難しいと思われていたのですが、検討していく内に、プロジェクターの小型化開発が少しずつ形になってきましたので、商品化に踏みきることになりました。」

商品化の前にまず、プロジェクターがカメラ内部に収まるかどうか、といったところで、企画・開発がなされたのですね。

後藤 「そうですね。まず、プロジェクターのユニットを作ったのですが、最初はカメラに全く収まらない大きさからスタートしました。ニコンには、プロジェクターのノウハウはありましたが、製品自体はなかったので、基礎技術のところから始めました。」

プロジェクターカメラの商品化を阻む大きな壁を越えた、自由曲面レンズという発想

設計を担当された後藤さんは、実際にどのような経緯で進めていったのでしょうか。

後藤 「まず一番に、通常のコンパクトカメラと同サイズで製品化するという点にこだわりました。小型なカメラの中にプロジェクターを収めなければならないわけですから、プロジェクターの大きさは自ずと決まってきます。次に映像の明るさの目標ですが、10ルーメンという仕様を想定しました。これは一般家庭の部屋で夜に電気をつけた状況で10型くらいの投映サイズを差支えなく鑑賞できるレベルのものです。そしてもう一つ、1時間連続投映できるということを目指しました。この3つを達成するためには、使えるエネルギーやレンズに求められる性能といった、クリアすべき課題が見えてきましたので、それらのバランスを調整しながら、開発・試作を繰り返していきました。」

一番苦労されたのは、どんなところでしょうか。

後藤 「カメラボディに収めるためにプロジェクターを小型化したことによって、投映明度がどうしても暗くなってしまいました。それを補うために、光学系の部分をかなり工夫しました。10ルーメンの明るさで投映させるためには、光源である白色LEDの光を効率よく利用する必要があります。その光学部品の設計は苦労しました。」

GUI担当の阿達さんは、スライド
ショーのアニメーション製作に腐

プロジェクターの光学系は、撮影レンズの光学系と相通ずるものがあるのでしょうか。

後藤 「相通ずる部分もあります。ただ進めていくうちに、光の利用効率を高めるには、違う考え方が必要だということがわかってきましたので、最終的には撮影レンズとは全く異なる、特殊なレンズを採用しています。プロジェクターの構造ですが、まず白色LEDの光が集光レンズを通って反射型液晶パネルに当たります。そして反射した光が、結像用の投映レンズに入射して、スクリーン面に投映されます。光源であるLEDの明るさは変えることができませんので、その光を効率よく使うために、集光レンズの部分に、自由曲面レンズというものを、開発・採用しています。」

自由曲面レンズとは、どのようなものなのでしょうか。

後藤 「球面でも非球面でもなく、ウネウネと波打ったような、かなり特殊な形状です。最初は、通常のカメラで使っている非球面レンズを使用していたのですが、10ルーメンの明るさまで達成できませんでした。そこで、レンズの形状を大きく変えてみたらどうだろうか、というアイディアが閃いたのです。コンピューターで何度もシミュレーションした結果、集光効率をかなり高められる自由曲面形状にたどりつき、2~3回の試作でようやく製品化への道が見えてきました。このレンズ開発に成功したことが、プロジェクターカメラ実現へのブレークスルーだったと思います。」