Nikon Imaging
Japan

ザ・ワークス Vol.30 マルチ CAM2000 オートフォーカスモジュール

マルチCAM2000オートフォーカスモジュールはチャレンジ精神から生まれたものだった?強力AFセンサーの意外な開発秘話と苦労話

新開発の測距素子「マルチ
CAM2000オートフォーカスモジュー
ル」。垂直・水平方向に対応する
9点のクロスタイプセンサーと、その
両サイドに配した2点のセンサーが
撮影画面を広くカバーし、自在なフ
レーミングを可能にした。また、4つ
のAFモードを切り換えることにより、
静止している被写体から動きの激し
い被写体まで、柔軟で精度の高い
的確なAFを実現。

動く被写体を正確にキャッチできる、高性能のマルチCAM2000オートフォーカスモジュールですが、開発のきっかけはどういうものだったのでしょうか。

「前モデルとなるD1Hのフォーカスエリアが5点だったんですね。それで、今回「プロフェッショナル向けを作る」ということになり、さてどうしようかなと(笑)。実を言いますと、最初はフォーカスエリアを7点とか9点にした案を提示したんです。CCDもD1H のままでいいかって。まあ安全策ですね。すると、上司から「チャレンジ精神がない!」とこっぴどく怒られましてね。そこで、よし、やってやろうじゃねえか、11点いってやるぞって。チャレンジ精神といえば聞こえはいいですが、苦労が多かったので、「チャレンジしちまったな」という感じでしたね(笑)。もちろん、こうして実を結んだわけですから、決して後悔はしていません」

開発の中で苦労したのは、どういった点ですか?

「フォーカスエリア11点のうち9点をクロスタイプセンサーにするには、先ほどもお話ししましたがCCDが 1つではダメで、3つ必要なんですね。それぞれ光の当たる角度などが微妙に違うので、一つ一つを精度良く調整しなければならないんです。で、一つでも狂っていると苦労は水の泡。この部分にとても苦労しました。テストにも3倍の手間がかかりますからね」

CCDが3個となると、ボディに収めるのも苦労されたでしょうね。

「それはかなり苦労しました。しかも、光学的な問題でボディ内の光の通る距離を長くする必要があったので、いっそう難しい問題でした。そもそもカメラというものは小さいボディに精密機器を詰め込んだモノなのに、このAFセンサーは、おそらく世界最大級のサイズですからねぇ(笑)」

D2HのAFセンサーは、一般的なものに比べてかなり大きいのですか?

「およそ3倍ほどの大きさだと思います。なんとか収めようと、他のパーツとの兼ね合いをいろいろ考えて、試行錯誤しましたね」

ハイクオリティなAFカメラが世に出た今“延長線上にない”新しいAFの誕生に期待

この「マルチCAM2000オートフォーカスモジュール」は、相当大きなプロジェクトだったんですか?

「私がいる第五開発課のなかで、D2Hに関わっていない人間はいません(笑)。それほど大きなプロジェクトでした」

第五開発課の主な業務について、教えてください。

「一眼レフ用のAFシステムの開発というのが主な仕事です。ハード面ではAFモジュールの開発、ソフト面だとAF検出演算・制御アルゴリズムとAFデータにもとづいたレンズ駆動アルゴリズムの開発、ということになりますね」

マルチCAM2000オートフォーカスモジュールは内山さんがリーダーだったということですが。

「そうですね。今回は一応、まとめ役ということで。進行担当兼システム・アルゴリズム開発という感じでした(笑)。まったくゼロの段階から携わった初めてのモデルはF90だったんですが、そのころは開発だけに没頭していましたので、今から思うと懐かしいですね」

全体の進行と開発を並行して担当されたマルチCAM2000オートフォーカスモジュール 。使い心地はいかがでしたか?

「私はとくに写真が上手なわけではないのですが、やっぱり、なかなかいいものが撮れますよ。まあ安いカメラではないので、買ったわけではありませんが…(笑)。先日、北海道のスキージャンプ競技の会場で、ある新聞社のカメラマンの方がD2Hを使ってらっしゃるのを見かけたんですね。それで、翌日、その新聞を見てみると、その方が撮られたと思われるアングルの写真が載ってまして。こういうのは、やはりうれしい経験ですよね」

最後に、今後作りたいと思ってらっしゃるカメラについて、教えてください。

「このD2Hは、先輩方が残してくれたAFシステムを受け継いで発展させた形で完成したようなものだと思っているんですが、私には後輩に残せるようなものがまだないんです。ですから、D2Hの延長線上というよりは、むしろそうでない新しいAFシステムを作って、次の世代に残せたらいいなと思っています。入社以来ずっとAFシステムの開発をやってきましたから、もうここまで来たらとことんAFでいきますよ(笑)」

これからどんな新システムが登場するのか、楽しみにしています!