Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

ザ・ワークス Vol.43 マルチパワーバッテリーパック MB-D10

ニコンDXフォーマットのフラッグシップとして昨年11月に誕生した、デジタル一眼レフカメラ「D300」。この抜群の機動性を影ながら支えているのが、マルチパワーバッテリーパックMB-D10の存在です。デザイン性、機能性、使い勝手を兼ね備えた、今までにない画期的なバッテリーパックの魅力を、デザイン、メカ、電気それぞれの担当者に語ってもらいました。

渡部 剛 (わたなべ・つよし)

映像カンパニー 開発本部 第一設計部 第三設計課 副主幹
1993年入社以来、現在までカメラボディのメカ設計一筋に担当。フィルム時代のカメラを経て、エントリーモデルからF100、D200、今回のD300まであらゆる一眼レフカメラに携わる。30年近く続く天体写真の趣味は本格的

小笠原 美千代 (おがさわら・みちよ)

映像カンパニー デザイン部 プロダクトデザイン課
2005年入社。MB-D10のデザインをメインに、D300も担当。前職では家庭用品の設計や3DCADのインストラクターを務め、今回その経験をフルに生かして活躍。趣味は旅行と映画鑑賞

安夛 清 (やすだ・きよし)

映像カンパニー 開発設計 第一設計部 第一設計課 副主幹
2005年入社。MB-D10のデザインをメインに、D300も担当。前職では家庭用 2006年に入社し、すぐにバッテリーパックも含めたD300全体の設計に加わる。デジタルカメラの豊富な知識を生かし、主に電気系を担当。趣味は映画鑑賞

カメラ本体がパワーアップする、“新”バッテリーパックの魅力

単三電池以外にもEN-EL3e、さらにEN-EL4aが使用可能

まずはMB-D10の製品概要をお聞きしたいと思います。前機種MB-D200からどのように変わったのか、今回ならではの売りの機能などをお伺いしたいのですが。

渡部 「MB-D200の時は電池2種類・単三とEN-EL3eが使えました。今回のMB-D10は、先ほどの2種の電池に加え、EN-EL4aもしくはEN- EL4(以下EN-EL4a)が使えます。この電池を使うことにより電圧があがるため、カメラの性能が向上する事が、一番大きく変わったところです。 EN-EL4aまたは単三を入れた時に、コマ速が秒6コマから秒8コマに変わるのです。また、像消失時間も90msから86msと短縮します。さらに、カメラ本体内に電池を残したまま、バッテリーパックが使えるのも、特徴です。本体とバッテリーパックの電池が連携しており、順次切り替えて使っていけます。そこの電気の切り替えの所で、電気担当の安夛さんが苦労されているわけなのですが。仕様的に大きく変わったのは、その3点です」

電気系での新たな試みによる苦労
を語る安夛さん

電気系でも、新しい試みがあったようですが

安夛 「電流のピークのアシストをするために、特殊なコンデンサーを入れています。具体的に言えば、カメラに内蔵されている電池は、メカ系の動作電力と、コンピューター制御に使う電力の二つを同時にまかなうわけですから、撮影時いわゆる負荷のピーク時には、瞬間的に非常に大きな電流が流れてしまいます。その際に電圧低下無く電力を安定供給してあげるためのアシスト的存在が、コンデンサーです。専用のリチウム電池だとそれほど電圧は落ちないのですが、単三だと電圧のドロップが大きい。そこを今回コンデンサーを入れることで補っています。MB-D200では、あくまでも緊急対応処置的な役割で単三アルカリ電池を使用していたので撮影可能枚数はあまりうたえませんでしたが、今回は実用レベルのスペックを提供できるようになりました。」

渡部 「電池の持ちに関しては、ユーザーからも非常に多くの要望があったのです。すごく簡単に説明してしまえば、コンデンサーによって電池の持っている全容量を最後まで吸い尽すことが可能になったということです。従来製品では、全部吸い尽す前にカメラの方で“使い切った”と判断し自動的にシャッターが下りなくなってしまったのですが、ちゃんと容量がカラになるまで使えるようになった、ということでしょうか」

女性の視点によるデザインと、設計の観点からの要求で、より良いものを模索

初めて携わったカメラながら、随所
にあるデザインのこだわりを説明す
る小笠原さん

MB-D200と比べて見た目が曲線的になっていますが、デザインにおいて、開発時の思いはどのようなものだったのでしょうか?

小笠原 「カメラ本体ありきの商品なので、D300の持ち味をなるべく生かしたいというのが、第一目標でした。本体には細かな曲線が多く、持ち勝手にすごくこだわって作られているので、これにバッテリーパックがついた時、縦に持っても横に持っても違和感のない操作感やグリップ感になるように、ということを念頭においてデザインしました。MB-D200と比べていただくと、だいぶ躍動的かつエルゴノミックに仕上がったと思います」

具体的にはどのように進めていったのでしょうか。小笠原さんは3DCADのインストラクターという前歴をお持ちですが、その実績もかなり役立ったのでは?

小笠原 「まずクレイモデルの試作品を工作室にこもって作りました。粘土を使って、女性の私でもグリップしやすいものを、実際に触れて試しながら作っていき、最終的には3Dに仕上げていきました。開発期間が短かったのですが、形のないイメージの世界をCADという立体で示すことによって、こちらの意志が設計者へ明確に伝わったのだと思います」

雑誌のインタビューで、入社して二年、生きた心地がしなかったと言われていましたが、どのようなことでしょう。

小笠原 「CADのオペレーターとしてものづくりのスキルはあったのですが、何というか異次元に迷い込んでしまった感じというのでしょうか。皆が、最先端のエッジにいるという感じで、専門用語や言われていることの真意を理解するまでが、まず大変でした。さらに、実際製作していく上では、設計など色々な所から要求がありまして・・(笑)。D300に装着して使うものなので、本体と一体化させたキレイなラインを出すことだけを考えて製作できれば楽だったのですが、EN-EL4aを使用するために、F6と共通の電池ホルダーを採用する方針がありまして、形をつなぐのに苦労しました」

渡部 「F6のバッテリーパックを持っているお客様がそのまま使えるものを、という考えがまずあったのです。このホルダーBL-3が使用でき、かつ、D300に合うようなデザインをお願いしました」

デザインとメカ的な部分が互いに協力しあって、作り上げているということですね。他には何か相互間の開発にあたり、苦労した点などありますか?。

渡部 「カメラを縦位置で使用する時必要な、マルチセレクターをつけたことですね。D200の時にはAFのフォーカスポイントが11点ありました。D300は 51点と大幅に増やしていますから、従来のAF作動ボタンとコマンドダイヤルを併用するセレクト方式は実用的ではありません。つまり、バッテリーパックに縦位置専用のマルチセレクターをつけざるをえないという課題が最初からあったのですが、メカ的にもデザイン的にも苦労しました」

小笠原 「また、AF作動ボタンの位置が前機種と全く異なるのですが、これは、カメラ本体のボタンの位置と極力合わせたいという設計部の意図があったのです。カメラ本体の操作性を良くするために、実はダイヤル部分に微妙な傾斜を施しているのですね。カメラとの一体感を出すためには当然、バッテリーパックの方もそれに合わせて傾斜させなくてはなりません。これは特にデザインでのこだわりがあった所ですね。設計する上で“傾ける”というのは渡部さんも非常にやりにくかったようなのですが、こちらの思いを汲んでいただきました」