Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

ザ・ワークス Vol.31 デジタル一眼レフカメラD2X

ニコンのデジタルカメララインナップの新フラッグシップ機誕生。有効画素数12.4メガピクセルの高解像、高品位な画像を支えるのが優れた再現力を誇る、新開発の画像信号処理エンジンです。この新画像信号処理エンジンにこめられた開発者の想いに迫ってみました。

宝殊山秀雄 (ほうしゅやま・ひでお)

映像カンパニー開発部所属
1989年入社後、最初に開発担当した製品はフィルムダイレクト電送機NT-3000。フィルムスキャン、画像の絵作り、印刷に適応するための画像の補正(マスキング)など画像処理に関する様々な要素を学ぶ。その後、フィルムスキャナーやフラットベッドスキャナー、スキャンタッチの担当後、D1やCOOLPIX900の開発を手掛けたのをきっかけに、デジタルカメラの画像信号処理の開発一筋に。休日にはウィンドサーフィンを楽しむアクティブ派。

画像信号処理は、様々な開発要素が含まれます。だから多くの人のこだわりをバランス良く昇華させることが、最も重要なポイントに。

デジタルカメラの最高峰となるD2Xがいよいよ発売ですね。新技術の大きなポイントの1つである画像信号処理エンジンの開発経緯についていろいろとお話をうかがいたいと思います。

満を持して登場したニコンデジタルカメララインナップの
最高峰、D2X。有効画素数12.4メガピクセルが生み出す
超高精細画像に期待が集まる。

「はい、D2Xはあらゆる撮影ニーズの要求に応えねばならないフラッグシップ機です。有効画素数12.4メガピクセルということで、超高精細な性能を引き出すための画像信号処理とは何かというところから開発は始まりました。画像処理のシステム構成や機能の構成等を多くの開発担当者とディスカッションを積み重ね、その結果を盛り込んでいったというような形になります。」

ディスカッションにはどのような方々が参加されたのでしょうか?

「撮像素子や回路の開発を手がける担当者や、画像の処理など様々な担当者が集まりました。階調の設計、色の設計、輪郭強調などのアルゴリズム設計、ホワイトバランスの設計など、各担当が力をひとつにするのです。」

様々なスペシャリストがチームとして参画するのですね。

「はい、そうですね。ただ、実際の画像の中で一つの要素が突出してしまっても困るので、総合的な視点は欠かせないんです。それぞれの専門分野において自分の担当に取り組むだけでは、仕上がりの画像のバランスが悪くなってしまうので、チームワークが本当に重要な仕事です。」

開発は地道な苦労の積み重ね。フラッグシップにふさわしい機能・性能の実現のため、議論をくり返した2年間。

開発にかけた期間はどの程度なのでしょうか?

「実際にはD2Xを開発する以前から様々な基礎的な研究、検討は分野ごとに行っていて、それらをこのD2Xに向けてチューンアップしていくという具体的な作業を行うので、時期を特定するのは難しいですが、かなり長い期間が費やされていますね。」

開発の間には様々な紆余曲折等もおありだったかと思いますが、何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。

「そうですね。特にエピソードということではありませんが、D2Xはフラッグシップとしての使命を持ったモデルだということは常に意識の中にあり、プロフォトグラファー等がこのカメラを使う時にどういう機能・特性だったら使いやすいかを常に意識しそこに時間をかけて議論したな、というのが印象に残っています。」

なるほど、何か具体的な例をあげてお話しいただけますか。

「例えば、カラーモードですが、これは銀塩カメラでフィルムを選ぶのと同じように、デジタルカメラでも色の再現性を選べるようにしようというコンセプトで、D1X、D1Hではじめて導入された機能です。従来はフィルムの種類によって使い分けていた色の特性を2種に分け、さらにそれぞれにAdobeRGB とsRGBという色空間を組み合わせたトータルの色再現性が、カラーモード1、2として選べるようになっていたのですが、これがお客様に非常に好評でした。カラーモード1しか使わないというお客様もいれば、カラーモード2しか使わないというお客様、あるいはプロジェクトごとの条件やクライアントの要望により使い分けているというお客様など使い方は様々なのですが、良くお話を伺うと、色の特長と色空間を分けて使いたいという意見が共通の要望として浮かび上がって来たのです。そこで、それを実現するためにはどうしたらいいのかという議論を積み重ね、色空間とカラーモードを独立して設定できる新カラーモードが D2Xに搭載されることになりました。さらに、プロフェッショナルのワークフローに適したAdobeRGBは3種類のカラーモード全てで選択できるようにしたいということもあり、開発にはかなりの時間をかけました。結果的には、このモードを搭載するためには画像の処理をある程度自動的に行うことが必要だということがわかり、そのシステムの開発まで行いました。」

プロフォトグラファーのニーズにも
応える高機能・高性能の実現には
並々ならぬ努力がはらわれている。

試作機の実写も何度もくり返されるのですよね?

「もちろん行います。特にこうしたプロフォトグラファーのニーズに応えるカメラの場合は、ネイチャーフォトグラファーの利用も多いので、標高の高い山に登って青空のきれいなグラデーションと山のコントラストを撮る、南国の青い海を撮る、あるいは真冬に丹頂ツルを撮る、といった様々な非日常的シチュエーションが想定されるわけです。 さまざまな撮影環境を想定しながらデータを積み重ね、良いところ、悪いところを洗い出して、改良し、シミュレーションを行ってデータを検証するという地道な作業をくり返していくことを要求されました。」

かなり大変な作業ですね

「さらにプリンターでの印刷に関しても検証が必要です。画像を一回設定するごとに、階調特性やホワイトバランスやカラーモードの組み合わせをいろいろ変えて、それをそれぞれ様々なプリンターで試して再現性を確認するという作業もあります。実際、開発に際して印刷する数は半端なものではないです。プリンターで使うカートリッジの空容器が段ボール何箱分にもなります。紙も積み上げたら本当に何メートルにもなってしまいますね。シミュレーションでの自動評価というのも行うのですが、やはり最後は人間の目で、いかに絵が心地よいか、いかにきれいに見えるかを確認して作りこんでいくということが重要になります。」

そういった調整は、最後は技術者の方の長年の経験が頼りになってくるのでしょうか?

「そうですね。お客様の喜ぶ色にするためのデータは豊富に存在しますので、基本的にはそこに近付けるための作業を積み重ねていくのですが、最終段階で人の目での確認というのは絶対にかかせないですね。」