Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

ザ・ワークス Vol.48 デジタル一眼レフカメラD700

ニコンFXフォーマットのフラッグシップ機D3の圧倒的な画質性能を継承するD700。ISO6400の高感度、高密度51点AF、シーン認識システムなど、数々の高性能・高機能はそのままに、より身近な価格とサイズで再現され、デジタルカメラの新時代を拓きました。その革新的な新機種に込められた思いや開発秘話について、開発担当者に伺いました。

村上 直之(むらかみ・なおゆき)

映像カンパニー 開発本部 第一設計部 第二設計課 主幹
1987年の入社当時から20年以上、カメラボディのメカ設計を主に担当。F-801S、ProneaS、F6など歴代の銀塩フィルム一眼レフカメラを経て、D40では開発リーダーとして活躍。D700は、デジタルに移行して手掛けた2機目。趣味はサッカー観戦で、月に2回は競技場に足を運ぶ

折井 一成(おりい・かずなり)

(株)ニコンシステム 第2システム本部 第1開発部 副部長
ソフトウエア開発を担う、(株)ニコンシステムに1990年入社。カメラのユーザーインターフェイスや仕様の提案などを主に行っている。F90を皮きりに、デジタルではD2X、D200に携わり、D40から村上氏とタッグを組む。趣味はスポーツ全般

プロ・アマの枠を越えて高画質性能の普及を目指すことからスタート

D700を開発したきっかけや、背景などを教えてください。

D700が誕生したいきさつや製品
コンセプトについて語る村上さん

村上 「ニコンのフラッグシップ機としてご好評いただいているD3は、FXフォーマットの撮像素子を搭載し、高感度性能をはじめプロユース向けの高画質を誇っています。ただ、大きさや価格の面で、アマチュアの方には使いこなすことが難しいという意見がありました。そこで、なるべく多くの方にD3の撮像性能を味わっていただくことを主眼に、コンパクトでお求め安い価格設定を追求した機種がD700です。」

開発をはじめたのはいつごろですか?

村上 「D3の発売時期には、開発に着手しています。D3を実際に手元に置いて検討しながら、どうやってアマチュアの方に使いやすい形にしていくか、適したユーザーインターフェイスをどう盛りこむか、といった議論からスタートしました。」

ソフト担当の折井さんの方には、最初どのような話があったのでしょうか。

折井 「最初にマーケティングの方から、スタジオ写真家が使い勝手のよい一眼レフを作りませんか、という提案がありました。さらに、F5に対してその性能をコンパクトに搭載したF100があったように、D3を受けた機種を、という話でした。D3と同様の撮像素子を使い、万能的であること。かつ、連写に重きを置かないスタジオ写真家の方にとって、単体で軽くて使い勝手のいいものを作っていきましょう、と。」

プロも視野に入れたポジショニングということですね。

折井 「そうです。まず、撮像素子はD3と共通で、という提案が村上さんから用意されていました。あとはユーザーがどういう風に使いこなしていくか、というところを考えていきました。アマチュアをはじめ、スポーツ・報道ではない商業写真家や、結婚式場、学校写真などの専門写真家に喜んでもらえるものを、ということを念頭に置きました。」

D3の撮像性能をコンパクトに継承した新機種の魅力

撮像素子はD3と共通ということですが、他のセンサー類はいかがでしょうか。

D3の高性能を小型化する際のこ
だわりを話す折井さん

折井 「AF、AEのセンサーもD3と同等です。D3を使っているプロの方々から評判のよいところは落とさずに搭載しています。」

D3の要素をかなり継承しているのですね。その辺の機能の選定はどのようにされたのでしょうか。

村上 「ピントを合わせ、露出を決め、きれいな絵を撮るという撮影の基本性能は落とさない、という考え方です。ただし連写性能はD3の秒9コマから秒5コマにしています。D3では本体下部に配置した大きな電池を使って、高い電圧で高トルクのモーターを回すことで高速連写を可能にしていますが、これと同様の構造だとボティの小型化ができません。D700ではD300と同じ電池をグリップ内に配置することで小型化を達成しています」

5コマあれば充分プロユースにも耐えうるという結論ですか。

村上 「そうですね。何コマ出すかというのは、当然初めに議論をしたところでした。私がこだわったのは、コマ数よりも連写で撮った時の感触です。リズムよくシャッターを切るには、やっぱり秒5コマは必要だという結論に達しました。気持ちよく撮れるというのは、カメラとして求められる必要条件だと思っていますので。その5コマを出せるかどうかというところで、モーターの選定や駆動機構の仕様を決めていきました。」

D700を初めて見た時に、D3と比べてこの大きさで納まるんだという驚きがありました。サイズはD3よりも、D300の方にどちらかというと近いですよね。

村上 「そう感じていただけるとありがたいです。D300と大きさを比較していただくと、横幅は同じなんです。バッテリーパックを共有で使えるように設計していますので。違うのは、FX用のペンタプリズムを積んだことにより、光軸より上が高くなっているところです。当初計画した時には、実はペンタ部はもっと大きかったのです。デザイン部門と、どういう形だと小さくみせられバランスが良いかを何度も協議した結果、最終的に今の大きさと形に決まりました。エルゴノミックで使いやすく、なおかつ精悍に見せられるように、工夫しています。」

堅牢性はどうですか? ボディには金属部分を多く採用しているそうですが。

村上 「このクラスのカメラになりますと、重いレンズをつけての撮影も視野に入れなければなりません。レンズマウント部分の強度を充分保つ必要が出てきますし、それを支える後ボティも当然頑強にできてないといけない。そこで、軽量かつ堅牢なマグネシウム合金を前ボディだけでなく後ボディにも採用しました。また、防滴に関しても、カバーの継ぎ目や操作部材の隙間をシール材で覆って水の浸入を防いでいます。全面を覆って防滴仕様にしているというところは、コスト面、技術面ともに苦労したところですね。」